啼泣

ダモクレス戦後捏造。
慟哭の続編になります。
今回はガッツリR-18 です。

熱を持った体が重く感じる。与えられる甘い刺激を拒絶したいが、この体では思うように動いてくれない。
「だめ…だ……こんな……」
せめて言葉で抵抗を示したかったが、気持ちと裏腹に体は震え、言葉の後の吐息が艶をもって空気に解けていく。
「イイのか。悪いのか良く分からん反応だな。」
自分に刺激を与え続けている主は、苦笑とも嘲笑ともとれる笑みと共に、また、熱で気怠い体に唇を落とす。
「だいぶ辛そうだな。解熱剤を飲んだ方がいいだろう……そろそろ飲んでもいい時間だ。」
「そう…思うなら……僕を煽るをやめてくれ……余計な刺激がやめば、いくらか体温も下がる……」
「汗をかけば、その気化で熱も下がる。」
やめるつもりがないらしい声の主に、嘆息を漏らした。

シュナイゼル・黒の騎士団連合軍とのフジ決戦に辛くも勝利しダモクレスを手に入れたルルーシュ皇帝は、ダモクレスの軌道を上昇に固定して放棄し、脱出後は本国に帰還せず、そのまま日本を直轄領として滞在し続けている。
彼がこの地に留まり続ける理由は、ゼロレクイエムを完成させるための駒、枢木スザク、否、新生ゼロの治療および療養のためだ。
ダモクレス戦で戦死した事を印象付けるため、ランスロット爆発の寸前までコクピットに留まったことが仇になり、想定以上の負傷を負ってしまった。
ギアスの効果なのか、傷は常人に比べ著しく速いスピードで回復している。その副反応で高熱が1週間以上続いており、スザクは皇帝の執務室の隣に用意された部屋で、ベッドの住人になっていた。
専門的な知識を要する治療がほぼ終了した時点から、スザクの看病はルルーシュとC.C.が行っている。
特にルルーシュの看病は徹底しており、用を足すのにベッドから起き上がる事すら許さず、食事から排泄まですべて自ら手伝い、スザクは赤ん坊のように甘やかされている。

「性欲処理なら……こんな半病人じゃなく、別の相手がいくらでもいるだろう……」
「……女はだめだ。万が一にでも俺の種を身ごもらせる懸念がある。」
「買うのは……女ばかりとは限らない…だろ……」
「そっち方面の趣味はない。」
「ふぁっ……っ」
一番敏感な部分に爪が当たり、思わず声が上がる。
「じゃあ……今やっているこれは何だ……」
「我が覇道に勝利を齎せてくれた騎士を労わっているつもりなのだが……」
「うそ…つけ……」
「嘘じゃないさ。生命の危機を感じると動物の雄は、種の保存本能が優先して働く。随分苦しそうだぞ。ここが。」
そう言って指先で弾いてみせる。そのせいで、また、はしたない声が漏れてしまった。
「楽にしてやる。自分では無理だろう。」
アメジストの瞳が細められる。
スザクは精一杯の嫌味も軽くいなされ、観念して目を閉じた。
ルルーシュの誘導で溜まりに溜まっていたものが吐き出される。弛緩した陰茎と共に、スザクはベッドに深く体を沈めた。
白濁を受け止めているスキンを外すと、ルルーシュは、それをしげしげと眺めて満足そうな笑みを浮かべる。
「随分出たな。」
その言葉にスザクは顔を背ける。排泄介助だけでも恥ずかしいのに、この上自慰まで手助けされて、スザクの自尊心は相当に傷ついた。
彼の心情を理解しているのかいないのか、ルルーシュはスザクの顎に手をやると自分の方へ顔を向けさせる。
「スザク。薬の時間だ。」
わずかに開いた口に錠剤が落とされる。水は口移しに飲まされた。ルルーシュの薬の飲ませ方はいつもこうだ。初めのうちこそ抗議したが、全く改める様子がないので、今は彼のやり方に従っている。
「……ルルーシュ。薬の種類が変わったのか……?いつもより数が……」
「解熱剤の他に鎮痛剤も飲ませたからな。」
「……鎮痛剤……?」
熱で回らない頭を働かせようとしていると、ルルーシュの手が腰にかかり、パジャマのズボンを下着ごと引き抜いて下肢を露にさせる。
「……っ!」
突然のことに声も上げられずにいると、ルルーシュがのしかかるようにベッドの上に上がり込んできた。
「すまないな。俺の方も処理させてくれ。」
悪びれのない笑みを向ける皇帝に、スザクは熱で紅潮している顔をさらに赤くさせて睨みつける。
「男色の趣味はないと……」
「お前は別だ。事実お前の声でこうなった。男の喘ぎ声でも、勃起するんだな。」
そう言って、くすくす笑う。
「前戯は十分だろ?」
鼠径部に両手をかけて股間を広げさせると、スザクの白濁を手にたらして指に馴染ませる。しっとりと濡れた指先で、後孔のひだをなぞるように刺激する。
ピクリと、スザクが腰を震わせた。指を1本中に差し入れる。
「んっ……」
小さな声が漏れる。それに気をよくしながら、中でゆっくりと動かすと下腹部がヒクヒクと反応した。
「反応がいいな。……熱のせいか……?」
スザクの答えはなく、その代わり吐息が漏らされる。
指の本数を増やいしてく。受け入れることに慣れている孔は、難なく彼の指を呑み込んでいった。
「あっ…あっ……んっ……」
指が増やされるたび、スザクが漏らす声にも、艶が出てくる。
ばらばらと中で動かせば、身じろいでさらに高い声を上げた。指先が、スザクの一番感じやすい部分を刺激する。
「はぁ……っん。」
一際高い声と共に、体が跳ねた。
「スザク……いい声だ。ゾクゾクする。」
「僕が…抵抗できないのをいい事に……卑怯者。」
熱と刺激で潤ませた瞳で睨みつければ、ルルーシュの笑みはさらに深くなる。
「普段のお前をその気にさせるのには骨が折れるからな。身持ちが堅いくせに、いざ事に及ぶと娼婦並みの反応の良さだ……淫乱め。」
剣呑とした瞳で見つめてくるスザクの顎を捕らえて深く口づける。きつい瞳で睨んでいる割には、素直に受け入れる。スザクの中は抗う事を知らない。与える刺激に思う以上の反応示してくる。
だから、のめり込む。また、欲しくなる。
ルルーシュの熱が後孔に押し当てられる。その刺激だけで、スザクは体を反らせた。そのまま侵入すると、体がびくびくと震えて応える。
「うっ…んん……っ。」
体内を圧迫する質量に、スザクが体を強張らせた。
「辛いか……?すぐにすませるからな。」
スザクの額に唇を落とすと、ぎゅっとつむっていたスザクの瞼が軽く瞬き、強張らせていた体を緩める。それに合わせてさらに奥へと侵入させると、スザクの手が何かを求めるように宙を泳いだ。
「あっ……ああっ……!」
「スザク……」
彷徨う手を取ると、手首を掴み返してくる。
「少し、動くぞ。」
スザクが小さく頷く。
「ふっ…うっ…はぁ……っん」
律動に合わせてスザクが嬌声を上げた。

ルルーシュ……だめだ……このままじゃ……
ルルーシュから与えられる快楽に酔いそうになる自分を叱咤する。それでも、体は素直に彼を受け入れ、歓喜の声を上げる。ルルーシュの愛撫は、スザクを狂わす。こんなにも、体が痺れるような感覚を味わったのは初めてだ。
耳元で囁かれる甘い声も、繊細な動きでスザクのいいところを探す指の動きも……自分に注がれる情に流され溺れてしまいたくなる。
でも……駄目なんだ……このまま全て委ねてしまったら……彼を失いたくなくなる。
ゼロレクイエムを完遂できない。契約を違えることになってしまう。
手首を掴んでいた手を放し、代わりにシーツを握りしめる。本当は縋り付きたいのをじっと耐えた。
「あっああっ……!」
ルルーシュ!
喉元まで駆け上がってきた名前を必死で呑み込んだ。

絶頂に達し吐精するのと同時に、スザクの体が軽く痙攣する。ルルーシュは、ゆっくりとスザクから離れた。その刺激で、また、スザクの体が震える。
薬が効いてきたのか、朦朧としている様子の彼に唇を重ねる。
剥ぎ取った衣服を整えてやる。指先が白くなるほど握りしめているシーツから手を開放させる頃には、スザクから寝息が聞こえていた。
額に光る汗を拭うと、そこに何度目かのキスを贈る。
「おやすみ。無理強いしてすまなかった。」

額に触れたひんやりとした感触に、スザクはゆっくりと瞼を上げる。
目の前に柔らかな緑色があった。視線を上げると、黄金色の瞳と目が合った。
「C.C.……」
「幾分か熱は下がってきたようだな。」
枕もとの水差しからコップに注いだ水を勧める彼女に、スザクは半身を起こしてそれを受け取る。
思わず笑みがこぼれた。
「普通、看病はこうだよな。
ルルーシュのは、やり過ぎだ……何もさせてもらえない。」
「いやなら断ればいいものを……それを甘んじて受けているのは誰だ。」
クスリと笑う魔女に、顔を俯かせる。
「分かっているからだろう。
あいつにはもう、情の向け処がお前しかいないことを。」
「……そうさせたのは…僕だ。」
フレイヤがペンドラゴンに落とされたとき、死んだものと思っていたナナリーの生存を確認した。そのことに動揺するルルーシュに、戦略目標は変わらないと、彼女を切り捨てさせたのは自分だ。契約の履行を優先した。
それなのに───
黙りこくるスザクに、魔女は話題を変えてきた。
「ルルーシュが落ち込んでいたぞ。欲を抑えきれず無理強いさせたと。」
切なそうな顔でコップを返してくるのを受け取り、C.C.は苦笑する。
「もっと素直になればいいものを……」
「気持ちのまま彼を求めたら、きっと離せなくなる。彼との約束が果たせなくなる。」
「あいつと一緒にいられる時間は短いぞ。」
その言葉に、スザクの肩が震えた。
「C.C.……」
自然と、両腕が彼女の腰に回る。そのまま縋り付くように体を寄せた。
「おい……」
相手を間違えてるぞと茶々を入れようとした彼女の口を、スザクの声が黙らせる。
「辛いよ……ここが……」
そう言って左胸を刺す。
「……止めれないのか……?」
「何度も考えた。でも、ルルーシュが生き残る術はどこにもない……」
「そんな状態で、できるのか。ゼロレクイエムを。」
「するさ。しなくてはいけない……でなければ、今までの彼の苦労と覚悟が台無しになる。彼の騎士としてそれだけはできない。」
「騎士の矜持と本心の板挟みか……」
スザクの瞳から、涙があふれる。
「ごめん。今だけだ……今だけだから……」
「仕方ないな……」
嗚咽を漏らす騎士の髪を、魔女は優しい仕草で何度も,梳くように撫で続けるのだった。

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