a captive of prince 第5章:ナリタ攻防 - 2/7

「現在総督のグロースターは敵ナイトメアと交戦中。その背後より、数機の敵影接近を確認。
ランスロットは、サンドボードを使用して斜面を上昇。総督の救援に向って下さい。」
 出撃準備中のスザクに、ロイドが話しかける。
「スザクくん。1つ聞きたいことがあるんだけれど。」
「何でしょう。」
「君は、人が死ぬことを極端に嫌うね。なのに、何故軍隊にいるんだい?」
「──死なせたくないから、軍隊にいるんです。」
「その矛盾が、いつか君を殺すよ?」
 スザクが口を開く前に、ロイドの悲鳴とともに通信が切られた。
「ランスロット、発信します。」
 兄シュナイゼルとも親交のある、エル家の支援貴族であるロイドの言葉は、そのまま兄の懸念でもあるのだろう。
 だが、士官学校進学を決意した時から、スザクの信念は変わらない。
 いや、父を殺めたその日、ルルーシュに誓った。
「僕は、自分の力を他人のためだけに使う。それしか──」
 僕に出来る事はないのだから。
 

 通信から漏れ聞こえて来るコーネリアの声が、スザクを焦燥させる。
「我が騎士ギルフォード。ダールトンとともにユーフェミアを補佐してやって欲しい。」
 ランスロットの速度を最大にして斜面を駆け上がる。
 時間がない。眼前に立ち並ぶ樹木をなぎ倒し、ヴァリスを構えた。
「私は、降伏はせぬ。最後まで皇女として闘うまで!」
「駄目だ。姉上!」
 ヴァリスとスラッシュハーケンを同時に放つ。破壊され舞い上がる土煙の中、白い機体が宙を舞った。
「総督ご無事ですか。救援に参りました!」
「……っ!」
 この男に、大人しくしていろというのが無理だったか。
 コーネリアは苦笑した。
「ランスロット、気をつけろ。その紅いのは黒の騎士団の最新型だ。」
 突進して来る紅いナイトメアを迎え撃つ。
 ランスロットと同等のスペックか。今までのグラスゴーなら一撃で倒せたものを躱されてしまう。
 また、相手の攻撃を躱すのも紙一重の状態だ。
「強い──!」
 だが、ランスロットの方が優位な位置を取れた。
 崖を瀬にした敵に、止めとばかりにヴァリスを撃つ。
 が、その紅いナイトメアはかぎ爪のような右手で、ヴァリスが放ったエネルギー砲を受け止めた。
「止めた?」
 正確には、それぞれが放ったエネルギーが互いを打ち消したのだが、スザクにはそう見えた。
 しかし、その勢いにバランスを失い、紅いナイトメアは崖下に滑り落ちて行った。
「撤退だ!」
 ゼロのグラスゴーが崖の上に昇って行くのを見たスザクは、反射的に後を追った。
「待てっランスロット!深追いはするな!」
 コーネリアの止める声は、もはやスザクに届いていなかった。
「殿下。今参ります!」
ギルフォードの声に、コーネリアは静かに撤退の指示を出す。
「これ以上我が将兵の命を賭ける理由はない。戦闘状態を維持しつつ、緩やかに後退せよ。
認めなくてはならぬ。今回は、我が方の負けだ……」

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