a captive of prince 第11章:再会 - 6/7

「さあ。そしてここが、我がアッシュフォード学園高等部生徒会執行本部でーす。」
 先に立って校内を案内して来たミレイが、生徒会室の前でくるりとスザクの方を向き、堂々と入り口を指し示す。
 その自慢げな態度にスザクは思わず吹き出し、同行しているルルーシュが額に手をやる。手を叩いて喜んでいるのはナナリーだ。
 3人きりで久しぶりの再会を喜び、歓談の後ミレイを含めた4人で、スザクは生まれて初めての高等学校を見学した。
 皇子の来訪を知らせていなかったため(ミレイ曰く、サプライズ)、どの教室でも生徒から動揺と喜びの声が上がり、教師は、皇子を前にガチガチに固まって授業進め、スザクや生徒達の失笑を買っていた。
 体育館で行われていたバスケットボールの試合に、スザクが飛び入りで参加してあっという間にシュートを決めると、試合中の生徒だけではなく集まって来ているギャラリーから惜しみない拍手と歓声を受けた。
 第十二皇子がこんなにも気さくな人だと思わなかったとはしゃぐ庶民の生徒がいれば、ナンバーズ上がりがこんなことで人気取りかと小声で嘲る貴族の生徒もいたが、スザクは、こんなものを気にしていては宮中では生きて行けないと全く意に介した様子も無く、楽しそうに笑っていた。
 そして、学校見学の最終地点が、ここ生徒会室だった。
「さあ。殿下、ようこそアッシュフォード学園生徒会へ。」
 そう言ってスザクを室内に招き入れる。
 そこには、既に何人かの生徒がいた。
「彼らが、私達の良き仲間。生徒会役員の面々です。」
「初めまして。ようこそスザク・エル・ブリタニア殿下。 
生徒会役員一同、殿下を歓迎します。」
 赤みがかった金髪の快活そうな少女が愛想よく挨拶する。
「シャーリー・フェネットです。」
 彼女の自己紹介を切っ掛けに、他のメンバーも次々と名乗る。
「リヴァル・カルデモントです。」
 そばかす顔にくせ毛の少年が、人好きのする笑顔を見せ、お下げ髪に眼鏡の少女がおずおずと声を出す。
「ニーナ・アインシュタインです……」
「アインシュタイン……?ひょっとして、ナイトメアフレームを開発された、アインシュタイン博士のご親戚の方ですか?」
 スザクの問いかけに、ニーナはびっくりした顔をし大きく頷く。
「はっはい。私の祖父です。」
「そうですか。博士のナイトメアに関する著書は全て拝読しています。
驚いたな。博士のお孫さんにお会いできるとは……」
「ニーナは、化学の成績が常に学年1位なんですよ。」 
 シャーリーが、我が事のように自慢する。
「そうですか。将来は科学者に?」
「あ…はい。実は今、サクラダイトに変わる新しいエネルギーを研究していて……」
「貴女がですか?すごいな。」
 スザクと嬉しそうに会話をするニーナに、生徒会メンバーは驚きを隠せない。
「あの内気なニーナが……」
「イレヴン恐怖症なのに…殿下は大丈夫なんだ。」
「さすがね。そつがないわ。」
 ミレイが感嘆の声を上げるのに、ルルーシュが首を傾げる。
「そつがない?」
「スザク殿下よ。生徒会にお招きすることは、事前に秘書の方にお知らせしてあるから当然私達の身元調査がはいっているはずなのよ。
あ。ルルちゃんとナナちゃんのデータは渡していないから安心して。」
 ミレイは悪戯っぽく笑う。アッシュフォードの抜かりの無さは充分承知しているルルーシュは、そんな心配はしていないと笑った。
「きっと、そこからニーナのおじいさんがナイトメアの開発者だって分かったんでしょうね。
あの内気なニーナとあんなに打ち解けて……
皇族の社交術なのかしら。ほら、もうすっかりまるで昔からここにいるみたいじゃない?」
 ニーナとの会話を皮切りに、リヴァルやシャーリーとも楽しそうに話をするスザクを、ルルーシュは驚きを持って見つめていた。
 昔とは全然違う……ルルーシュの知るスザクは、こんなにも人当たりよく調和のとれた人間ではなかった。むしろ、人との関わり方が下手で、いつも、つい腕力で会話をしてしまうような性質だった。
 7年間の宮中生活で培ってきたのだろう社交術は、兄シュナイゼルのものに酷似していて……ルルーシュはそれが悔しく思えた。
「ミレイ嬢。そう言えば、カレンさんの姿が見えませんね。」
 スザクの問いかけに、同じ生徒会だと紹介したことを思いだし、今日は来ていないのだと答える。
「午前中の授業には出ていたんだけどな。」
「彼女、体弱いから……お昼前に早退しちゃったんです。
頭痛が酷くなって来たから…て。」
 同じクラスのリヴァルとシャーリーが申し訳なさそうに言う。
「体調が悪いのでは仕方ないですね。」
 そう言ってミレイの側にやってくると、小声で話しかける。
「彼女が来たら伝えて下さい。秘密は秘密のままにするのが1番いい……と。」
「───殿下?」
 意味深な言葉に、ミレイは目を瞬かせる。
「それで、彼女には分かるはずです。」
 そう言ってスザクは目を細めるのだった。
 2人の様子を側で見ていたルルーシュは、背筋に冷たいものが走るのを感じた
 式根島で、陥落寸前まで追いつめたスザクとは違う。
 たった数日で何がここまで彼を強くしたのか……
 チョウフで名乗りを上げた時よりも、もっと芯の強いブリタニア皇族が、今、自分の前に立ちふさがろうとしているのをルルーシュは否応も無く見せつけられていた。

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