recaptureの番外編。
ヴィンセントを操るギル様視点。ギャグです。
「我を助けよっ。」
行方が分からなくなっていた我が主が、味方によって捕らえられ助けを求めている。
理由は分からないが、騎士としての本能が彼を突き動かした。
大切な我が姫君を抱え、この場から逃げようとすると、手の上の主が降下させるように指示してくる。
不審に思いながらもそれに従えば、主は、地上の枢木スザクを自分の側に引き上げた。
何故そんな事を……と、訝る彼の目の前で信じられない光景が展開された。
枢木が……我が姫君の頬に手をっ！姫様は、嫌がる様子も無くむしろ笑みを浮かべ、枢木の手に自分の手を重ねている。
見つめ合い、幸せそうに微笑む２人にコクピットのギルフォードは動揺した。
「そ…そんな……姫様が何故、枢木卿と……」
枢木スザクは、今は亡きユーフェミア殿下の騎士だった男。この男を騎士に任命したユーフェミア様が、彼に好意を抱いていた事は誰もが知っている。
だが、今、この２人の様子は……
もっもしやお２人は！
枢木は、ユーフェミア様の好意を受け流し、騎士という立場を崩そうとはしなかった。そして、姫様はいつまでも彼を騎士とする事に反対し、姉妹の不和は妹か亡くなるまで解消しなかった。
つまり…………
「なっ何と言う事か！お側近くにいながら私はっ……！」
姫様と枢木卿の仲に、全く気がつかなかった。いや、まて。姫様のお立場では、それを表に出すという事は叶わない。隠して当然。
そして、お相手の枢木卿も、私やユフィ様に気づかれる事無く愛を育んでいたという事か。な…なんという人物だ。私は、彼を軽く見すぎていた！許して下さい。姫様。枢木卿。
頭をぐるぐるさせながら反省するギルフォードを他所に、２人はますます親密さを深めて行く。
互いの手を握り合い、微笑み合うと……コーネリアがスザクに顔を近づけて行くではないか。
「なっ……なななななな──っ！？」
だっ駄目だ。ギルバート・G・P・ギルフォード！
主君のプライベートを覗き見るような真似をしてはっ。ああっだが、めっ目が離せないいいいいっ！
彼の動揺はそのまま外の２人にも伝わる。
突然体勢を崩した事で、２人の乗る手が揺れたのだ。
姿勢を崩し、倒れかかるルルーシュをスザクが受け止める。
「うわっー！」
思わず叫ぶギルフォード。
『ギルフォード、どうした。』
「いっいいえ。なんでもありません。姫様。
ど、どうぞ私に構わずっ……いやっ違う。
だ、大丈夫です。私も騎士の端くれ、出歯亀のような真似は……
うわーっ何を言っているんだ私はっ！！」
完全にパニックに陥ってしまっている彼に、ルルーシュとスザクは唖然として顔を見合わせていたが、ルルーシュはある事に思い当たり額に手をやる。
それで察したスザクの目が細められた。
「ルルーシュ……ギルフォード卿にギアス使った？」
幾分低めの声に、肩を振るわせ頷く。
「どんなギアス……？」
声のトーンがますます低くなる。
「俺があるサインを送った時点から、俺をコーネリアと認識する……」
「───つまり、彼には君がコーネリア様に見えている訳だね。」
「そうすれば、万一のとき全力で護ってくれるかと………」
「───僕がいるのに………？」
まっまずい！何とか手を打たねばっ。スザクの目が据わっているっ！
打開策を模索するルルーシュの目の前で、スザクがすっくと立ち上がった。
「ギルフォード卿。操縦を代わります。」
『いっいや、それはっ。枢木卿こそ姫様のお側に………』
主君の思い人に対する敬意を示す彼に、舌打ちする。
「いいえ。彼女は騎士である貴方が護って頂いた方が、僕としても安心ですから。」
『とっとんでもない。私ではなく枢木卿がお側にいらした方が、姫様もどれだけ………』
お喜びになるか……と、言い終わらぬうちに、外からコクピットを開けたスザクにつまみ出され、すごすごとコーネリア（ルルーシュ）の元へ行く事になった。
「も…申し訳ありません。折角の逢瀬を………」
「いや……私も、配慮が足らなかった。」
体育座りで並んでしょんぼりとする２人を乗せ、スザク操るヴィンセントは蜃気楼を隠してある地点へと飛んで行く。
きっと今頃スザクは、膨れっ面で操縦している事だろう。
ルルーシュとギルフォードは別々の事を考えて嘆息した。
「斑鳩に合流したら、ジェレミアに解除させるから……」
「当たり前でしょっ！」
スザクの怒声に、また大きく溜息が漏れた。
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