「ゼロ。これまでだ。」
ゼロを追いつめた。そう思ったとき、戦場に白い影が現れた。
緑の長い髪の少女だ。
「女の子?何故こんなところに……ゼロの仲間なのか。」
「止めろ。この男に手を出すな。」
少女がそう言ってランスロットに手を触れた。
何が起きたか解らなかった。
突然、意識が闇に突き落とされる。何もない暗闇の中うっすらと光が現れ、おぼろげだったそれは徐々に人の形を象っていく。
それは、ひとりの男だった。しかも、スザクのよく知る人物……
「父さん……!」
男は何も言わない。ただ、スザクを見据えるだけ。
蔑むような……嘲るような目で……
う…嘘だ……死んだはず……!
「うっうあああああっ!!」
後は、絶叫と混乱。ヴァリスを乱射し続けるランスロット。
「スザくんっスザクくん、どうしたの!?しっかりして!!」
悲鳴の様に、スザクに呼びかけるセシル。
特派のトレーラーの中は混乱状態だった。
そんな中、スザクの幼少期を知る唯一の人物、ロイド・アスプルンドは比較的冷静だった。
「これが、殿下の言っていた例の”発作”?」
しかし、もう長い間こんなものは起こしていなかったはず。
それが何故、こんな状況下で……何が切っ掛けで……
思い当たるのは、ランスロットのファクトスフィアが捕らえた緑の髪の少女か。
何とかスザクを鎮めようと試みるセシルに、ロイドは指示を出した。
「大丈夫。エナジーが切れれば暴走は止まる。そうしたら速やかに回収して。」
「はっはい。でも、このままじゃスザク殿下が……」
「今の彼に何を言ったところで届いていないよ。医療スタッフの配置もお忘れなく。
あ。くれぐれも他の部隊の連中にはデバイサーの姿を見せない様にね。
ランスロットのデバイサーが誰なのかは、トップシークレットなんだから。」
「はい。承知しています。」
宰相シュナイゼルの肝いりでエリア11に駐軍している特別派遣嚮導技術部は、優秀と言われる騎士から果ては名誉軍人まで、適性のあるデバイサーを探したが、ついにロイドの眼鏡にかなう人物は見つけられなかった。
弱り果てて、スポンサーであるシュナイゼルに相談に行ったところ、たまたまコーネリアの元にいるスザクの戦歴を知り白羽の矢を立てたのだ。
シュミレーションの結果は、適合率94%。驚異的な数値をたたき出したスザクに、ロイドは狂喜乱舞した。
が、シュナイゼルはもとより当のスザクもエリア行きを渋るのだ。
「まあ。仕方ないけどね。彼にとって辛いことの多い土地だし……」
だけど、例え二人に恨まれようと、僕はランスロットを完成させたかった。
それに、これがスザクくんの運命を変える切っ掛けになるかもしれない。そう信じている。
だから、二人の元を何度も訪れ、説得し、エリア総督のクロヴィスまで巻き込んでついに首を縦に振らせた。
ただし、条件付きであったが。
デバイサーの正体を上層部のみの秘密にして公表しないこと。
これは、スザクの存在が本国でもごく一部の人間にしか知られていないことに起因する。
宰相シュナイゼルの厳命だった。
「それにしても、つくづく業の深い人間だよね。僕も……」
この先、この少年は闘い続けることでどれだけ傷を拡げることになるのだろう。
その傷と向き合って生きる強さがあると信じたい。
しかし、”枢木スザク”としての心の暗部をさらけ出してしまった彼をどう支えていくべきか……
開発者として、また、このエリアでの彼の支援者の一人として大きな課題を突き付けられたようで、ロイドは腰掛けていた椅子に座り直し、深々と背もたれに寄りかかった。
a captive of prince 第5章:ナリタ攻防 - 3/7
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