a captive of prnce 第12章:キュウシュウ戦役 - 2/9

「第二次枢木内閣の閣僚名簿及び写真です。」
 会議室のモニターに映し出された写真に、集まったもの全てが唸る。
 先ほど、エリア全土に流された放送で、日本の建国を宣言した男が写っていたからだ。
「───奴の背後関係は、はっきりしている……」
「殿下?」
 ぼそりと言ったスザクに、隣に座るダールトンが尋ねれば、厳しい顔のまま答える。
「澤崎敦は、終戦と同時に中華に亡命している。
開戦が避けられないと分かった時から、中華とコンタクトをとっていたのだろう。」
「───ずいぶんとお詳しいのですね。」
 ダールトンの言葉に苦笑する。
「父が自決してしばらくは、キョウトの桐原の世話になっていたから。
……嫌でもいろいろな情報が入って来ていた。」
「ブリタニアがスザク様を探していた事も……?」
「───ああ。」
 スザクは、軽く瞑目すると頷く。
 そして、懐から懐中時計を出すと時刻を確認した。
「総督の帰還予定まで後30分か……首実検の役目は果たした。
私はここで退室しても構わないか?」
「お待ち下さい。総督のご命令では……」
 幕僚の1人が引き止める。
「この状況で、私が表面に出るのは好ましくないと思うが……?」
 澤崎敦は、中華連邦の支援を受け、ホクリク遠征中のコーネリアの留守を狙ってフクオカ基地を制圧した。
 コーネリアがホクリクに出向く事になったテログループを支援していたのも中華だ。
コーネリアは、完全に澤崎の術中に嵌った事になる。
 そして、彼は犯行声明とともに、1つの宣言をしている。
『我々は、ここに正当なる独立主権国家、日本の再建を宣言する。』
 会議室の中にある複数のモニターの1つが、件の男の声を流した。
「何が日本再建だ。そんなものは中華の傀儡に過ぎん。」
 忌々しげな声が室内に響く。
「その通りだ。澤崎の後ろには中華がいる……
日本から離反した私が前面に出ては、事態が大きくなりかねない。」
「中華は、我々に戦争を仕掛ける機会をうかがっているのでは?」
「確かにその通りだが、それが中華連邦の統一した考えとは言いがたい。」
 ダールトンの元に諜報部の人間が書類を持ってやって来た。
「澤崎をバックアップしている人間が判った。」
 スザクと幕僚らの会話を遮るように、ダールトンが話しだす。
「曹 淵明(ツァオ ユエンミン)。資料によると51歳。昨年までは中華連邦第七機甲師団の将軍だった男だ。今は退役してリョートー軍管区の相談役を務めているらしい。」
「退役軍人か……」
「中華お得意のやり方だな……」
「外交ルートで、中華領事に抗議と事実関係の確認を文書で申し渡しますか?」
 ダールトンの問いかけに、スザクは頷く。
「相手の返事は大概予想つくが……」
「そうですな……一退役軍人が義勇軍を募って独断で支援しているもので、国軍とは関係ないと言い張るでしょう。」
「だが、しないわけにはいかないな……」
 スザクの言葉を受けて、文官に指示が出される。
「サセボとカゴシマ基地は持ちこたえられそうか?」
「難しいというのが正直なところです。政庁のあるトウキョウ防衛ライン以外は、地方に行けば行く程兵力の質が低いのが現実です。」
「キュウシュウの反抗勢力が加担する事も充分あり得ます。
澤崎には大義名分があります故……」
「チュウゴク、シコクブロックの各基地に厳戒態勢をしくように通達。
キュウシュウ軍管区の民間人の避難を急がせるように。」
 スザクがそこまで指示を出したところで会議室のドアが開かれ、このエリアの最高責任者である皇女が、騎士を従えて入って来た。
 一斉に席から立ち上がる軍人らに一瞥くれると、凛とした声を上げる。
「挨拶などよい。現況を報告しろっ。」
 カツカツと靴音を響かせ司令官席に座ると、一同を鋭い視線で見回す。
 スザクとダールトンは顔を見合わせると肩をすくめた。
「では、ご報告申し上げます。」
 ダールトンが口を開いた。

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