a captive of prince 第11章:再会 - 5/7

 ひとしきり笑うと、スザクは一転して真面目な顔をする。
「ルルーシュ、ナナリー。僕は、君たちに謝らないといけない。」
「どうした。改まって。」
 怪訝な表情で尋ねルルーシュに、スザクは何度か言い淀むと意を決して話しだした
「僕は……君たちが戦争前に日本から脱出する機会を潰してしまった。」
 その告白に、2人の表情が強ばった。
 7年前───
 ナナリーのために、近所の農家にイチゴを分けてもらいに行くスザクに、ルルーシュがついて来た事があった。
 その帰路、3人が住まう枢木別邸近くの雑木林で、不審な男達の襲撃を受けたのだ。
 スザクの活躍とルルーシュの機転で、事無きを得たのだが……
「あれは、アッシュフォードの命を受けた者達が仕掛けた事だったけれど、同じ事を考えていた人がブリタニアにもいたんだ。
───シュナイゼル様だよ。」 
 敢えて、兄のことを様付けで言う。ルルーシュとナナリーの心情に配慮しての事だ。
「シュナイゼル兄上が?」
「秘密裏に2人を連れ出す機会を探っていたらしい。
あの頃、誰かに監視されているような気がしていたけれど、アッシュフォードだけでなく、殿下が送り込んだ者もいたんだ。
その人物が、あの事件を見ていて報告した事で別の方法を探っていたが、2人を助け出す前に戦争が始まってしまった。
だから……」
 僕のせいで、戦争に巻き込まれてしまったんだと頭を下げる。
「───スザク。それは本当なのか?」
 ルルーシュが、慎重に言葉を紡ぐ。スザクの話を疑っている訳ではない。だが、にわかには信じられないことだった。
 父が見捨てた自分たちを、第二皇子で皇帝の椅子に最も近いと言われているシュナイゼルが、助けようとしていたとは……
「本人から聞いたんだ。間違いないよ。
それにこのことはコーネリア様もユーフェミア様……オデュセウス様クロヴィス様も賛同していた。」
「姉上や、クロヴィス兄上まで!?」
 スザクが齎した真実に、ルルーシュは驚愕しナナリーも口元に手をやった。
「どうして……」
 ぽつりとこぼした言葉に、スザクの方が驚きの声を上げる。
「どうして?身内なら当然のことじゃないか。」
「当然のことが当然じゃないのがブリタニア皇室だ。お前もあの中にいるなら分かるだろう。」
 ルルーシュの言葉に頷く。
「うん。そうだね、あそこには僕の常識とは違う考えをお持ちの方が大勢いらっしゃる。」
 ルルーシュが鼻で笑った。
「でも、少なくともさっき上げた方々は、僕と同じ感性をお持ちだよ。
そして多分、ルルーシュとナナリーとも……」
「まさか……」
 否定的なルルーシュの言葉に、スザクは顔を伏せた。
「───そうだね。今まで国に…親兄弟から捨てられたと思って生きて来たんだ。
突然僕がこんなことを言っても信じられないだろう。
でも、僕が今日までブリタニアで…あの、魔窟のような皇宮で生きてこれたのは、あの人達がいてくれたからなんだ。」
 スザクの必死の訴えに、ルルーシュは息を呑んでその顔を見つめる。
「───信じますわ。スザクさんのお声は、嘘をついているようにも、無理矢理言わされているようにも思えませんもの。」
 穏やかなナナリーの声に、スザクはほっとした。
「ありがとう……実は、謝らないといけないことがもう1つあるんだ。
2人が見放されたと思っている原因に、ユフィからの便りが来なくなったことがあると思う。実は、手紙はちゃんと届いていたんだ。」
「何だと。それじゃあどうして………枢木首相か……?」
 察しのいいルルーシュにスザクは頷く。
「ごめん。父さんに気づかれていたみたいだ。僕の手元に届く前に、父さんが隠匿していた。
ブリタニアに渡った時に、ユフィに問いつめたんだ。そうしたら、返事はちゃんと出していたと……
このエリアに帰って来た時、実家の父の書斎で、金庫に隠されていたのを見つけたよ。
今、僕が大事に預かっている。今度持ってくるよ。」
 そう言って、スザクはナナリーの手を握る。
「それじゃあ。ユフィ姉様は私達のことを……」
「見捨てたり忘れてなんかいない。今でも2人の生存を信じている。
だから………」
 2人は見捨てられた訳じゃないのだと、静かに語った。

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