政庁内皇帝謁見の間。皇帝との謁見をすませたシュナイゼルの元にユーフェミアとスザクがやって来る。
「お兄様。お父様は何と……」
「陛下の承諾は頂いた。関係各省に皇帝の御名で通達されると仰って下さったよ。」
「それじゃあ。」
ユーフェミアが喜びの声を上げる。
「行政特区…実現させなさい。」
「はいっ。」
嬉しそうに先にたって歩き始めるユーフェミアだが、スザクを振り向いた。
スザクは、シュナイゼルと肩を並べてゆっくりと歩いている。
「スザク。先に行きますね。」
「うん。姉上に申し上げて、準備に取りかかろう。」
「ええ。」
小走りに去って行く妹を見送り、シュナイゼルは隣の弟に話しかける。
「さて……私がここですべき事は終わったようだね。
これから大変だろうが、頑張りなさい。陛下からは、場合によっては皇帝の名を使っても良いと許可を頂いている。安心して進められるよ。」
「はい。ありがとうございます。」
礼を言うものの、すっきりした顔をしていないスザクに、首を傾げる。
「陛下が、そこまで積極的になって頂けるとは思わなかったので……」
「そうだね。私も少々意外だったよ。
ユフィのサポートをしっかりして上げなさい。コウも、ダールトンを補佐につけると言っている。」
「わかりました。」
シュナイゼルの言葉から、コーネリアもテロリスト対策として、この特区を位置づけている事を察し、スザクは小さく笑った。
「ゼロの出方によっては、ユーフェミアの手に余るかもしれない。
そのときは国策である事を強調し、私の名を使うがいい。
ユフィに替わってお前がまとめるんだ。」
「はい。」
スザクは大きく頷くと、少し言い辛そうに問いかける。
「それで……あの…僕のことは……」
シュナイゼルは、スザクを見て肩をすくめる。
「皇籍返上の事かい……?Oそんな事は私も認めないだろうと笑われていたよ。」
「……そうですか……」
解りきっていた事だが、溜息を漏らす。
「───いつから考えていたんだい……?」
「え……」
「私の騎士になるなんて事だよ。」
キュウシュウから帰還した翌日、自分の元に現れ突然皇籍を返上し、騎士になりたいと言い出したスザクに、シュナイゼルは唖然とした。
また、ゼロに何か吹き込まれたのかと思ったのだが、ずいぶん前から考えていた事だと言う。
スザクを自分の騎士にするなど考えた事もないシュナイゼルは混乱し、そんな事は認めないの一点張りで部屋から追い出したのだった。
穏やかな表情で問いかけてくるシュナイゼルに、スザクは真剣な顔で応える。
「……士官学校に入学する頃です。何の…誰のためにブリタニアの軍人になるのか……自問して出した答えが、“兄上のお役に立つため”でした。」
「そうか……だから、騎士を持つ事を避け続け、ジノの騎士任命もなかなかしようとしなかったのか……」
「勝手をしてすみません。ジノには、本当に申し訳ない事をしたと思っています。」
「前にも言ったが、私はお前を騎士にするために引き取ったのではないよ。
お前には、誰のためではなく自分の人生を歩んで欲しいと思っている。」
「ありがとうございます。でも……僕は、ただ自分のためだけに生きるのではなく、誰かの役に立ちたい。
兄上の騎士が無理なら、今は、この地の人々のために生きます。」
弟の言葉に黙って頷く。
「兄さん。以前、僕に言って下さいましたね……シャルル・ジ・ブリタニアの時代を終わらせると……」
「スザク……」
人払いしてあるとはいえ、皇帝謁見の間でそんな不穏な事を口にする弟に苦笑する。
「今、ここで約束して下さいませんか。必ず、実現させると……」
「ここでかい?」
「はい。」
真剣なスザクのまなざしを見つめる。その翡翠はすんだ色で、強く輝いていた。
「では、ここで誓おう。
私、シュナイゼル・エル・ブリタニアは、今のブリタニアを壊し新しい世を創ると。」
宣誓のように右手を上げて言うシュナイゼルの前に、スザクは跪く。
「───イエス ユア マジェスティ。
貴方の誓いを実現させるために、一緒に闘う事を誓います。」
「スザク……」
「騎士にはなれなくとも、僕は貴方の剣となります。そうさせて下さい。」
そう微笑む弟を、シュナイゼルは少し寂しげな笑みを浮かべて見つめた。
a captive of prince 第13章:学園祭宣言 - 6/6
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