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鋼の錬金術師 完結編「復讐者スカー」の感想

もうすぐ「最後の錬成」も公開されるので、忘れないうちに感想を書いておきます。

2017年の実写映画の続編というスタンスですが、ぶっちゃけこの完結編だけで十分楽しめます。

この「復讐者スカー」では、スカー初登場から、リンとの共同作戦でグラトニーを捕まえたはいいものの、グラトニーが暴走してエド・リン・エンヴィがグラトニーに飲み込まれたところまで描かれていました。

あらすじを紹介しますね。(ネタバレでしかない)

前半のあらすじと感想

冒頭はセントラルに向かう列車の中。

車内で倒れているリンをエドが踏んづけそうに…

行き倒れというパターンは同じでも、南部から中央へ向かう列車の中とは…

リンがエドのアップルパイを全て平らげ(ウインリィの手作り?よもや、イズミ師匠?)たところへ、列車ジャックのテロリスト登場。

リンにちょっかい出そうとしたところを、フー爺さんとランファンにやっつけられます。

テロリストの目的は、この列車に乗ている「軍のクソ野郎」の命。

列車を暴走させる仕掛けをしたと聞いて、エドは列車の上を走って機関車へ行こうとしますが、風にあおられ…

落ちそうになった彼を助けたのは、前作でマスタングに倒されたと思っていたエンヴィー。

エンヴィーが何度殺しても生き返る人造人間ホムンクルスと知ったリンたちは、彼にターゲットロックオン。

主人公そっちのけで繰り広げられる捕り物劇。

あっけにとられるエドとアルでしたが、中央セントラル駅はもう目の前!

エドは、錬金術でレールの先端を駅の天井へ向けることで、列車が駅に衝突するのを防いだのでした、

なんとか事なきを得たところへ、マスタング大佐登場。

軍に連行されるところを逃げ出したテロリストに向かって、炎の錬金術発動。

前作と違って、指先から火炎放射じゃなく、ちゃんと錬成光と火花による爆炎。ヽ(^o^)丿

そして、テロリストのターゲットである、列車に乗っている「軍のクソ野郎」とは、キング・ブラッドレイでした。

ロングコートを着て、列車から出てくる姿のカッコいいこと!

さすが舘ひろし。見惚れてしまいます。

そして、エドとアルは、大佐からスカーのことを聞かされます。

2人の護衛は、ファルマン准尉とブレダ少尉。

そうなんです。今回マスタング組は全員登場しているんです。(ホークアイさん以外は、ほとんどモブ扱いですが)

2人を撒いたところで、今度は、道端で行き倒れているメイを発見。

リンのこともあり、関わるな・拾うなというエド。

結果、食べ物を恵むことに。(ここら辺のくだりはラッシュバレーでのリンのパターン)

メイは、「鋼の錬金術師」に恋焦がれる乙女という設定ではなく、単純に彼女を助けたアルに感謝と好意を寄せ、エドを人でなしのチビと罵るのでした。

「チビ」と呼ばれてブチ切れるパターン、ここで再現!

エドとメイの追いかけっこスタート。

わめきながら走る山田涼介。

片言で罵詈雑言ばりぞうごんをぶつけるメイが可愛い。

メイが助けを求めたのは、なんとスカー。

エドは、そこでいったん引きます。

礼を言って立ち去るメイ。(結果食い逃げ)

そこへ、憲兵がエドの名を呼んでやってきたところから、エド・アルとスカーの戦いが始まります。

戦闘シーンは、かなり忠実に原作を再現していました。

「シン・ウルトラマン」のメフィラス役で話題の山本耕史さん演じる、アームストロング少佐の華麗な錬金術も再現。

ホークアイ中尉の「雨の日は無能なんですから」のシーンもありましたよ。

しかし、ご本人はかなりお気に入りのようでしたが、ディーン・フジオカでは、間の抜けた顔をしてもカッコよすぎて、大佐の可愛らしさは再現できず。

壊れた機械鎧を修理するため、エドは単身リゼンブールに帰るのでした。

アームストロング少佐、アルを担いで同行するんじゃないんだ。

スカー逃亡中だけど、エドの護衛なし。(鎧が同行しないから目立たないと判断したか?)

アルは、ホテルでお留守番のようです。

ロックベル家に到着したエドを迎えたのは、ウインリィの悲鳴と怒号。

特急で修理依頼するエドに、彼女は、順番に並べと言います。

ウインリィの指指す先には、治療や修理、メンテンナンス待ちの患者さんがずらり。

原作にはない表現だけど、腕のいい技師なら、こういう光景はあってもおかしくないよね。

修理を終えたエドは、お母さんの墓参りへ。

そこで、ホーエンハイムと再会します。

ここのシーンも再現率高い。

FMAの1期オープニングアニメを彷彿させます。

帰り道、エドにちょっかい出すホーさんのシーンまで再現してる(笑)

翌朝、ロックベル家を去る間際、ホーエンハイムはクセルクセスのことを話題にあげて、立ち去るのでした。

それが気になったエドは、単身クセルクセス遺跡へ。

そこで、イシュバール人に取り囲まれ、例の件を聞かされるのでした。

微妙に原作と違うけど、無理のない流れで進んでいきます。

後半のあらすじと感想

ところで、スカーはといえば、逃げ込んた地下水道で、グラトニーとエンヴィーに襲撃されます。

そこへまた、リンたちが乱入して、てんやわんや。

爆発を起こして逃げますが、下水道を流れてきた彼を救ったのは、イシュバール人のスラムにたどり着いていたメイ。

意識を失なっている間に観た夢とか、師父に説教されるシーンもありましたよ。

賞金稼ぎを倒してスラムを離れますが、ヨキは登場しませんでした。

セントラルに戻ったエドは、リンの提案でホムンクルス生け捕り作戦を実行。

という事で、ウインリィがスカーに銃を向ける、あの名場面になります。

このシーンは、見ていて涙出ましたね。(荒川先生も、お気に入りのシーン)

そして、グラトニー捕獲。

マンホール蹴破って、リンが登場するシーンがめちゃくちゃカッコいい。

大佐の隠れ家で、エドはホークアイ中尉にイシュバールの話を聞きます。

キンブリーの名言シーンを期待していましたが、残念ながら、ただの爆弾狂でした。

ところで、メイの相棒シャオ・メイも、登場しているんですよ。

原作そのままの、手乗りパンダ。

アルは、メイがシャオ・メイの飼い主だと知ります。

そして、メイの後をつけ、スカーの居所を確認。

エドとアルは、メイが買い出しに出たところを見計らって、乗り込みます。

ここは、合成獣のおっさんたち抜きで、バズクールの再現でしたね。

そして、ウインリィが登場する都合上、彼女を大佐とホークアイ中尉が連れてきたという設定に。

おや、グラトニーほったらかし?

と思ったら、隠れ家からグラトニーが大佐を追って脱走したという展開に。

グラトニー乱入で、現場は大混乱。

そして、ここで大佐が負傷。(しかも、ご丁寧に、またしても腹)

けが人である大佐とウインリィを避難させようとするエドを助けたのは、スカー。(何だこの展開。スカーらしくないぞ)

暴走するグラトニーを回収するために、エンヴィー登場。

そして始まる人造人間ホムンクルスとエドたちの戦い。

場所こそ違えど、原作通りの展開で、グラトニーがうっかりリンと一緒にエドとエンヴィーを飲み込んじゃいます。

ここで、終わりかと思ったんですがね。

グラトニーの腹の中で、エドとリンが合流し、エンヴィーが本性を現そうかというところで、「最後の錬成」の予告が入ってエンドロールとなります。

続編の予告いる?テレビの特番のような安っぽさ。

しかも、ワンカットの連続で何が何だか…

復讐者スカーの感想

突っ込みどころや、いろんな意味で笑えるシーンがいっぱいあって、映画としてとても楽しめる内容でした。

原作と違うところを探しながら見れるというのは、ファンの特権。

原作は、例えチョイ役であっても何かしら役割があり、無駄な登場人物がいないという作品。

主要なキャラだけで、原作と同じ展開にどう持っていくか、監督も相当苦労されたんではないかと思います。

なので、キャラたちの奥深いところまで踏み込んだ場面を映像化できないというのは、仕方のないことですね。

前作に比べると、再現率が登場人物の見た目だけでなく世界観までと、かなり高いので、コスプレ映画と揶揄されながらも、それを極めていると思います。

なので、前作のように途中で興ざめすることなく、ハガレンの世界を楽しめました。

さて「最後の錬成」ですが、お父様との対面から始まり約束の日までと、こちらもかなり盛りだくさんな内容。

イズミさんやアームストロング少将もまだ出てきていないので、この人たちをどうやって出すのか気になります。

少なくともブリッグズ砦の映像はあったので、北には行くんだろう。

名場面だらけな原作の、どこがカットされるのか大いに気になりますが、「最後の錬成」も見に行こうと思います。

映画が観れない!

明日は、「鋼のの錬金術師 完結編・復讐者スカー』を見に行く日。

5年前に公開された前作は、どっからどう見ても大泉洋にしか見えないショウ・タッカーが、かなりぶっ飛んだ悪党として幅を利かせ、ハクロ少将が第5研究所で人形兵を動かして自爆したりと、怒涛のオリジナル展開で、ファンをドン引きさせてたけれど、今回は、それを反省して、原作に忠実なビジュアルとストーリー展開だそうだから安心ね。

あの闘いも、この闘いも生身の人間で再現したらどうなるのか、すごく楽しみだわ。

ワクワクしながら眠って、目が覚めたら上映時間の40分前⁉

どうして誰も起こしてくれなかったのよー!

え、映画館は家から近いから大丈夫でしょって…それでも、今からじゃギリギリよー!!

座席指定して予約したんだから、間に合わなかったらチケット代を損しちゃう。

大あわてで映画館着いたけど、上映5分前。

急いで発券しよなきゃ。

あれっ?チケット代1,100円?

そんなに安かったっけ?ていうか、もうお金払って…

えっ?これじゃない?

声をかけられて、そちらを見ると、シアター入り口前に何かの受付が…

チケットの交換はこちらです?

呼ばれるまま、そこで受けつけすることに。

え、引換番号じゃなく氏名を書くの?

頭上ではてなマークが飛び交っている私にかまわず、受付嬢とその隣にいるおっさんはテキパキと手続きを進めていく。

て…金額5,300円てどういうこと!?

はっ?全国どこの劇場でも使える回数券?

いやいやいや。そんなの買いに来たわけじゃないからっていうか、上映間近のシアター入り口で営業すんなっ!

やだー、変なのに引っかかっているうちに、上映時間すぎちゃったじゃない。

途中から観るのもなー。

どうしよう。キャンセルできないよなー。

え、キャンセル専用機?

返金してくれるの?

こんな親切なサービスあったんだ。

嬉々として操作ボタンをタッチ。

おおーっ。本当に現金が出てきたー。

えっあれ?

何これ。

返金口から出てきたものをよく見ると、全然見たこともない種類の紙幣と硬貨。

何じゃこりゃー!

というところで、目が覚めた。

ああ、そうだ。

昨夜興奮してなかなか眠れなかったから、家を出るギリギリまで仮眠してたんだっけ。

時計を見ると、出発時間の30分前。

ああ良かった。夢だったんだ。

ビックリしたなー。

そうよね。よく考えたら変なことだらけだったわ。

支払い済みなのにチケット代請求する発券機とか、上映前のシアター入り口の営業とか。

謎のお金が出てくる返金マシーンか…

あまりにユニークな夢だったので、文字起こししました。

楽しんでいただけたでしょうか。

え?それで、現実の映画には間に合ったのかって?

はい。余裕で間に合ってスムーズに発券できました。

映画の感想は…後ほど。

 

 

 

 

 

 

真理の扉からアルの身体を持ってきちゃった 12-1

 

「とっ止まれっ!」
銃やライフルを手に停止を叫ぶ兵士にかまわず、アクセルを踏み込む。
「止まってなんて、いられないんですよっ。」
右に左に大きく蛇行しながら、軍用車を操るヒュリーは、口の端を吊り上げながら声を漏らした。
普段なら温和が服を着たような彼だが、南方で死線を潜り抜けたことで、見た目にそぐわない豪胆さを発揮している。
フライパンの中の豆のように、左右に振り回され、シートにしがみつきながらも、マスタングは仲間の頼もしさに目を細めるのだった。

そんな最中、大きな破裂音が轟く。
「わわわっ!!」
制御を失いクルクルと回転するハンドルに驚くヒュリーの脇から、ブレダの腕と足が伸びる。
キキキッーと大音響を上げながら車が回転した。
「タイヤを撃ち抜かれたかっ。」
後部座席の軍人2名は、彼らの間にいる婦人と少年を庇うようにしながら、身を縮めた。

左側の後輪が破裂した車は、コマのように回りながらも、周囲に被害を与えることなく急停車した。
「奴らが出てくるぞっ。」
指揮官が叫ぶと同時に、正面から爆炎が襲い掛かってくる。
悲鳴を上げながら、兵士らは炎から身を護った。
視線の先には、発火布の手袋の先から火花を散らせる「焔の錬金術師」とその配下の姿があった。
彼らは、人質とした大総統夫人と少年を取り囲むようにして、周囲を威嚇している。
「鷹の目」の異名を持つ女性の鋭い眼光に、指揮官は背筋を震わせた。
その女の口元が笑みを作り、銃口を己に向ける。
恐怖に身が縮むを自覚した直後、眼前の「敵」は脱兎の如くその場を掛け去っていく。
思わず安堵が漏れた。
「たっ隊長。奴らが!」
部下の声にはっと我に返ると、彼奴等の姿は豆粒のように小さくなっていた。
「くっそっ!
追えっ逃がすな!!」
部隊を指揮するセディは、己の不甲斐なさに歯噛みする。
わずか4名…取るに足らない人数が与えた大きな威圧と恐怖……
「一体何なんだ。あの連中……っ。」
そう容易くは捕らえられない……そんな予感を抱えながら、マスタングの後を追うのだった。

マスタングらは、ヒュリーの先導で、中央セントラル西区にある工場街へと逃げこんだ。
ここには、軍事産業に関わる大小さまざまな工場がある。
が、中には稼働していない、廃工場も多数存在していた。
彼らが向かっているのは、そういった工場の1つだ。
「早くっ、こっちです。」
迷路のように入り組んだ工場の外階段を、ホークアイとルースに支えられながら、大総統夫人は、若い頃にもこんなに必死に走ったことはないと、もたつく足で駆け上がる。
ただ無我夢中だった。
なぜ自分が銃を持った兵士に追われなくてはならないのか、そんな理不尽に怒りを感じる暇すらない。
「おばさん。慌てなくてもいいから。
心配しないで、銃弾が当たる事なんてないからね。」
傍らの少年が、笑顔で励ましてくる。
その笑みに、頷き返す彼女の斜め後方で、流れ弾が何かに弾き飛ばされたのだが、夫人が気づくことはなかった。
工場の1室に駆け込み、一行は走るのを止めた。
どうやら、ここが目的地らしい。
がっくりと床にへたり込んだ時だった。
壊れかけた窓ガラスを破って、数人の軍人が飛び込んできた。
彼らは、彼女とマスタングらを取り囲むように素早く動くと、情け容赦なく銃口を向けてくる。
正面からも、指揮官と共に兵士がなだれ込んできた。
完全に包囲され、「焔の錬金術師」は観念したかのように両手を上げる。
「この狭い室内なら、爆炎は出せないでしょう。」
「…撃つかね。」
マスタングが、静かに尋ねる。
夫人は、これで助かると期待しながら、指揮官の次の言葉を待った。
が、彼の人物から発せられた言葉に、奈落に突き落とされることになる。
「マスタング大佐と、少年以外は撃って良し!」
耳を疑う命令に目を剥く。
兵士らは、戸惑うことなく引き金を引いた。
響き渡るいくつもの銃声に、思わず目を瞑る。
が、何の痛みもない。
再び開いた眼に映ったものは、先ほど自分に銃を向けた兵士が腕や足から血を流し、痛みにのたうち回る様であった。
一瞬にして、部下が戦闘不能となった指揮官が、気配を察して天井を振り仰ぐ。
彼が見たものは、天井付近でむき出しになっている鉄骨の上から、自分達を狙ういくつもの銃口だった。
気を取られていた彼の後頭部に、ゴリッと冷たく固いものが押し当てられる。
「大佐と少年以外てぇと、夫人も撃っていいってことか?」
彼の頭に銃を押し付けている男が尋ねかける。
「聞きたかった言葉ではあるが、聞きたくなかったな。」
マスタングが、低くそう語るのを、夫人は呆然として聞いた。
「私は……もしくは、主人は…国に捨てられたのですか?
それとも、主人が私を捨てたのですか?」
すがるような眼でマスタングに問いかける。
「そっそんなことあるもんかっ!」
マスタングが口を開くよりも先に、夫人の傍らにいる、ルースが叫んだ。
「おじさんが、おばさんの事を見捨てるなんてっ。
そんな事、絶対にないよっ!!」
「ルース君……」
必死の形相で訴えるその少年を、夫人は表情の抜け落ちた顔で見る。
そんな彼女に、ルースは眉根を寄せた。
その哀れな姿に、かける言葉がみつからない。
「わかりません。」
座り込んだまま微動だにせぬ夫人にそう答え、マスタングは膝をついて彼女と視線を合わせる。
「わかりませんが、あなたの命は我々が必ずお守りします。
すべて事が終わった時に、我々が間違っていなかったことを証明していただくために。」
そう言い残して、彼は、新たに加わった仲間と部下と共に、その場を立ち去っていく。
「ルース君。夫人のこと、頼めるかしら。」
マスタングを目で追いながら、ホークアイが尋ねる。
ルースは大きく頷いた。
「お願いね。」
そう言って笑いかけると、彼女もまたその場を去るのだった。
あとには、痛みに転げまわる無様な軍人と、打ちひしがれた大総統夫人が残された。
「おばさん。大丈夫?」
心配げにのぞき込んでくる黄金色の瞳に映る己の姿に、夫人は眉をひそめた。
(なんて酷い顔……っ。)
大総統夫人ともあろうものが、子供に心配をかけるなんて。
彼女は、両手で軽く頬を叩くと、驚いて目を瞬かせるルースに微笑んでみせた。
「ええ……心配かけてごめんなさいね。」
そういって、隣に跪いている少年の手に自分のものを重ねた。
「さっきは、ありがとう……あの人が私を見捨てるはずがないって言ってくれて……」
その言葉に、ルースは首を振る。
「ううん。だって、本当にそう思うから……・」
人造人間ホムンクルスである事を誇っている大総統だ。
お父様の計画のために妻の命が必要であるならば、喜んで差し出すだろう……だが、あの男なら、自らの手で彼女を殺すはずだ。
こんな風に見捨てたりしない。
ルースは、そう確信していた。
彼女が思っていることとは、少しずれた解釈であるのだが…
しかしその言葉が、今は、夫人にとっては大きな支えとなっていた。
「私たちが生き延びるためには、大佐と行動を共にするしかないのよね。
あの人とセリムが無事か、確認しなくては……!」
強い意志を感じるその言葉に、ルースは大きく頷き、立ち上がる。
「行こう、おばさん。」
差し出される手を握り、大総統夫人はゆっくり立ち上がると、横たわる軍人たちに一瞥くれ、その場を後にするのだった。