a captive of prnce 第12章:キュウシュウ戦役 - 8/9

「第三戦車隊壊滅。」
「敵の航空艦と戦闘状態にあった攻撃機部隊も戦線崩壊の模様!」
「敵、奇想兵器、最終防衛戦を突破しつつこちらに急接近しています!」
 通信から次々と報告される凶報に、澤崎は怒りと悔しさに歯噛みした。
 目の前の通信パネルに手を伸ばし、オープンチャンネルを開く。
 通信先は今こちらへ近づいてくる2体のナイトメア……ゼロとスザクだ。
『ゼロっ!貴様と私は、同じ日本を憂える同士ではないのか!』
 ガウエンのコクピットに響く怒声に、ルルーシュはフンと鼻で笑う。
「お前ごときに同士呼ばわりされるのは実に不愉快だが、まあ1つだけ教えておいてやる。
我ら黒の騎士団は、不当な暴力を振るう者、全ての敵だ。」
『不当だと!?私は日本のために……』
 澤崎がゼロに自分の主張を訴えようとするのを、スザクが遮る。
「澤崎さん。日本のためと口にするのなら、どうして中華連邦に逃げたのです。残るべきだった。貴方の立場なら……」
『黙れっ!首相の息子でありながら、この日本を蹂躙する側に寝返った者の言葉など……!』
「貴様がそうさせたのだろうっ!」
 スザクの怒声が響き渡る。
 澤崎はモニターの前で顔を引きつらせた。
『わ…私が……だと。』
「澤崎敦。貴様は、戦争犯罪人としてブリタニア統治軍の追求を受けていた。
中華と事前に交渉はしていても、向こうには自力で逃れなくてはならない……当局の目を自分から逸らすために、お前は桐原泰三と藤堂中佐が画策していた事を利用したんだ。
“枢木スザク”をブリタニアから隠すという計画を……!
輸送計画をブリタニアにリークしたのは、貴様だろう!」
 睨みつけてくるスザクに、澤崎は薄く笑う。
『ああ、そうだ。ただ御輿に載せるだけの価値しか無い子供を、どうして大事に護ってやる必要がある。
日本を再建する事ができるのは、首相の息子ではなくこの私だ。 
キョウトは、私を枢木ゲンブに劣ると嘲った。』
 澤崎が忌々しげにスザクを見る。
『ブリタニアに対抗しうる力を持つ中華に助力を求めるためには、是が非でも生き延びねばならない。お飾りの子供なんぞより、私の命の方が遥かに価値があるに決まっているだろう。
まさか。その子供がブリタニアの皇子として戻ってくるとは思わなかったがな。』
 澤崎は、侮蔑を込めてスザクを笑った。
「───やはりそうだったか……確証はなかったが、自白してくれるとは………」
 くすくすと笑いながらスザクが言う。
彼は、澤崎を見据えた。その瞳は冴え冴えとし、怜悧な光を放っている。
「今までは枢木スザクとして、父を支えてくれていた人物と敬意を払って来たが、今の告白でその必要も無い事がはっきりした。
澤崎敦。貴様を国家反逆の咎で逮捕する。」
『国家反逆……?』
「ここに戻って来た以上、貴様はナンバーズとして扱われる。
ブリタニアに対する反逆だ!」

「最低だな。」
 ゼロがぼそりと言う。
「お前は自分の顔をまず鏡で見直すべきだったな。澤崎敦。
戦時中国家を動かす顕職に就いていながら、戦後はその責任を取る事も無く、ブリタニアからの処断を恐れて中華連邦に亡命、さらに戦後7年間、ブリタニアの支配に苦しむ国民を放っておき1人ぬくぬくと中華連邦で生き延びた。
そんなお前が日本を救う?しかも、ブリタニアに代わって日本の実行支配を企む中華連邦の軍事力を使って?
そのお前が、ブリタニアに売り渡したスザクを、よくも糾弾できたものだ。」
 ゼロが嘲笑しスザクが詰る。
『貴様が、日本をどう救うと言うんだ。このままでは、中華とブリタニアの戦争に日本がまた巻き込まれるのは火を見るより明らかだろう。』
「全く笑わせてくれる。そんな人間を、民衆が心から支持などするものか。
 政治家としても戦略家としても三流なんだよ。お前は。」
 嘲笑いながら、ゼロはガウエンのハドロン砲で司令部の隔壁を破壊しながら止めを言い放った。
「日本は自らの手で独立を成し遂げる。
自分1人では何もできず、救世主を名乗りたいだけのお前など必要ない。
失せろ、旧時代の亡霊。」
『こっ……この裏切り者どもがっ!』
 澤崎の絶叫が、ガウエン・ランスロット双方のコクピットに響いた、
『違うっ!』
「褒め言葉ととらせてもらおう。」 
 それぞれの答えが反響した。

 部下を見捨て密かに脱出しようとしていた曹と澤崎の行く手を、ランスロットとガウエンが塞ぐ。
 驚愕の表情で腰を抜かす澤崎を、侮蔑とあざけりの表情でルルーシュは見下ろしていた。

───生憎と、こいつと組んで今まで不可能だった事なんか無いんだよ。───

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