真理の扉からアルの身体を持ってきちゃった 9 - 3/10

「地下トンネル?」
街の復興を手伝いながら、アルフォンスはようやくこの街へやってきた目的を告げることができた。
「もし、トンネルがあれば…いや、必ずここにあるんだ。
それを……」
話を進めようとする息子を制し、ホーエンハイムは人気のない物陰に誘導する。
事情を聞き終え、ホーエンハイムは内心感嘆していた。
フラスコの中の小人ホムンクルス」の計画に自分の子供が巻き込まれてしまっていることは衝撃だったが、それに屈することなく立ち向かおうとしている。
彼らもまた、自分と同じ目的を持って動いていたという事が、嬉しくもあり誇らしかった。
だが、敢えて無関心を装う。
「……ふうん。
つまり、その国土錬成陣の発動を阻止しようとしているわけか。」
「そのためにリオールに来たら、父さんがいてびっくりした。
……と、同時にラッキーと思ったよ。」
「……どうしてだ?」
自分に会えたことが幸運だという息子に、一瞬胸がざわつく。
中央セントラルの地下で父さんにそっくりな男を見たんだ。
父さんと無関係とは思えない。
その男が何者かを知っているんじゃないかって。
父さんに会ったら、訊こうと思ってた。」
………そうか。あいつを知っているのか……
想像以上に深く関わってしまっていることに愕然とする。
「いいのか?アルフォンス。」
「え?」
「俺が、あっち・・・側の人間だったらどうする?
こんなにペラペラしゃべって。
俺から、あっちに筒抜けになるとは考えなかったのか。」
「あ………」
警戒心のなさを指摘すれば、息子は慌てて口元に手をやり、不安そうに自分を見ている。
父親というだけで信用してしまった事を反省しているのだろうか。
だが、その事が無性に嬉しかった。
アルフォンスの胴を拳で軽く叩く。
「俺を信用してくれて、ありがとうな。
嬉しいよ。」
「…うん!」
素直に気持ちを伝えれば、嬉しそうな声が返ってきた。
こんな男でも、一応父親とみて信用してくれている。自分も、息子を信じて、全てを話さねばなるまいと決心した。
「話せば長くなるな。
エドワードにも聞いて欲しいんだが。」
兄も、と言われアルフォンスは弱ったなと顎を掻く。
「それなんだけど。実はさ……
兄さん…行方不明なんだ……」
「……へ?」
思わず絶句してアルフォンスを見るホーエンハイムを、街を見下ろす断崖から山羊が見ていた。

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