a captive of prince 第16章:モザイクカケラ - 1/11

 フジ特区エリアで発生した暴動は、エリア全土へ飛び火していった。
 どんなに重厚な堤防でも、決壊させるにはほんの僅かなひびが入るだけでいい。
 ユーフェミアの発言は、まさにそれだった。彼女と共同で特区を推進して来たスザクが、日本人を庇って攻撃されたという報道は、火に油を注いだ。
 7年間、ブリタニアという巨人に虐げられて来た日本人のたまりにたまった反感と憎悪が一気に噴出したのだ。
 各地で繰り広げられる、蜂起した民衆それを支援する反ブリタニア勢力とブリタニア軍の攻防は、民衆の怒りが圧倒した。
 エリア11は怒りの激流に飲み込まれ、その渦はブリタニア政庁があるトウキョウへと押し寄せていく。
 その向う先には、ゼロ率いる黒の騎士団がいた。
 一斉蜂起した民衆と黒の騎士団を始めとする反体制勢力、エリア11駐留ブリタニア軍の全面戦争のときが、刻一刻と近づいていた。

「反乱軍の租界侵入は、何があろうとも阻止しなければならん。」
 コーネリアは、この怒れる軍勢を水際で止めるため、租界外縁部に軍を配備した。
「コーネリア様。私は………」
 総督室を訪れたジノに、コーネリアは微笑し頭を振る。
 烈女と呼ばれるコーネリアは、相変わらず凛々しくも美しかったが、その美貌にかげりがあった。
 フジの行政特区からアヴァロンで帰還した妹と弟にかける言葉が見つけられなかった。

「お姉様………」
 ナイトオブラウンズに片腕を支えられタラップを降りるユーフェミアの潤んだ瞳に、口にしかけた妹の名すら出せず、憤怒の表情で睨みつける。
 それに耐えきれず、ユーフェミアは視線を外した。
 その脇を、スザクを載せた医療カプセルが通る。
「スザク………」
 声をかけるコーネリアのために、蓋が開けられた。
「姉上。ご心配をおかけし…申し訳ありません。」
「何を言う。お前はよくやった。」
「今回の事……ユーフェミアの咎ではありません。彼女をゼロと2人きりにした僕の罪です。」
「スザク?」
「何を言い出すの。スザク!」
 姉妹は揃って、スザクの言葉の真意を問い質す。
 不安げに自分を見下ろす妹に小さく笑い、だが、真剣に話しかける。
「ユフィ……やはり彼は破壊者で、ブリタニアへの憎悪だけで生きているんだ。
だから……こちらが手を差し伸べても手を取り合う事はないんだ。」
「スザクッそんな事は………!」
 反論しかけたユーフェミアを、ジノが強引に連れ去る。
「スザク……一体どういう事だ。」
 困惑を隠す事無く問いかけてくる姉に、スザクは1度深呼吸すると、真剣な顔を向ける。
「───これは、あくまで僕の推測です。でも…恐らく間違いないと思います。」
 スザクは、兄シュナイゼルが推理し自分が確信した、ゼロの特殊能力の事を話しだした。

「ナイトオブスリー。これは、あくまでも植民エリアでの内乱だ。
たまたま居合わせた皇帝の騎士に出陣を依頼するつもりはない。 
エリアの事はエリア内で解決するのが道理だろう。」
「仰る通りです。ですが………」
「もしも手に負えないと判断した時には、恥も外聞も無く貴公の手も借りるさ。それまでは、陛下の命を忠実に守ってくれれば良い。
私は、絶対に負けられないからな。」
 そう言って、どこか自嘲めいた笑みを浮かべると、コーネリアは話を変えた。
「なあ。ジノはスザクの話を信じるか?」
「ゼロの特殊能力の事ですか。」
「あまりに荒唐無稽な話だが……私は信じる。いや、そうであると思いたい。
あの……ブリタニアと日本の融和を必死に訴えていたあの子が、その裏で領民の虐殺を考えていたとは到底信じられないのだ。」
「それは私も同じです。私の知るユーフェミア様は、誰にでも平等で公正な心優しい方です。
そのお方が、本心からあのような命令を出されたとは信じていません。」
 キッパリというジノに、普段の彼女からは想像もつかないほど儚く笑った。
「ありがとう……あの子の事を信じてくれるものが少しでもいてくれれば、あの子の支えになろう。
 私は、是が非でもゼロを捕らえあの子に施した呪いを解かせなければならない。私が、あの子にしてやれる事はこれしかないからな。」
「はい。私の力が必要なときは、いつなりともお呼び下さい。
私は、皇帝陛下の騎士です。ひいては、帝国の利益を守るための剣でもあるのです。戦況によっては、私の一存で参戦する事もあるのはご理解下さい。」
「ああ。そのときはよろしく頼む。」
 その時皇女が見せた笑顔は、ジノがよく知る戦女神のものだった。

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