a captive of prince 第5章:ナリタ攻防 - 1/7

 ナリタ山にある日本解放戦線本拠を叩く。
 エリア内の有力抵抗組織の弱体化を目的とした討伐戦の、これが最大の目玉である。
 大きな作戦となるため特派も従軍することとなったが、後方待機を言い渡された。
 コーネリアから、G-1とユーフェミアを警護する様に釘を刺され、承諾せざるを得なかった。
「ヒマだねえ。」
 とぼやく主任に、セシルと苦笑するスザクであったが、突然、大地を揺るがす鳴動に身を強ばらせた。
「一体何が……!」
 通信から聞こえて来る混乱と緊張した声。そして、作戦パネルに映し出される異様な影。
「これは…土砂崩れ……?しかもなんて広範囲な……」
 セシルが呆然とつぶやく。
「そうらしいね。妙なタイミングで起きたねえ。自然のものか…人為的なものか……」 
 彼女に話しかけるロイドの声が、1つの通信に遮られる。
「正体不明の集団の攻撃……これは!黒の騎士団です!!」
「黒の騎士団!?」
「あらら。日本解放戦線の応援てことかな。」
「いや…これは…日本解放戦線の援護というよりは……」
 土砂に分断されたコーネリア直属部隊の位置を見て、スザクが呻く。
「目的は他にありそうだね。」
 明るく話すロイドの声にも緊張が現れている。
「ロイドさん。セシルさん。出撃の準備をしましょう。」
「総督を助けにいくのかい?単独行動は御法度じゃなかった。」
「今はそんなことを言っている場合じゃないです。」
「そりゃそうだ。はーい。出撃準備始めるよー。」
 ロイドの音頭に、その場は一気に慌ただしくなった。

「G-1で突っ込みましょう。」
「ここを動くことはなりません。」
「しかし、このままでは総督のお命が…!」
「なりません!!」
 姉の窮地に、ユーフェミアは焦燥していた。
 進言して来た幕僚の言う通り、本心はこのまま姉のところへ駆けつけたい。
 だが、自分はこの作戦の副指令でもある。
 黒の騎士団の引き起こした土石流の被害は、麓の市街地にまで及び、負傷兵ばかりか民間人の負傷者救援にG-1ベースの解放が不可欠だ。
 そのための指示を出したばかりである。
 土砂に埋もれた味方の救出に人員を割いたので、コーネリアの救援に向う部隊の手当がつかない。
 どうすれば……。
 両手をついて見つめ続けていた作戦パネルに、1つの通信が割り込んで来た。
「あ……」
「どうもどうも。特別派遣嚮導技術部でございますぅ。」
「何だ。駐軍しているだけのイレギュラーは大人しくていろ。」
「それは。そうなんですけど……」
 特派主任の隣に映るオペレーターの女性が遠慮がちに、だが、意思をもって上司のぶしつけな行動を擁護する。
「おかげで困っているんですよ。ヒマでヒマで……」
 そう言ってロイドが画面から身を引くと、苛立ちをロイドにぶつけていた幕僚の顔が引きつる。
「──スザク殿下……」
 画面に、ナイトメアのコクピットに座する皇子の姿があった。
「ダルク少将。副総督の判断は正しいと思います。
今、G-1を動かすのは得策ではありません。」
「だが、このまま手をこまねいていては……!」
 総督が、敵の手に落ちてしまう。
 噛み付くような少将の言葉に静かに頷くと、スザクはユーフェミアに視線を合わせる。
「副総督。特派に命令を与えて下さい。」
「何を言って……単騎での出撃は、宰相閣下からも禁止されているはずです。」
 ダルクの忠告を無視して、スザクはさらにユーフェミアに願う。
「出撃を許可します。──スザク、お姉様を助けて下さい。」
 ユーフェミアの懇願に、スザクは力強く頷いた。

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