ゼロが、ルルーシュ殿下だってっ!?
スザクによって齎された衝撃の真実に、ジノは動揺していた。
死んだはずの皇子が生きていて、国に半旗を翻した。これほどの衝撃はない。
行政特区を提唱したスザクが、その正体を知っていたという事は……!
ユーフェミアの元を尋ね、驚く彼女にすごい剣幕で確認すれば、彼女が初めに仮面の下の素顔を知ったのだと言う。
「全ては、ナナリーとルルーシュのための施策でした。
でも、ルルーシュには迷惑だったのかもしれませんね………」
あの激しい揺れは黒の騎士団の攻撃によるものだと知らされ、愕然とし、涙ながらにつぶやいた。
「くそっ。ゼロはどこだっ!」
トリスタンフォートレスモードで、租界の空を飛ぶ。
早く見つけなければ……シュナイゼルの軍が来てしまう。
そうなればこの反乱は瞬く間に鎮圧されるだろう。ゼロも、その事は見越しているはず。
本国からの応援が来るまでの短期決戦。政庁を攻略し、総督を捕らえるのが目的か。そのとき、スザクも奪うつもりなのだろう。
上空から目視で探すしかない。ガウエンはステルス装甲のためレーダーに映らないからだ。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……直接面識はないが、スザクが日本から持ち込んだ僅かな写真と、風の噂に聞いたルルーシュ殿下の優秀さは知っている。
あのシュナイゼルが、将来を大いに期待し、同時に恐れていた皇子………
ゼロの大胆なまでの戦略とその華々しい戦果は、生まれもった優秀さの賜物か。それとも、スザクが疑う特殊能力の魔力故か………
陛下は、ゼロがルルーシュ殿下だと分かっていたのか……?
ゼロを捜索しながら、皇帝直々の命を思いだす。
「ゼロが特区に参加するならば、ユーフェミアの願い通りその地位と引き換えに罪を赦そう。
だが、特区に参加せずあくまで我がブリタニアに弓引くというのであれば、捕らえて我が前に引っ立てて参れ。儂が直々に裁きを下してくれる。」
冷然と見下ろしてくる皇帝の笑みに、身震いしたものだ。
植民地のテロリストを捕らえ、本国…まして皇帝の前に引きずり出すなど、これまでにあり得ない事だ。
それほど皇帝がこの希代のテロリストに関心を持っているのだと思っていたが……
そのテロリストの正体が自分の息子だと知っていれば、シャルルの言動は腑に落ちる。
1度は捨てた我が子を、再び手元に置こうというのか。
だが、ジノは皇帝の命に釈然としないものを感じていた。
それは、ジノに与えられたもう1つの命令。
“スザクを、ゼロと黒の騎士団に奪われるな”
「あれは、儂の大事な養い子だ。テロリストごときに奪われるわけにはいかぬからな。」
それぞれ聞けば、何ら不思議のない言葉のようにも思える。
しかし、何か違和感が残る……皇帝は、2人の皇子をどうしようというのか。
自分の主の命に不審を抱くようでは、騎士としては不適任であろう。だが、そもそも皇帝に忠誠をもってこの地位にいる訳ではない。
「私が主と定めるのはスザクだけだ。」
だから、スザクのために動く。例えそれが主命に背く事になろうとも。
「とにかく、本国の部隊が来る前にルルーシュ様に会わなくては……」
スザクの言葉を伝えるために。
ルルーシュは、政庁攻略の拠点として、ナナリーが自分の帰りを待つアッシュフォード学園を定めた。
黒の騎士団がいる事で、学園にすむ学生とナナリーを守る事が出来る。
政庁を攻略し軍を掌握できれば、本国もおいそれとは手を出せなくなる。
そうなれば、他の反ブリタニア勢力との連携を強化し、分散している反抗勢力をまめる事も可能だ。
あともう少しの辛抱だ。そうすればいつでも一緒にいられるようになる。我慢してくれと、生徒会メンバーと一緒に不安げな顔をしている妹に心の中で謝る。
そこへ、ニイガタ基地から爆撃部隊の出撃と、ナイトオブラウンズが参戦したという情報が齎された。
「ゼロ。私が行きます。」
護衛のため同行していたカレンが出撃を申し出る。
「君にはここを守って欲しかったのだが………」
「ラウンズが出て来たという事は、ゼロが目的のはず。
私は、ゼロの親衛隊長なのですから、盾になるのは私の役目です。」
「───分かった。だが、相手は帝国最強十二騎士のひとりだ。
増援がまわせない今、一騎打ちになるぞ。」
「望むところです。」
少女の闘志溢れる表情に、ルルーシュは賭ける事にした。
「では頼む。くれぐれも無理はするな。多少の足止めが出来ればいい。」
「はいっ!」
きびきびとした態度で出て行くカレンを見送り、ルルーシュは自分の目的のため動く事にした。
コーネリアを攻略する。
クロヴィスからも名前が出、自らも母の死の真相を探っていたという第二皇女………
お前の知る情報を話してもらう。
母の仇を討つために────
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