a captive of prince 第17章:覚醒 - 4/7

 色とりどりに咲き誇るバラ園。芳しい香に包まれる庭園を見渡せるテラスに女性達の楽しげな笑い声が響く。
 その声を頼りに、バラの散策路を2人の青年が歩いていく。
 亜麻色のくせ毛とハニーブロンドを涼やかな秋風が優しく撫でる。会話に花を咲かせていた少女の一人が、彼らの姿を認めと嬉しそうに目を細めた。
「スザクッ!」
 彼女の声に傍らの少女も瞳の伏せられた顔を人の気配のする方へ向けた。
「スザクさん?」
「やあ、ユフィ。元気そうだね。」
「ええ。いつもナナリーや貴方が尋ねてきてくれるので寂しくありませんもの。」
 ニコニコと話すユーフェミアに、スザクも微笑む。
「ナナリー。いつもありがとう。アーニャも………」
「とんでもない。ユフィ姉様とこうして話している時が、私も一番楽しいですから。」
「皇女殿下方にご一緒させていただけて嬉しい。」
 皇族3名とラウンズ2名は、1つのテーブルを囲んで和やかに話しだす。
 ここはアーシェス宮。領民の虐殺を命じた咎により幽閉中のユーフェミアの居城である。 
 幽閉といっても城の外に出る事と情報発信を禁じられているだけで、情報の取得は規制されておらず、皇族とその関係者に限っては面会も許されている。
 それゆえ、ユーフェミアを慕うナナリーは足しげく彼女の元を訪れていた。
「ナナリー。エリア11の総督に立候補したんだってね。」
 スザクの問いかけに、ナナリーは大きく頷く。
 公式の発表はまだだが、彼女の願いは皇帝に聞き届けられ、次期総督として赴任するための準備が進められている。
 2人のやり取りを、ユーフェミアは驚きを持って聞いた。
「ナナリー?」
「目も足も不自由な私にどこまで出来るか分かりませんが、ユフィ姉様とスザクさんが考えた施策を成功させたくて……」
 恥ずかしそうに話すナナリーを、今度はスザクが驚いて見つめる。
「行政特区日本を?」
「はい。ブリタニア人と日本人が手を携えて生きてゆける社会……とても素敵な事だと思います。それにゼロ……お兄様にも加わって頂ければ、きっと上手く行くのではないのかと思って………」
 期待をこめて話すナナリーを、冷静な声が制する。
「あの政策はもう無理。イレヴンの不信感を煽るだけ。」
 表情を変える事無く、携帯を操作しながら話すアーニャにナナリーも食い下がる。
「でっでも!お兄様も1度は賛成して下さったのですからっ……!」
「それを壊したのも、ルルーシュなんだ。」
 スザクの重い声が、少女を黙らせる。
 暗く沈んでしまった空気を、当のルルーシュによってこの状況に追い込まれたユーフェミアが変えた。
「私は、ルルーシュの事を信じていますわ。きっと何か事情があったはずですもの。」
「そうだね。僕もそう思っている。事情をよく知っているのはルルーシュ以外ではC.C.なんだが………」
「彼女は無理。話す気は全くない。」
 アーニャの断定に、溜息が漏れる。
「大丈夫。きっと、ルルーシュが話して下さいますわ。」
 微笑みながら話すユーフェミアに一同は笑みをこぼした。
「お兄様にあったら、ユフィ姉様がそう仰られていたと伝えます。
 言いたい事が山ほどございますから。」
「山ほど?」
「ええ。まず、言いたいのは『思い込みだけで突っ走る馬鹿兄貴。』ですわね。」
 頬を膨らませて言う彼女に笑い声が上がった。
 ひとしきり笑うと、ユーフェミアは障害を持つ身でエリア総督となる妹を心配げに見た。
「ナナリー。エリア総督なんて……一人で大丈夫?」
 気遣わしげなユーフェミアに、ナナリーとスザクが同時に声を上げた。
「「それについては………」」
 はもる声に顔を見合わせる。
「───スザクさん。お願いがあるのですが……」
「───多分、考えている事は同じだろうね。」
 スザクの問いかけに、ナナリーは頷いた。
「副総督として、私と一緒にエリア11に行って頂けますか?」
「イエス マイ ロード。」
 スザクは、新総督に跪き頭を下げた。

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