真理の扉からアルの身体を持ってきちゃった 7 - 6/6

北との国境にそびえ立つブリッグズ山。
自然だけでなく常に他国の脅威を感じる厳しいこの山すそにも、生活する人々はいる。
彼らが切り開いた土地は北軍とブリッグズ砦によって安全が保障されており、小さいながらも町として快適に整備されている。
その町はずれにある個人医院のドアが、診療時間もとっくに過ぎた夜半過ぎ、突然の来訪者によって激しく叩かれた。
「おいっ!!開けてくれっ!」
「急患なんだっ!!」
2人の男が大声で呼びかけている。見なりから軍人であると分かる彼らのうち1人の背には、何かの紋章が大きく描かれた赤い布地が見える。
よく見れば、それがコートでその下には金髪の小柄な男性がいることが分かっただろう。
だが、それは夜の闇と、彼を背負った人物の真後ろに立つ人物によって通りからうまく隠されていた。
真っ暗だった玄関に明かりが灯される。
「どうしたね。」
初老の男性が、穏やかに見える顔で応対に出る。彼の後ろには同じ年頃の女性もいた。
どうやら、夫婦で診療しているらしい。
「夜中に申し訳ない。
こいつを診てやってくれないか。重傷なんだ。」
そう言って、背中の人物を見せる。
老医師の眉が、ピクリと動いた。
患者を運んできた彼らをちらりと見ると、中に入るよう促す。
「すまねぇ。」
2人の軍人は口々に礼言うと、バタバタと中に駆け込み、すぐにドアを閉めた。
その様子に老医師は肩をすくめる。
「………訳アリか……
まあ。珍しくもないがな。」
彼がそう言いながら診察室へ自ら案内すると、連れ合いが玄関ドアの前のカーテンを閉め、明かりが外に漏れぬようにする。
その阿吽の呼吸に、軍人らが顔を見合わせた。
「野生の感に従って正解だったな。」
頷き合う2人に、老女が声をかける。
「任せておきな。腕とサービスの良さは保証するよ。」
ニタリと笑う彼女に、大柄な軍人たちは肩をすくめ苦笑いするのだった。
 

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