蒼穹

ゼロスザク×ミレイ

空が高い。
抜けるような青空……
あの日も、こんな蒼だった。

「あの日も、こんな晴天だったわね。」
隣に立つ金髪碧眼の美女が、そっとつぶやく。
ゼロは、それに答えることはなく空を仰ぎ見ている。
黒衣の怪人から黒衣の英雄となった彼の立ち姿は、世界唯一皇帝を誅殺したときと同じく凛としている。
今や人気キャスターとなったミレイ・アッシュフォードは、英雄の横顔に微笑む。
「一年間、貴方を密着取材させてもらえて有り難う。
この一年の活動は、本当に壮絶だった。
もうこの世界に超合衆国に批准しない国は存在しない。たった一年で貴方は、世界中の軍隊を廃止し、黒の騎士団という防衛組織に彼らの軍事力を吸収させることに成功した。
常に行動を共にしていた私でさえ、貴方がいつ眠っているのか分からなかったわ。」
「私は、超人ではない。睡眠はきちんと取っている。」
ぼそりと返された言葉に、ミレイは肩をすくめて笑う。
「相変わらず、ぶっきらぼう。」
「ひとつ聞いても良いかしら。」
その問いかけに、彼は黒い仮面を向けることで答える。
「あの時、貴方は……泣いた?」
「───あの時?」
「ルルーシュの胸を貫いた時………」
ミレイには、ゼロの肩がわずかに震えたように見えた。
ゼロは、ミレイから視線を外すと、再び空をあおいだ。
その姿は、何かをじっと耐えているように見える。
2人を静寂が支配する。
触れてはいけないものに触れてしまった気まずい緊張と、若干の息苦しさと悲しみ……
それは、ほんのわずかの時間にも永遠にも感じられた。
「───バカな。」
不意に、ゼロがくすりと笑みを漏らしながらつぶやいた。
「なぜ、私が泣かねばならぬ。」
「───そうね。愚問だったわ。」

────語尾がかすかに震えている………

これが、貴方たちが導きだした答え。貴方の選んだ人生。
私たちは何も知らされずに、彼らの人生の上に生きている。
あの、世界を揺るがせた世紀の一瞬は、ことあるたびに放映されている。
それを見るたび感じていた違和感に、ミレイはゼロの密着取材を申し込んだ。
一年間ゼロを見続けて導きだした答えは、とても信じられないほど切なく悲しい、そして、悔しいもの……

なぜ、皇帝ルルーシュは、自分の命が奪われようとしたその瞬間、笑みを浮かべていたのか。

私には、見守ることしか出来ない。
ならば、一生かけて彼を記録しよう。
ジャーナリストである私にしか出来ないことなのだから。

傍らの英雄は、まだ蒼穹を見上げている。

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