エリア11トウキョウ租界にある中華連邦総領事館。
つい最近黒衣のテロリスト「ゼロ」率いる黒の騎士団とブリタニア駐留軍との戦闘があったその門前は、再び緊張状態にあった。
ブリタニア皇帝の騎士「ナイトオブラウンズ」2名が、駐留軍一個小隊を率いてテロリストの引き渡しを要求してしたのだ。
「────いない?」
中華連邦総領事館、その大きな門を守るように立つ武官、黎星亥の言葉にナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグは目を見開く。
「どうやら、建設途中で放置されていた地下階層を利用して逃げ出したようだ。」
「そうか───」
思案げな表情の皇帝の騎士に、星亥は言葉を続ける。
「ご希望であれば、正式な要請を受けた上で館内を隅々まで案内しても良いが。」
「いや。それには及ばない。」
「これで、我々にブリタニアと争う意志がないことをご理解頂けただろうか。」
ほっとした表情で確認する星亥に、ジノは自分達の後ろに停車している黒塗りの車に視線を移す。
「それは……我々ではなく、あの方が判断されることだろう。」
「あの方───?」
怪訝な表情で車を見る星亥に構わず、ジノは車歩み寄り車内の人物に話しかける。
「やはり、いないようです。」
その人物は頷くと自らドアを開け車外に降りてきた。
その姿に、星亥は表情を硬くする。
トレードマークの黒い軍服。前線で駆るナイトメアフレーム“ランスロット”は「白き死神」と呼ばれている。スザク・エル・ブリタニア……対ブリタニア勢力に知らぬものがない皇族の一人が、目の前にいる。
「これは……皇子殿下御自らお出ましとは………」
顔を引きつらせ嫌みを込めて言う星亥に、スザクは意外にも親しみを滲ませた笑顔で答えた。
「はじめまして。スザク・エル・ブリタニアです。
新総督の到着を待って正式に発表となりますが、エリア11の副総督に就任しました。以後、お見知りおきを……黎星亥殿。」
「私如きを殿下が知っていて下さるとは……光栄です。」
少々の驚きを持って、だが相変わらず厳しい表情の彼に、スザクはにこやかに話しかける。
「ご謙遜を……星亥殿のご高名は我がブリタニアに轟いていますよ。」
スザクの言葉に、星亥は薄笑いを浮かべる。
「ブリタニア……?貴方の母国はここではなかったか?」
「今は、ブリタニア……ですよ。これから先のことは解らないが………」
スザクの含みのある笑みに目を瞬かせる。
「ゼロと黒の騎士団は、貴方にとって価値ある存在だと思いますよ。」
「それは一体どういう意味だ。」
「早く本国に戻られることだ────」
「なに……?」
探るように凝視してくる男に薄く笑い返すと、スザクは踵を返して控えている者達に支持をする。
「政庁に急ぎ帰還する。総督の情報がテロリストに漏れたと考えられる。」
「イエス ユア ハイネス。」
慌ただしく立ち去るブリタニア軍を見送り、星亥は目を細める。
「スザク・エル・ブリタニア………一体何を………」
考えているのか…こちらは何も知らないがスザクは星亥のことを良く知っているようだ……
忠告とも予言とも取れる言葉を残して去って行った皇子に、困惑する。
はっきりしていることは、ブリタニアが本国……大宦官達の動きを把握しているという事だ。
星亥は表情を硬くして、総領事館へと戻っていった。
a captive of prince 第18章:接触 - 1/7
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