詐偽の対価 - 6/6

「リゼンブール。リゼンブールだよ~。」
聞きなれたアナウンスが響く駅に到着したのは、空が茜色に染まりカラスが鳴きながら家路に向かう頃だった。
昼前に着くはずが、もう夕方だ。
「長かったなあ……」
バタバタしていて到着が遅くなることを連絡し忘れていた。みんな、心配しているだろう。家に着いたら謝ろうと考えながら駅舎を出る。
「よっ。アル。お疲れさん。」
駅前の通りに、エドワードが立っていた。ニカっと笑って呼び掛けてくる兄に、アルフォンスは驚いて駆け寄る。
「兄さんっ。どうして……」
「マスタング准将から、お前が今の汽車に乗ったって連絡貰ったからな。」
「そうなんだ。」
思いがけない気づかいに、頬が緩む。
「それにしても、お前……本当にケガとかしてないか?」
そう言いながら、体のあちこちを点検する兄に、くすぐったいよと笑う。
「大丈夫だから。僕が強いの知ってるでしょ?」
「お前な。そういう慢心は命とりなんだぞ。」
昔、さんざん無鉄砲な真似をしてきた人が何を言うんだ。と内心思いながら「はいはい。」と相槌を打つ。
「本当に……もう、鎧じゃないんだからよ。
鉄砲玉が当たったら死んじゃうかもしれないんだぞ。」
眉根を寄せ見つめてくる黄金の瞳に、眉尻を下げる。
「兄さん……ごめんね。心配かけたね。」
「いやあ。お前の事だから、大丈夫って信じてたよ。」
真摯に謝ると、穏やかな笑みが返ってくる。
「ばっちゃんとウィンリィが待ってるから、早く帰ろうぜ。」
そう言って、エドワードはアルフォンスの手からトランクを攫って先に歩き出した。
「兄さん。重いからっ。」
「大丈夫だって。……本当にずっしり来るなあ。
何入ってんだ?」
「錬丹術の書物……持てるだけ持ってきたから。」
「どうりで……」
「だから僕が持つよ。」
「大丈夫、大丈夫。さっ、行こうぜ。」
明るい笑顔で歩き出すエドワードに、笑顔で頷く。
2人は並んで、家族の待つ家へと帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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