月: 2022年4月

映画「鋼の錬金術師完結編」気になるポイント3つ

5年前に映画化され、ファンの間では酷評の実写映画「鋼の錬金術師」の続編「鋼の錬金術師完結編」が5月と6月に公開されます。

はっきり言って前作は、興行的にギリギリヒット作となったものの、「やらない方が良かった」失敗作。

にもかかわらず続編が制作されたのは、ひとえに、原作者である荒川先生が気に入ってくれたのが大きいですね。

前作の撮影現場は、かなり雰囲気が良かったようで、当時から続編を作りたいとキャストスタッフ共に切望していたようです。

そして、漫画連載20周年の記念事業として、続編の制作が決定。

復讐者スカー/最後の錬成の2本連続公開という1大プロジェクトに。

原作の最終話まで描き切ったというだけあって、お金のかけ方が前回と比べ物にならないのは、素人目にもわかります。

公式サイトで公開されている予告動画を見ても、今回は違うぞという雰囲気が。

まず、今回はメインキャラクターがすべてキャスティングされています。

そして、再現率も高い!

はっきり言って、前回はパスしたけど今回は劇場で観ようと思っています。

とはいえ、前作は原作のエピソードを取り入れているものの、かなりオリジナルな展開。

それの続編ですので、原作準拠にできない部分も出てくるのは必至。

という事で、新作映画で気になるポイントを紹介していきます。

鋼の錬金術師完結編の気になるポイント

完結編で気になるポイントは次の3つ。

  1. 前作で端折ったた部分はどこまで再現されるのか
  2. 前作で死亡したキャラが絡むシーンはどうなるのか
  3. 実写で登場しないキャラは誰か

2017年に公開された「鋼の錬金術師」は、コミックスの4巻くらいまでが描かれていました。

しかも、ストーリー展開の都合から、スカーやアームストロング少佐など、早い段階から登場するキャラがいないという事態が。

完結編では、この2人とも出てくるわけですが、端折った分のつじつま合わせがどうなるのか気になります。

また、ラストとグラトニーがスカーを襲うシーンも、ないかもしれませんね。

そして、原作では最後まで生きていたドクター・マルコーですが、ラストによって殺害されてしまっています。

マルコーさんは、要所要所で意外な活躍をみせてくれていたキャラ。

過去を償おうとする姿が、恨みや憎しみに蝕まれていたスカーを、良い方向へ導いた人物でもあります。

彼抜きで、緩やかに変化していくスカーの心境をどう表現するのか興味ありますね。

そして、前作の後半でアルも手合わせ錬成ができるようになるのですが、そのきっかけを作ったのはショウ・タッカー。

原作では、マーテルの血を浴びたことで、真理の扉を開けた記憶を取り戻し、できるようになります。

という事は、デビルネストのくだりはカットされる可能性が。

この他にも気になるところがあるので、紹介しますね。

スカーはどうやって陰謀を知るのか

アメストリスと国家錬金術師への復讐者として登場するスカー。

原作では、イシュバール殲滅戦の陰で行われていた軍の実験や、ホムンクルス一派の計画をマルコーによって知らされます。

この大事なシーン。

実写映画ではどうなるのでしょう。

キメラは登場するのか

原作漫画では、軍によって作られたキメラが8体登場します。

そのうち4人は、紅蓮の錬金術師キンブリーの配下として登場しますが、エドとアルの仲間になりホムンクルスたちと戦います。

ですが、予告映像では、影も形もないんですよね。

軍の非道な実験の生き証人たち。

彼らの存在は大きな意味があるので、登場しないのは寂しい気がします。

クセルクセス遺跡に行くきっかけは?

予告編の冒頭、エドがクセルクセス遺跡を歩くシーンがあります。

原作では、ロス少尉が無事であることを知らせるために、ブレダ少尉に連れて行かれるわけですが…

エドは、どういう経緯でクセルクセス遺跡に行くんでしょうね。

まとめ

前作でオリジナルな展開にしたため、「原作とは違うだろうな」と思うところをあげました。

結構ありますよね。

細かいところをあげていけば、「ここが違う」「あそこも違う」が出てくるわけですが、原作の世界観を崩したくないという監督の想いは、予告映像でビンビン伝わってきます。

4年の歳月を経て、山田さんもエドワード・エルリックという役を自分のものにできたようで、かなり良い感じですよ。

撮影現場では、筋トレがブームだったようで、アクションシーンも楽しみです。

前回は観なかったなーという方も、今回は観た方がいいと思いますよ。

鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成公式サイト

 

真理の扉からアルの身体を持ってきちゃった 12-1

 

「とっ止まれっ!」
銃やライフルを手に停止を叫ぶ兵士にかまわず、アクセルを踏み込む。
「止まってなんて、いられないんですよっ。」
右に左に大きく蛇行しながら、軍用車を操るヒュリーは、口の端を吊り上げながら声を漏らした。
普段なら温和が服を着たような彼だが、南方で死線を潜り抜けたことで、見た目にそぐわない豪胆さを発揮している。
フライパンの中の豆のように、左右に振り回され、シートにしがみつきながらも、マスタングは仲間の頼もしさに目を細めるのだった。

そんな最中、大きな破裂音が轟く。
「わわわっ!!」
制御を失いクルクルと回転するハンドルに驚くヒュリーの脇から、ブレダの腕と足が伸びる。
キキキッーと大音響を上げながら車が回転した。
「タイヤを撃ち抜かれたかっ。」
後部座席の軍人2名は、彼らの間にいる婦人と少年を庇うようにしながら、身を縮めた。

左側の後輪が破裂した車は、コマのように回りながらも、周囲に被害を与えることなく急停車した。
「奴らが出てくるぞっ。」
指揮官が叫ぶと同時に、正面から爆炎が襲い掛かってくる。
悲鳴を上げながら、兵士らは炎から身を護った。
視線の先には、発火布の手袋の先から火花を散らせる「焔の錬金術師」とその配下の姿があった。
彼らは、人質とした大総統夫人と少年を取り囲むようにして、周囲を威嚇している。
「鷹の目」の異名を持つ女性の鋭い眼光に、指揮官は背筋を震わせた。
その女の口元が笑みを作り、銃口を己に向ける。
恐怖に身が縮むを自覚した直後、眼前の「敵」は脱兎の如くその場を掛け去っていく。
思わず安堵が漏れた。
「たっ隊長。奴らが!」
部下の声にはっと我に返ると、彼奴等の姿は豆粒のように小さくなっていた。
「くっそっ!
追えっ逃がすな!!」
部隊を指揮するセディは、己の不甲斐なさに歯噛みする。
わずか4名…取るに足らない人数が与えた大きな威圧と恐怖……
「一体何なんだ。あの連中……っ。」
そう容易くは捕らえられない……そんな予感を抱えながら、マスタングの後を追うのだった。

マスタングらは、ヒュリーの先導で、中央セントラル西区にある工場街へと逃げこんだ。
ここには、軍事産業に関わる大小さまざまな工場がある。
が、中には稼働していない、廃工場も多数存在していた。
彼らが向かっているのは、そういった工場の1つだ。
「早くっ、こっちです。」
迷路のように入り組んだ工場の外階段を、ホークアイとルースに支えられながら、大総統夫人は、若い頃にもこんなに必死に走ったことはないと、もたつく足で駆け上がる。
ただ無我夢中だった。
なぜ自分が銃を持った兵士に追われなくてはならないのか、そんな理不尽に怒りを感じる暇すらない。
「おばさん。慌てなくてもいいから。
心配しないで、銃弾が当たる事なんてないからね。」
傍らの少年が、笑顔で励ましてくる。
その笑みに、頷き返す彼女の斜め後方で、流れ弾が何かに弾き飛ばされたのだが、夫人が気づくことはなかった。
工場の1室に駆け込み、一行は走るのを止めた。
どうやら、ここが目的地らしい。
がっくりと床にへたり込んだ時だった。
壊れかけた窓ガラスを破って、数人の軍人が飛び込んできた。
彼らは、彼女とマスタングらを取り囲むように素早く動くと、情け容赦なく銃口を向けてくる。
正面からも、指揮官と共に兵士がなだれ込んできた。
完全に包囲され、「焔の錬金術師」は観念したかのように両手を上げる。
「この狭い室内なら、爆炎は出せないでしょう。」
「…撃つかね。」
マスタングが、静かに尋ねる。
夫人は、これで助かると期待しながら、指揮官の次の言葉を待った。
が、彼の人物から発せられた言葉に、奈落に突き落とされることになる。
「マスタング大佐と、少年以外は撃って良し!」
耳を疑う命令に目を剥く。
兵士らは、戸惑うことなく引き金を引いた。
響き渡るいくつもの銃声に、思わず目を瞑る。
が、何の痛みもない。
再び開いた眼に映ったものは、先ほど自分に銃を向けた兵士が腕や足から血を流し、痛みにのたうち回る様であった。
一瞬にして、部下が戦闘不能となった指揮官が、気配を察して天井を振り仰ぐ。
彼が見たものは、天井付近でむき出しになっている鉄骨の上から、自分達を狙ういくつもの銃口だった。
気を取られていた彼の後頭部に、ゴリッと冷たく固いものが押し当てられる。
「大佐と少年以外てぇと、夫人も撃っていいってことか?」
彼の頭に銃を押し付けている男が尋ねかける。
「聞きたかった言葉ではあるが、聞きたくなかったな。」
マスタングが、低くそう語るのを、夫人は呆然として聞いた。
「私は……もしくは、主人は…国に捨てられたのですか?
それとも、主人が私を捨てたのですか?」
すがるような眼でマスタングに問いかける。
「そっそんなことあるもんかっ!」
マスタングが口を開くよりも先に、夫人の傍らにいる、ルースが叫んだ。
「おじさんが、おばさんの事を見捨てるなんてっ。
そんな事、絶対にないよっ!!」
「ルース君……」
必死の形相で訴えるその少年を、夫人は表情の抜け落ちた顔で見る。
そんな彼女に、ルースは眉根を寄せた。
その哀れな姿に、かける言葉がみつからない。
「わかりません。」
座り込んだまま微動だにせぬ夫人にそう答え、マスタングは膝をついて彼女と視線を合わせる。
「わかりませんが、あなたの命は我々が必ずお守りします。
すべて事が終わった時に、我々が間違っていなかったことを証明していただくために。」
そう言い残して、彼は、新たに加わった仲間と部下と共に、その場を立ち去っていく。
「ルース君。夫人のこと、頼めるかしら。」
マスタングを目で追いながら、ホークアイが尋ねる。
ルースは大きく頷いた。
「お願いね。」
そう言って笑いかけると、彼女もまたその場を去るのだった。
あとには、痛みに転げまわる無様な軍人と、打ちひしがれた大総統夫人が残された。
「おばさん。大丈夫?」
心配げにのぞき込んでくる黄金色の瞳に映る己の姿に、夫人は眉をひそめた。
(なんて酷い顔……っ。)
大総統夫人ともあろうものが、子供に心配をかけるなんて。
彼女は、両手で軽く頬を叩くと、驚いて目を瞬かせるルースに微笑んでみせた。
「ええ……心配かけてごめんなさいね。」
そういって、隣に跪いている少年の手に自分のものを重ねた。
「さっきは、ありがとう……あの人が私を見捨てるはずがないって言ってくれて……」
その言葉に、ルースは首を振る。
「ううん。だって、本当にそう思うから……・」
人造人間ホムンクルスである事を誇っている大総統だ。
お父様の計画のために妻の命が必要であるならば、喜んで差し出すだろう……だが、あの男なら、自らの手で彼女を殺すはずだ。
こんな風に見捨てたりしない。
ルースは、そう確信していた。
彼女が思っていることとは、少しずれた解釈であるのだが…
しかしその言葉が、今は、夫人にとっては大きな支えとなっていた。
「私たちが生き延びるためには、大佐と行動を共にするしかないのよね。
あの人とセリムが無事か、確認しなくては……!」
強い意志を感じるその言葉に、ルースは大きく頷き、立ち上がる。
「行こう、おばさん。」
差し出される手を握り、大総統夫人はゆっくり立ち上がると、横たわる軍人たちに一瞥くれ、その場を後にするのだった。