a captive of prnce 第12章:キュウシュウ戦役 - 7/9

 エナジーが底をつき、味方が届けに来てくれた新しいフィラーを受け取る事もままならず、ついに敵に囲まれてしまった。
 スザクは、もはやこれまでと覚悟を決めた。
 が、一旦手放した操縦桿を再び握り直し、活路を見出そうとしていた。
スザク本人は気づいていないが、その時彼の瞳は赤く縁取られていたのだ。 
 ルルーシュが式根島で、スザクにかけたギアス。
 絶対遵守のその命令が突き動かす。『生きろ』と……
『まだだっ。まだ道はあるはずだっ……俺は…俺は生きなきゃならないんだ!』
 ギアスによって叫ばれた皇子の声が、彼を守護する者達を奮い立たせる。
 その時、砲撃音が彼らの頭上で轟き、取り囲んでいたガン・ルウが次々と暴散した。
「な…なんだ?」
 ギアスの解けたスザクが茫然と呟く。
 辺りは、炎上する敵で明るくなっていた。
『殿下!早くっ!』
 部下の声で我に返ったスザクは、差し出されたエナジーフィラーを受け取ると、残量ごく僅かとなったものと交換する。
『スザク。どうにかエナジーの交換はできたようだな。』
 頭上からオープンでかけられた言葉に、ランスロットは声の主を仰いだ。
「ゼロ……やはり君か……これは、一体何の真似だ。」
『これはまたずいぶんな言い草だな。』
 警戒を解く事無く話しかければ、ゼロは鼻で笑った声を返してくる。
『君のナイトメアが、折角味方が持って来たエナジーを受け取るのに難儀していたようだから、少し手助けをしてやっただけのことだ。』
「そうやって恩を売るつもりか……この見返りははなんだ。
式根島のときと同じか?味方になれと……だが───」
『私を侮辱するな。私は、私の目的があってここに来た。
あそこの司令部にいる馬鹿な亡命者と、まがい物の『日本』を叩くという目的がな。
うぬぼれるなスザク・エル・ブリタニア。あの程度の敵、君の助力など無くとも私だけの力で始末してみせる。』
「助けが必要ないなら、何故こんな事をする。」
『それは確率論の問題だよ。ここで君たちのナイトメアが再び暴れだせば、私のナイトメアの盾くらいにはなる。』
『貴様っ!我々ブリタニアを盾にするだとっ!!』
 一機のサザーランドがMVSをガウエンに向ける。
 スザクはそれを制すると薄く笑った。
「言いたい放題、言ってくれるね。」
『だが事実だ。───さて、それをふまえた上で諸君らがどうするか、だが?』
 沈黙の後スザクは口を開いた。
「礼は言わない。」
『望んでなどいない。』
「だが、借りは返す。この場で全て。」
 通信の先で、ゼロがニヤリと笑ったような気がした。
『せいぜい私の役に立ってもらおうか。スザク。君の言う通り、この場では。』
「………相変わらず、君の言葉はどうも僕の癇に障る。
でも──そうだな。まがい物の『日本』とあの愚かな亡命者は今ここで叩きのめしておかなければならないというのは、僕も同意する。その点で君に協力しよう。だが……」
 スザクは、気迫のこもった声でニヤリと笑った。
「君の願いは叶わないよ、ゼロ。あの司令部は我々が君よりも先に叩かせてもらう。」
『ふん。やってみろ。』
 ゼロが微かな笑いを残して通信を切った。
 それに、スザクは再び笑みを漏らすと、彼の部下であるレナード達に通信を繋げる。
「聞いた通りだ。これから、作戦通り敵司令部を攻撃する。
ゼロに遅れをとるな。」
『イエス ユア ハイネス!』
 白き騎士と黒き魔人が、同じ敵に向って動き出した。

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