a captive of prince 第15章:崩落のステージ - 5/7

 スザクを助け起こし支える青年を、ゼロは驚きをもって見つめた。
 まさか辺境エリアにナイトオブラウンズまで投入して来るとは……
 それほどまでに、皇帝はこのエリアを重視しているという事か……
 確か、このナイトオブスリーは、スザクの友人でもあった。
 思案にふけるゼロを他所に、ジノは、負傷したスザクを気遣う。
「大丈夫か?」
「あ…ああ……左肩は多分弾が貫通した……腹部は……よくわからない………」
「応急処置が必要だな。だが、彼らはどうする。」 
 そう言って、ジノはゼロを睨みつける。
「この傷は、彼らのせいではない……ジノ、インカムを貸してくれ……」
 オープンモードにされたスピーカーで、スザクはブリタニア軍人に呼びかける。
「第十二皇子スザク・エル・ブリタニアが命じる。
この行政特区エリアにおいて、いかなる理由があろうとも日本人に対して危害を加える事を禁じる。いかなる理由があろうともだ!
日本人の皆さん、お聞きの通りです。どうか安心して下さい。
そして、どうかもう一度この場所に来て頂きたい。行政特区は必ず設立させます。」
 スザクは、1度大きく息を吐きだすと、神楽耶とゼロに視線を向ける。
「どうかもう一度お考え直し頂きたい。…お願いします。」
 頭を下げるスザクに、神楽耶は眉根を寄せる。
「全ブリタニア兵に告ぐ。これより、指揮をナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグ卿に移譲する。くれぐれも民間人の安全を第一に……戦闘行為は許さない。」
 そう命令すると、ふただびゼロに向き合った。
「ゼロ。黒の騎士団とここで闘うつもりはない……待機させている兵を引かせてくれ………」
「やはりお見通しでしたか……承知した。
特区エリアでの戦闘は起こさないと約束しよう。」
 その返事に安堵の笑みを浮かべると、インカムをジノに返し力なく寄りかかる。意識が朦朧としているらしいスザクを、ジノは力強く支えた。
「ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグだ。
スザク殿下の指示通り、撤退準備に入れ。」
 受け取ったインカムで指示を出すと、目の前の仮面の男に向き合う。
「ゼロ…貴公がゼロか。お初にお目にかかる。」
 不敵な笑みを向ける青年に、ゼロも不敵に言い返した。
「よろしくお見知りおきを……ナイトオブスリー殿。」
 ジノは、鼻で笑うと、スザクを抱え上げ自らのナイトメア、トリスタンのオートタラップに足をかけた。
「アヴァロン。聞こえるか。これから殿下をお連れする。治療の準備を……!」
 トリスタンがフォートレスモードに変形して、上空に待機しているアヴァロンへとび去って行く。
「あれが、可変型ナイトメアフレーム…トリスタン………」
 ブリタニア軍のデータハッキングで知ったナイトオブラウンズの愛機の名を呟く。
 そんなゼロに、桐原が話しかけて来た。
「ゼロ。これからどうするのだ。ナイトオブラウンズまで出て来ては………」
 スザクに宣戦布告とも取れる宣言をした彼に、勝算があるのか確認しなくてはならない。
「それは………」
 ゼロが答えかけた時。殆ど人がいなくなった会場の外が、にわかに騒がしくなった。
 人々の怒鳴り声、それを制する兵士の声が入り交じって聞こえる。
「───なんだ?」
 その喧騒は次第に大きくなり、スタジアムを囲う塀の向こう側で暴動が起きている気配を感じさせる。
 石や金属のぶつかり合う音、人の悲鳴が断続的に、徐々に大きく激しくなっていく。
「……まさか………!」
 スタジアムに入り口では、警備兵が門を強引に閉じようとしていた。
 その先には、大勢の日本人が押し押せ、中には得物で兵士を襲っている者もいる。
 ゼロ…ルルーシュは息を呑んだ。
「これはっ………!」
 次の瞬間。門は破られ、1度は会場を出た日本人がなだれ込んで来た。
 みんな口々に「ブリタニアを許すな。」「ユーフェミアに死を!」と叫んでいる。
「そうか……会場の外では、中で起きた事は………」
 ユーフェミアの虐殺命令しか知らないのだ。
「ふっ……ははは……ぬかったな、ダールトン。
折角スザクが体を張って収めたものを……無駄になったぞ。」
 ルルーシュは、声を震わせ笑った。
 この、胸に湧いてくる感情を何と現せばいいのだろう。
 怒り…哀しみ…自嘲…その全て……そして自責と悔恨……ありとあらゆる感情が吹き出し、狂ったように笑いだした。
 ゼロの高笑いに呼応するように、日本人のブリタニアへの呪詛の声が高らかに響く。
 勿論、中で見聞きした事を会場から出た者が説明しただろう。
 だがそれは、虐殺を命じた皇女をスザクが捕らえた事実だけ。そのために記念式典は中止となり、特区設立時期まであやふやになった。
 そして、ステージ上でのやり取りを正確に知る者などいない。
 彼らは、ステージ上の日本人をブリタニアが狙撃し、それをスザクが庇った事実しか知らないのだ。
 その少ない情報が、7年という歳月抑圧された生活を強いられて来た日本人に、怒りの炎をつけてしまった。
 怒りの前に、真実など何の効力も持たない。
 否、真実など知る必要がないのだ。
 今、目の前にある“日本”を取り戻す。その強い想いが彼らを突き動かしていた。

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