「ストーカーだと?」
ワインと一緒にベーコンやチーズをつまみながら、C.C.はこの家の主を見た。
「どんな女にまとわりつかれているんだ。思い込みの激しい女は執念深いぞ。」
だから誰にでも愛想良くするなと言っているだろうと、呆れたように言われ、スザクはむっつりとして、つまみの皿を取り上げる。
「おい。」
「人が真面目に話しているのに……
ルルーシュの言う通りに鼻でもつまんでいれば?」
「鼻つまんで飲んでも旨くないだろう。
───そんなに深刻な状況なのか?」
「まず、つきまとっているのは女の人じゃないし……ストーカーと言っていいのか……頻繁にこの近辺に出没しているのを監視モニターで確認している。」
「監視モニター?お前、それは……」
「うん。1度システムをダウンしたんだけれどね……なんか、いつも誰かに見られているようで気持ち悪くて……ルルーシュと相談してまた動かしたんだ。」
それは、“ゼロ”の隠れ家であるこのログハウスを護るために設置していたセキュリティの一部だ。ゼロ引退とともにセキュリティを全て解除したのだが、それを復活させたという事実に、C.C.も事の深刻さを察して難しい顔をする。
「いつからだ。」
「先月……君と一緒に買い出しに行ったろう?」
「ああ。───まさか、あいつなのか?」
スザクはテーブルから離れるとPCを持って現れ、監視モニターの画像を見せる。
そこには、ログハウスを囲う森を歩く、銀髪の男の姿があった。
「───やはりあいつか。」
C.C.が舌打ちする。
「ここを探し当てるとは……よほどお前にご執心じゃないか。」
冷や汗を浮かべながら言う彼女に取り合う余裕はスザクに無い。
「僕が目的ならまだいい……ナイトオブゼロが生きている事から、ゼロレクイエムのからくりに気がついたのかもしれない。」
「まさか……」
「考え過ぎなのかもしれない……だが…僕に用があるなら尋ねて来ればいいものを、こうして遠くからこちらを伺っているばかりだ……」
「ルルーシュ皇帝の生存を確認しようとしていると……?」
「その懸念は多分にある。
もしかしたら、真性のストーカーで、僕の日常生活を見張っているだけかもしれないけど……」
少し顔を青ざめながら話すスザクに、C.C.は身震いした。
「だからか……」
しっかりブラインドが下ろされた窓を見て、C.C.は小さく息を吐く。
「ルルーシュはなんと言っている。」
「相手の目的がはっきりしない以上、見られないようにすると言って部屋で調べものをしているよ。画像データから身元を探っている。
その上で、僕たちが悪逆皇帝とその騎士ではないという証拠作りをナナリーに依頼して、今日、僕たちの新しいIDカードをもらいに行っているんだ。」
「なるほどな。」
「C,C,。君のもあるから。」
「私のもか?」
「そう。セラ・スパロウ。僕の奥さん。」
C.C.が口に含んだワインを思わず吹いた。
ゲホゲホと咳き込みながら、苦笑しているスザクを見る。
「だって。あそこでああ言っちゃったじゃないか。」
「あれは、話の上でそうなっただけだろう。第一ルルーシュは……」
「書類上の事だから構わないって……まあ、時期が来たら離婚させると言ってたけど。」
その話に、C.C.はこめかみをヒクヒクさせる。
「───おもしろいじゃないか……慰謝料をうんとふんだくってやろう。」
「誰から……?」
「勿論。ルルーシュだ。」
Lonely soul - 3/22
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