共に煌めく青玉の【騎士ー1】※R18 - 2/11

 

「すみません。遅くなりました。」
「ちょうど始めるところだ。早く席に着け。」
エリア6反乱討伐軍本陣。部隊の将校と同じ上座にスザクは座る。
階級は士官になったばかりでさほど高くない彼が将軍と同じ場所にいられるのは、皇籍があるが故である。
この年入隊した者の中でもスザクは出世頭で、この遠征で大尉から少佐に昇進が決まっている。
皇族である事を考慮しなくてもスザクの活躍はめざましく、昇進について異を唱える者は誰もいない。
もっとも、皇女殿下の部隊にいる者で、スザクを批判する者などいやしないのだが。
士官学校在学中に行われた、ナイトメアによる模擬戦の成績も一目置かれる原因になっている。
それはジノも同様で、スザクと共に昇進が噂されている。
この討伐軍の大将であるコーネリアの信任厚いダールトン将軍の隣に座り、諸々の説明や教授を受けているスザクを、ジノは離れた位置で見守る。
あの大会で、スザクの騎士候補筆頭である事を、スザク本人を含め広く知らせる事にはなったが、騎士任命はされていない。
何の実績もない2人が任命式を行ったところで、支持するのは2人の身内だけだろうと言うのがその理由だ。
ジノの父、ヴァインベルグ侯爵がここに来てジノの騎士叙任に難色を示しているのも起因している。
「───実績か………」
ジノは小さく呟いた。
誰もが認める『実績』とは、どれほどの功を挙げればいいのだろうか。
子供の頃から言い続けてきた『騎士』が目の前にありながら、なかなか手が届かない事に息を漏らした。

「……以上が作戦の概要である。先陣は、エンドーバー隊が務めよ。」
「イエス ユア ハイネス。」
「それと…エンドーバー。スザクとジノも連れて行くがいい。
こいつらの素早さと突破力は、敵を攪乱するのに威力発揮するだろう。」
「はっ。しかし、宜しいので?皇子殿下を最前線にお出しして……」
「構わん。グラストンナイツのバートをお目付役につける。
面倒をかけるがよろしく頼む。」
コーネリアに申し訳なさそうに笑いかけられれば、エンドーバー中将も苦笑する。
2人のやり取りを側で見ていたスザクも、頭を下げた。
「中将、よろしくお願いします。宰相閣下より、この反乱の真相を見極めてくるようにと、指示を頂いて参りました。」
「左様でございますか。承知致しました。このエンドーバー、殿下が目的を果たせるようお手伝いする事をお約束しましょう。」
「ありがとうございます。」
エンドーバーの確約を得て、スザクは力強い笑みを浮かべた。

エリア6……ブリタニア領となって既に10年は経とうという発展途上エリアである。
総督のフェルナンデス伯爵の統治は硬軟のバランスよく、生産性も高い事からも本国の評価は高かった。
しかし、ここ半年ばかり、殆ど押さえられていたはずの反抗勢力の攻撃が著しく、衛星エリア昇格を目前に足踏み状態となっている。
そしてついに、エリアの主力産業である鉱物採石場が、エリア最大を誇るテログループに奪われ、その奪回のため本国よりコーネリアが出陣する事となったのだ。
エリア成立後10年経過してからの最大規模の反乱……
宰相シュナイゼルとしても、腑に落ちない事が多い。
テロリストを支持しているスポンサーがどうもはっきりしない。
エリアの位置はEU、中華連邦どちらの陣営からも離れており、政治的事由が見当たらない。
また、フェルナンデス伯爵は、ナンバーズの生活向上に前向き治世を行っており、他のエリアに比べても、ナンバーズの不満は少ない。反抗勢力とは、話し合いによる解決に骨を折ってきていたとも聞いている。
それが何故………
諜報部の調べによると、テロリストの頭目が内部抗争によって代替わりした事が切っ掛けらしい。それが半年前の事だ。
誰かが、反抗勢力を使ってエリア総督を追い落とそうとしている。
シュナイゼルの考えが行き着いたところがそれだった。

「テロリスト側に、駐留軍以外のブリタニア製ナイトメアが流れているようです。」
諜報担当のヘンドリックス少将の報告に、コーネリアは息を漏らす。
「本国から流出した可能性があるという事か。」
「はい。隣国経由で入ってきていますが、その出所はまだ……」
「ふむ。そうなるとやはり、兄上の読み通りという事になるのかな。
スザク……?」
コーネリアが視線を送れば、肩をすくめて応える。
「あまり当たって欲しくない読みですが……
皇族同士の争いに巻き込まれる領民が気の毒で……」
「そう言うお前も『皇族』なのだぞ。フェルナンデスは、エル家の支援貴族だろう。」
「……それが原因なら、本当に申し訳ない事です。」
スザクが眉尻を下げれば、コーネリアが気にするなと笑い、同席の将校らも首を振る。
「皇族と貴族は一蓮托生です。それが嫌なら、爵位を返上すれば良い。それだけの度胸があれば……の話ですが。」
「そうそう思い通りにはいかない……ということですね。」
スザクが苦笑する。
「どちらにせよ、鉱山を占拠している輩は排除せねばならない。
黒幕の詮議はその後だ。」
「イエス ユア ハイネス。」
それが、作戦会議数時間前の事だった。

「作戦決行は明日0500。夜陰に紛れて鉱山周辺に陣を張る。
それぞれ準備と移動を開始せよ。」
「イエス ユア ハイネス。」
一糸乱れぬ敬礼の後、軍人達は一斉にそれぞれの部隊に散って行った。

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