a captive of prince 第13章:学園祭宣言 - 3/6

「ユフィ。何故、あんな事を……」
 政庁に戻るリムジンの中、向いに座る少女にスザクは恨めしそうな顔で問いかける。
 ユーフェミアは、スザクの怒りの理由を理解できていなかったが、自分の行動がスザクを失望させた事だけは理解できたので、殊勝な面持ちで肩書きは部下の兄を見た。
「勝手な真似をしてごめんなさい。でも、素案をシュナイゼルお兄様にお見せしたら、素晴らしい、是非実現しなさいと許可して下さったの。」
「───あれは、僕と一緒にもう少し内容を精査検討してから、姉上と兄上に見せる約束だったよね……」
「え…ええ……でも、お兄様にご意見を頂ければ少しでも早く実現できるんじゃないかと……」
「それで、抜け駆けした訳だ。」
 スザクは息を吐くと、窓の外に視線を移した。
「───ごめんなさい………」
「今更謝ってもらっても……言った事は取り消せない。
エリア副総督が公表したんだ。兄上と姉上にも協力をお願いして形にしないと…………何故、ゼロに参加を呼びかけたの?」
「何故……て。その方が物事が早く進むと思ったの。黒の騎士団が参加してくれたら、他のイレヴンの方々だって……
それに、ルルーシュとナナリーのためにも……」
「この特区構想そのものが、黒の騎士団の行動を封じる策の1つなんだ。
それを、参加を呼びかけた事で彼らをますます追いつめる事になる……!
ユフィ。君がした事はルルーシュを追い込む事になりかねないんだよ。」
「そうかしら。ルルーシュがゼロとして特区に参加してくれたら、ナナリーの事も守りやすくなるはずよ。」
「エリア法に数々違反している彼を、どうやって参加させるんだ。罪を帳消しにする方法なんて……」
「あるわ……あるのよ。スザク。」
 自信に満ちあふれた顔を、スザクは目を見開いて見つめた。

 政庁に戻った2人を、コーネリアの騎士であるギルフォードが出迎える。
「ユーフェミア副総督。総督がお待ちかねです。至急執務室へ……」
「わかりました。」
「ギルフォード卿。先ほどの放送の件なら僕も……」
「スザク殿下は、シュナイゼル様がお呼びです。」
「……わかりました。」
 取りつく島もないギルフォードの対応に、従うしかなかった。
 それでも小声で話しかける。
「ふたりの話がこじれるようなら、僕もご説明に参上します。
あの構想は、僕と彼女の連名で起案したものですから。」
「スザク様もですか……!」
 ギルフォードは驚きを持ってスザクを見る。
「とにかく今回の事は、ユフィの勇み足だ。僕の知らないところで兄上に草案を提出し、受理されたらしい。
姉上へご説明とお伺いを立ててからと、言っておいたのだけど……」
 男達は顔を見合わせると、騒動の中心の少女を見て肩をすくめた。

「失礼します。」
 シュナイゼルの元を訪れたスザクを、兄は穏やかに出迎えた。
「折角の学園祭が大騒ぎになってしまったね。」
「ええ……結局、殆ど見れないまま帰る事になりました。」
 ため息と共に兄の前のソファに座る。
 それを見計らったカノンが、2人に紅茶を運んだ。
 ふくよかな香が当たりに漂う。
「───あの案件……宰相府で受理されたという事でしょうか。 
 でなければ、完全にユーフェミアの勇み足となりますが……」
「素案だけで採用させてもらったよ。フジを特区とするのは私が了承した。
というか…特区用地は私から提案したのだが……」
「そうでしたか……どこを特区とするか……これから姉上にご説明とご相談をと考えていたので……」
 その言葉にシュナイゼルは眉根を寄せる。
「コウはまだ知らなかったのかい?」
 それは困ったな。とシュナイゼルもため息をつく。
「てっきり総督の承諾を得てるものだと……まさか、真っ先に私のところに持ってくるとはな……」
「姉上は、規律を重んじる方です。被支配民との垣根を壊すような政策に賛成してくれるか心配だと、言っていました。
もしかしたら、兄上の許しも出ていると言って、押し切るつもりだったのかも……」
「……そして、私が許可したその日のうちに公表か……やれやれ。」
 シュナイゼルはまた息を吐くと、紅茶のカップに手を伸ばした。
「───ゼロ……黒の騎士団に参加を呼びかけるというのは、スザクも考えた事なのかい?」
 スザクは頭を振る。
「僕は、そこまで考えていませんでした。むしろこの構想によって彼らの屋台骨を崩せると……彼らに揺さぶりをかけるつもりでした。」
 スザクの話に、くつりと笑う。
「なるほど……そして、ユーフェミアが参加を呼びかけた事で彼らは全く身動きができなくなる……参加、不参加どちらを選んでもイレヴンの支持を得られなくなるだろう。ゼロがどう出てくるのか……楽しみだ。」
 不敵な笑みの兄に笑い返しながらも、スザクは焦燥していた。
 こんなはずじゃなかった……
 この特区によって、急速に組織を拡大させた黒の騎士団に楔を打込み、内部崩壊を狙っていたスザクは、内部崩壊後のシナリオを前倒しするしかないと考えていた。
 ユフィと2人で思いついた構想であるが、スザクはルルーシュをこれに巻き込むつもりはなかった。
 彼の牙である黒の騎士団の存在意義を奪い活動停止に追い込めば、ルルーシュは他の手を考えなくてはならなくなる。そのはずだ。
 その時に黒の騎士団から手を引かせ、シュナイゼルに助力を求めて2人を保護するつもりだったのだ。
 もしも、ルルーシュが黒の騎士団にこだわり、ブリタニア打倒を諦めないのであれば、密かに支援するつもりでもある。
 ルルーシュは外から、自分は中から……方法は違えど、目的は同じはずだ。
 だが、ユーフェミアは………

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