a captive of prince 第13章:学園祭宣言 - 1/6

 私立アッシュフォード学園文化祭。毎年数多くの模擬店と生徒会主催のイベントが話題の、文字通りのお祭りは租界でも人気が高く当日の来校者はかなりの数に上る。
 しかし、今年は昨年の比ではない賑わいだ。
 というのも、最近話題の皇子殿下が生徒会のイベントに特別参加するとずいぶん前から噂になっており、しかもそれはマスコミも知るところとなったようで、多くの報道機関まで来ていた。
「一体何を考えているんです、貴女はっ……!
マスコミまで呼んで……オレやナナリーが見つかったらっ……」
「だぁって……私の夢だったんだもの。巨大ピザ。
それに、マスコミだったらスザク殿下が引き受けて下さるから大丈夫よ。」
 詰め寄るルルーシュに、相変わらずあっけらかんと答えるミレイ。
 のれんに腕押し……言うだけ無駄だと、ルルーシュはこれ以上このイベントに関わらない事とし、各クラブの模擬店対応に専念する事にした。
 校内を見回っていると、巨大ピザ作りの準備をしているブースにさしかかった。
 そこには、SPに警護されながらカレン・シュタットフェルトと会話しているスザクの姿があった。

「ミレイ会長から、殿下のご伝言を伺いました。あれは……」
「言葉の通りです。僕は、貴女の事について僕が知り得た事を誰にも話すつもりはありません。」
「何故……私を懐柔しようと……?」
 カレンは、鋭い目で問う。それにスザクは、フッと笑う。
「貴女には、大切なものがたくさんあるようだ……
ここでの学生生活もそうでしょう?今日は僕も楽しませてもらうつもりです。」
 にっこり笑うスザクに、カレンが毒気を抜かれて唖然とする。
「カレン。来ていたのか。」
 後ろからかけられた声に振り向くと、ルルーシュが立っている。
「え…ええ。今日は体調が良くて……」
「それは良かった。すまないが、クラスの出し物の応援に行ってくれないか?」
「分かったわ。では殿下。失礼します。」
 ぺこりと頭を下げて走り去る彼女を、スザクは相変わらず笑顔で見送っている。
「殿下。何故こちらに?殿下に待機して頂く部屋は、別にご用意しましたが。」
 若干責めるような響きでルルーシュが話しかければ、SPの1人がムッとして睨みつける。
 スザクは、苦笑しながら彼を制した。
「心遣いは有り難いが、あそこでは折角の学園祭がよく見られないのでね。我が儘を言うが、ここで待機させてくれないか?
ちょうど、ナイトメアの調整もできるし……」
「はあ……」
「僕が所属している部隊の者も一緒に来ているんだ。みんな、結構楽しんでいるようだよ。」
 そう言うスザクの視線の先では、軍服の女性が“人間モグラたたき”に興じていた。
「僕も、こっちが終われば見て回ってもいいんだよね。」
 気さくに話しかけるスザクに、ルルーシュの表情も緩くなる。
「はい。それは勿論……」
「でしたら、私がご案内します。」
 ナイトメアの整備をしていたニーナが、オイルで汚れた手を拭いながらやってきた。
「そうか。それじゃあ、ニーナ。あとを頼むよ。」
「ええ。任せて。」
 いつになく上機嫌のニーナにあっけにとられながら、ルルーシュはそそくさとその場を去った。
 これ以上いると、余計な事を話したり聞きたくなってくる。
 状況に合わせて態度を変えるのはルルーシュも得意とするところだが、スザクの涼しげな態度は、昨晩自分のところに忍んできた時とは全く違い、心の内をかけらも見せぬ様子がいかにもブリタニア皇族然としていて、ルルーシュには堪え難かった。

 立ち去るルルーシュを見送り、スザクは小さく息を吐く。
「彼、忙しそうだなあ。」
「ルルーシュ、優秀だからいろいろな事頼まれちゃって……この文化祭の運営も、彼が仕切ってくれているからスムーズに進んでいるようなものなんです。」
「へえ。」
 感心したスザクの声に、ニーナは嬉しそうな顔をする。
「ルルーシュは迷惑かもしれないけれど、ミレイちゃ……会長は、優秀な部下を持った私は幸せって自慢しています。」
「でも、そんなに頼りにされてちゃ、大変そうだね。」
「私もそう思うんですけど……最近人の動かし方を憶えたから……って。」
「ふうん。本当に優秀なんだね。人を上手く動かせるのは、良い指揮官の条件だから……」
 そう言って目を細める。
「指揮官?」
 キョトンとして尋ねるニーナに、笑顔で答える。
「軍隊ならね。」

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