真理の扉からアルの身体を持ってきちゃった 6 - 6/6

「うっ……!?」
突然襲ってきた鈍痛に、ルースは呻き声を漏らすと体を折り曲げる。
背中の左脇腹から、圧迫されるような痛みを感じる。
「なん……だ?」
痛みは背後から前面に向かって襲ってくる。ギリギリと何かが臓腑を食い破ってくる……そんな錯覚を覚える痛みだ。
「あっうっ……!」
経験した事のない痛みに、ルースは困惑する。
……内臓の異常からくる痛みではない。それは分かる。では、これは一体何だ?
「まさか……アルフォンス……?」
この痛みは、君のなのか⁉
ルースは、左腹を押さえたまま動くなった。

「うっ……」
急激に意識が遠ざかる。
アルフォンスは呻き声と共に倒れた。
「⁉ アル!!」
坑道を使って山の反対側へ無事逃げ遂せることができたウインリィ達と、吹雪の中山越えして合流したアルフォンスは、傷の男が知るというイシュバール人のスラムへ向かっていた。
その最中、突然襲ってきた意識の喪失……
「アル。どうしたの⁉」
「アルフォンス様!!」
ウインリィとメイが彼に駆け寄る。先を歩いていた男たちも引き返し来ると、その状況に目を見張った。
「おい、鎧の!しっかりしろ!」
ジェルソが声をかける。
何だ。この感覚……
「なんか……魂が引っ張られるような……」
そこまで言って、アルフォンスの意識は完全に沈んだ。
「魂が引っ張られる?」
抽象的な表現に傷の男が首を傾げる。
「お嬢さん。今までこんな事があったかい?」
マルコーの問いかけに、ウインリィは首を振る。
「わからない! アル!!」
どうしたら良いのか分からず、ただ、幼馴染の名を呼び続けるしかできない。
「アル、起きて! 誰か、アルを助けて!!」
誰か……
脳裏に浮かぶのは、彼の兄で思い慕う幼馴染の顔。
「エド!!!」
少女の悲痛な声が、冬の山麓に降り積もる雪に吸い込まれていった。

 

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