a captive of prnce 第12章:キュウシュウ戦役 - 5/9

 雲の下は荒れ模様だった。
 突如としてエリア11を襲った季節外れの台風によって、海上からキュウシュウに向ってトウキョウ租界を出立したコーネリア軍の進撃速度は鈍り、その間に澤崎らはその版図を拡げ、既にクマモト地区にある軍施設も彼らの手に落ちたという情報が、討伐軍を指揮するコーネリアの元に届けられていた。
「特派より、予定ポイントに到達。作戦を実行すると報告が入りました。」
 電文を読み上げるギルフォードに、コーネリアは頷く。
「ついに動き出したか───。こちらも急がなくてはならないな……」
「しかし、この天候では……殿下が、どこまで頑張って頂けるかにかかってきますね……」
「兄上にもご助力を願っているのだ。スザクに何かあっては、ただではすまされないぞ。艦を急がせろ!」
「イエス ユア ハイネス!」
 コーネリアは、艦橋から見える光景に唇を噛み締める。
 横なぶりの雨と艦に容赦なく叩き付ける波頭が、彼女率いる揚陸艇の行く手を阻んでいた。

「特派が、敵軍と戦闘状態に入ったようです。」
 トウキョウ租界の政庁で、ダールトンから報告を受けたシュナイゼルは、手元の書類にサインをすると頷いた。
「そうか……現場で苦労している彼らのためにも、こちらは後詰めに専念しよう。」
「1つ、お伺いしてもよろしいですか。」
 ダールトンの問いかけに、シュナイゼルは首を傾げる。
「何故、スザク様の案を採用され支持されたのです?
単騎での出撃は、閣下がきつく反対されていた事でしたが?」
「冷静に判断して、それが1番効率がいいと結論したからだよ。」
 いつもと変わらぬアルカイックな笑顔が、青ざめて見える。
 シュナイゼルにとっても苦渋の決断だったらしい事を、ダールトンはその表情から汲み取った。
「それに、スザクはあの男に思うところがあるらしい。」
「………澤崎に…ですか……」
「それより、例の機関に連絡がついたよ。」
「トロモですか……しかし、閣下。あれは───」
「使える物は使うだけさ。何かあった時のために、別の手は用意しておかなくては……」
「はあ。ですが……」
 渋い顔のダールトンに、シュナイゼルはふと笑みを見せる。
「スザクが命をかけて闘っているのだ。それを無駄にしないための物だよ。
…………冷たいと思うかい?」
「いいえ。シュナイゼル様は帝国宰相。スザク様は、植民エリアの統治担当者。………それぞれ立場がございます。
おふたりがそれぞれの立場で事に当たられるのは、当然の事です。
ですが……スザク様とコーネリア様が失敗されるとは……」
「勿論。私もそんな事は思ってやいないさ。だが……ね。」
「スザク様のために手に入れた地位が枷になるとは…… なかなか思うように行かないものですわね……」
 シュナイゼルの側に控えるカノンが、小さく息を吐いた。

 スザクは、敵基地より出撃して来た戦闘機を基地めがけて降下しながら、次々と撃ち落として行く。
 戦闘機と違って小回りが利く分有利に闘えた。
 先にアヴァロンで敵の砲台を破壊した事も功を奏している。
「あれが、フクオカ基地か……」
 着陸態勢に入ろうとした時、コクピットの通信パネルがオープンモードでの着信を知らせた。
「フクオカから……」
 スザクは、口元をつり上げると通信をオンにした。
 パネルに映し出される荒い画像の中に、既に見知った男の姿がある。
『私は、新日本政府の暫定主席を務める澤崎だ。
こちらに向ってくるのは、枢木の息子か?』
「───そうです。」
 表情を変えずに返事をすれば、小馬鹿にしたような笑みが返ってくる。
「澤崎さん。貴方の行為は現在のこのエリア11の法と秩序に背いています。 無駄な血を好まないのであれば、今すぐにでも降伏して下さい。さもなくば───」
『降伏?』
モニターの澤崎が、ますます嘲るような顔をした。
『君は、あの血と暴力にまみれたブリタニアに降伏しろというのか。この私に?
──ああ……今、君はそのブリタニアの皇子だったね。』
 ランスロットは、基地内の広い空間に着陸ポイントを定めた。
「ええそうです。自分は今このエリアの法を護る立場にいます。だから、戦いを終わらせるためにここに来ました。
澤崎さん。降伏さえして頂ければ貴方の身を…… 」
『ほう。では、君は日本独立の夢を奪うと言うか?』
「それと、貴方のやっている事の正当性は無関係だと思いますが?」
『ブリタニアに魂まで売り渡したか……父親の首を手土産に皇帝に取り入ったか?』
「違うっ!」
 着陸と同時にランスロットの足下で、小さな爆発が起きた。
「しまった。」
 スザクは舌打ちした。話に気を取られすぎた。
 地雷原を抜けようとランドスピナーの回転を上げる。
 次々と起こる爆発のあおりを受けて、ランスロットの姿勢が崩れた。
 それを待ち受けていたかのように、建物の陰からずんぐりとした機体のナイトメアが次々と出てくる。
 自分を取り囲むそれを、スザクは睨みつけるように見回す。
「中華連邦製KMF……ガン・ルウ……」
『クックック……会話だけで気をそらすとはまだ青い。』
 画面の中で、澤崎が嘲笑した。

1

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です