「状況の説明をっ。」
緊急事態を伝えに来たSPと共に慌ただしくリムジンに乗り込んだスザクは、車がアッシュフォード学園を離れるや否や、先ほどまで穏やかにしていた表情を一変させた。
厳しい口調で出される命令にSPのリーダー、レナード・ヴォルイックは淡々と報告する。
「カンモン大橋がテロと思われる攻撃で破壊されました。
キュウシュウブロック・フクオカ基地より、正体不明の一団から攻撃を受けていると統治本部に入電。
エリア統治軍ダールトン将軍より、政庁への帰還要請です。」
彼の報告が終わるか終わらないうちに、スザクの携帯端末がコール音を発した。
「はい。」
『急な呼び出しで申し訳ありません。殿下。』
通信相手は、果たしてダールトンであった。
「いいえ。副総督のご指示でしょう。」
『今回は私の一存です。ホクリクブロックでテロリスト討伐中の総督からも、万一の場合にはスザク様に指揮を委ねるとのご指示でしたので……』
「了解した。敵は、黒の騎士団か?」
『いいえ。全くの新手です。
フクオカ基地は、善戦虚しく陥落しました。』
「───!!」
落ちるのが早いだろう。と、SPからも声が上がる。
「………総督は、いつこちらへ戻られる?」
『今夕には……
フクオカ基地を制圧したテロリストから犯行声明が、電波ジャックによってエリア全土に流されてしましました。』
「このエリアのセキュリティは、どうなっている……っ!」
スザクらしくない叱責に、ダールトンが嘆息する。
「コーネリア様が赴任して以来、軍と防衛の強化はある程度進みましたが…度重なるテロにシステムが追いついていないのが現状です。」
「クロヴィス兄上の負の遺産か……」
スザクも小さく息を吐く。
副総督補佐に就任するまで、自分も統治軍に深く関わって来ていたスザクは、姉やギルフォード、ダールトンがかなりの時間と労力を削って、このエリア駐留軍の規律の引き締めと兵力の向上を行って来ている事を知っている。
彼らの努力が解るだけに、治安が安定しないこの現況に嘆息してしまうのだ。
「全幕僚を統治軍本部に招集。
テロリストの背後関係の洗い出しを……声明が出ているという事は、首謀者は判っているのだろう。」
『殿下……貴方に縁のある人物かも知れません。』
「なん………だって……?」
『主犯格は、澤崎敦を名乗っています。
この人物の名に、聞き覚えは?』
「───ある。 よく父の元に来ていた。
第二次枢木内閣で、官房長官を務めていた人物だ。」
『───顔の確認をお願いします。』
「ああ……」
通信を切ると、シートに深々と体を預ける。
「殿下……?」
急に態度の変わったスザクを、側のSPが気遣う。
スザクは、それに気づく様子も無く遠い目をした。
「……こんな事は、ここに来る前に覚悟して来たんだけどな………」
そうつぶやくと瞳を閉じた。
終戦から7年───
枢木ゲンブの亡霊に立ち塞がれた……そんな気がしてならない。
何度、ブリタニアの皇子として生きて行くと自分に誓ったか解らない。
その度に、父の影がいつも自分に覆い被さってくる。
「父さん……貴方はそうやって、どこまでも……」
僕を自分に縛り付けようとするんですね………
スザクは、膝の上の両手を硬く握りしめた。
a captive of prnce 第12章:キュウシュウ戦役 - 1/9
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