Inpatient - 2/4

ルルーシュの手を握ったまま寝息を立てるスザクを見つめる。
さっき、指先に唇が触れただけで震えた……
やはり、性的な接触に恐怖心がある。
今も、うっすらと残る他の男がつけた刻印……本当はその上から自分の印を付けて消してやりたい。自分のものだと知らせたい。
所有欲が頭をもたげてくる。それがスザクの傷を抉る事になると分かっていても、けなげな笑顔を見る度その衝動に駆られる。
添い寝を勧めたラクシャータも、それ以上の接触は、本人が求めるまで控えるようにと忠告してきた。
プライベートな事に口を出す彼女に、ルルーシュはムッとしたものだ。
「ここであんたが我慢できるかできないかで、2人の関係も変わってくると覚悟した方がいいわよ。彼の事が大事ならね。
あんたの方もカウンセリングが必要なら、紹介するけど……?」
ラクシャータの親身な対応に、ルルーシュは頭を振った。
「大丈夫だ。今度はちゃんと守るさ……スザクの事。」
その答えに満足そうに笑う彼女を思いだし、己を律する。
「今はまだこのままでいい……お前が笑っていれるなら……」
安らかな寝顔に、そっと呟いた。

「お兄様。スザクさん、お加減……」
いかがですかと言いかけて、ナナリーは言葉を止めた。
スザクの見舞いに訪れたのだが、兄の手を握って眠るスザクに笑みが漏れる。
「お休みになっているのですね。」
「さっき、胃の内視鏡検査をしたから、疲れたんだろう。」
「……昔、私もこうしてお兄様に手を握ってもらって眠りましたね。」
「ああ。」
「こうしてもらうととても安心できて、落ち着いて眠れました。
スザクさんも、きっと同じなんですわ。
お兄様……お目覚めになったばかりの頃、お兄様にぶつけた私の怒りの意味……お解りになりますわね。」
「ああ。ロイドに聞いた。スザクに謝ったんだが……こいつは、俺に心配かけたといって謝るんだ。」
眠るスザクの髪を指で梳いてやる。すると、スザクはむずかゆそうに身じろいで、甘く囁いた。
「ルルーシュ………」
目が覚めたのかと2人で様子を伺うが、その口元から寝息が漏れ、兄妹は顔を見合わせて微笑した。
「大事に…大切に守ってあげて下さい。スザクさんが貴方の願いを、それこそ身を呈して守ってきたように……」
「ああ。そのつもりだ。それでな…ナナリー。前に話をしていた離宮の事なんだが……」
「手続きのための書類ならここに……」
そう言って、膝の上の書類を掲げてにっこり微笑む。
「手回しがいいな。」
ルルーシュの言葉にその笑顔はますます深くなる。
「お兄様の妹ですもの。リフォームの手配も致しますわよ。」
「助かる。」
「それから、あのライールの事ですが……こちらでのメディカルチェックで健康状態に問題は認められなかったので、ブリタニアに連れて行きます。
私の方でしっかりと躾けますから……もう、スザクさんに不埒な真似はさせませんわ。」
目を細めるナナリーに、ルルーシュも同じ顔をする。
「頼もしいな。それじゃあ。奴の事はお前に任せるよ。
せいぜい己の罪を悔い改めさせてやってくれ。」
「はい。
私なら、もう二度と日の目を見ないようにしますのに……スザクさんは……」
呆れたように溜息を漏らす妹に、苦笑する。
「こういう奴なんだから、仕方ないさ。」

2

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です