Inpatient - 3/4

 ナナリーを見送るため病室のドアを開けたルルーシュは、ドアの横に佇む人物を見つけ声をかけた。
「カレン。」
突然かけられた声に驚いて右往左往する彼女の手には、花束が握られている。
「カレンさん。カレンさんもお見舞いですか?」
「ナナリーも来てたんだ……スザク…どう……?」
「入って来ればいい。生憎スザクは眠っているが……」
「そ…そう?じゃあ…ちょっとだけ……」
眠っているという言葉に明らかな安堵の色を見せ、カレンは病室に入った。
スザクの寝顔を見守っていたが、不意に涙をこぼし、部屋を出て行ってしまう。
「おいっ!?」
慌ててルルーシュが後を追うと、先ほどの場所で泣いている彼女を見た。
「ごめん……私……。スザクの気持ち考えると………
きっと、凄く怖くて…悔しくて…情けなかったと思うの……
ずっと第一線で闘ってきた人だもの……それが、同じ男に組みしかれて……力づくでいいようにされて……どんなに辛かったろうって……
私がそんな目にあったら……もう怖くて怖くて……誰にも会いたくないと思う………」
「カレン……」
「カレンさん。」
「ありがとう。スザクのために泣いてくれて……あいつ男だからさ……泣けないんだ。俺にも、何の泣き言言わないでずっと笑っているんだ……」
「ルルーシュ……」
「ナナリーを送ってくるから、スザクの事看ていてやってくれないか。」
「……でも……」
「女友達のお前になら、話せる事もあるかもしれない。頼む……」
「……うん。わかった。」
ルルーシュに促されて病室に入るカレンを見守り、ナナリーの車いすを押した。
「お兄様。よろしいのですか。カレンさんにお任せして……」
「ああ。これだって“スザクを守る”事には変わらないだろう。」
「───そうですわね。」
数十分後。ルルーシュが戻ると、病室からカレンとスザクのすすり泣きが漏れてきた。
その声を聞きながら、ルルーシュは小さく息を吐いた。

「カレン。ありがとう、助かったよ。あいつが無理している事は解っていたが、どうやって楽にしてやっていいのか解らなくてさ……」
喫茶ルームでカレンとコーヒーを飲みながら、ルルーシュは苦笑する。
「ううん。私が、あいつの役に立てたんなら嬉しい……」
スザクは、カレンに胸の内を明かして泣きつかれるまで泣いて、また眠ってしまった。
そこまでつき合ってくれたカレンに、何度も礼を告げる。
「男は男同士…と言う訳にもいかないという事を、初めて知ったよ。」
ルルーシュの言葉に、カレンはなんと言っていいのか解らず、曖昧な笑みを浮かべる。
「スザクとは……この間遊びに行ったとき、恋する乙女の友情を深めたから……」
「恋する乙女?」
キョトンとするルルーシュに苦笑する。
「そうよ。アーニャと3人で、コイバナに花を咲かせたの。
もっとも、殆どスザクとルルーシュの事ばかり聞いたんだけど。」
そこで、カレンはクスリと笑った。
「あいつ根がマジメだから、こっちが聞く事なんでも一生懸命答えてくれちゃうのよ。
スザクがどれだけルルーシュの事が好きか……こっちがバカバカしくなるくらい教えてくれた。
だから……スザクの気持ちを無視して自分の欲望だけであんな事した奴が許せなかった。
あーっ。今思いだしても腹が立つ!後でもう2、3発殴って来ようかしら。」
「おい。それは拙いだろう。」
「ホントは、あんただってそうしたいくせに。」
「あれの事はナナリーに任せたからな。きっといい様にしてくれるさ。」
「……あんた……凄く悪い顔して笑ってるわよ。」
「そうか?」
とぼけていうルルーシュに、2人は声を上げて笑った。
「スザクの事……これからはあんたがしっかり支えてあげてね。」
「ああ。しかし……いろいろなところから同じことを言われるな。
プレッシャーで胃を患いそうだ。」
苦笑するルルーシュに、カレンが大真面目に言う。
「それくらいの事、スザクはとっくにしているわよ。」

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