Sleepy dog night

バスルームから出て、さて寝ようかと寝室のドアを開けたスザクは、がっくりと肩を落とし、大きなため息をついた。
「───どこで寝ろって言うんだ………」
スザクのベッドには2人の人物…ルルーシュとC.C.の姿があった。
自分のベッドがあるにも関わらず、最近この2人は、何故かスザクのベッドに潜り込んで寝ている。
スヤスヤと気持ち良さそうに……
「はあ……なんで、寝る前にこんな重労働……」
そう言いながら2人を肩に担ぎ上げると、それぞれのベッドの上に放り投げる。
初めの頃は、1人1人丁寧に運んで、ベッドに寝かしつけていたが、こう毎日だと扱いがぞんざいになるのは致し方ないだろう。
こうしてわざわざ自分のベッドに運んでやっているというのに、朝、気がつくと戻って来ている。
セミダブルサイズのベッドに大人3人は、眠るのに狭すぎる。
2人に挟まれて窮屈な想いをしながら、朝を迎える。
「熟睡で来ているんだか。いないんだか……」
どうせ、また戻って来るんだろうな…と、ため息をつくとものの5分で眠りについた。
軍人時代に染み付いた体質は、そう簡単には抜けないらしい。
数時間後。ごそごそ潜り込んで来る人の気配に、スザクは眠りを妨げられた。
「もう……っ。いい加減にしてよ!」
ガバッと布団を全部はいで、ベッドの上に立ち上がる。
足下を見れば、両サイドに、ちゃっかりと、ルルーシュとC.C.が寝ている。
「どうして2人とも、自分のベッドがあるのに僕のところに来るの?」
わざわざ隣室から越境して来る2人を問いつめると、しれっとした顔で、のたまう。
「それは勿論。お前の布団が一番温かいからだ。」
「温かいって……2人の方が、僕より毛布多めに掛けてるじゃないか。」
「お前の羽根布団の方が温かい。」
2人が指摘するのは、従妹が送ってくれた高級羽毛の掛け布団だ。
「軽くて温かいし、この肌触りは最高だ。」
「そりゃあ。キョウトの寝具店の最高級品だって言ってたから……
でも、君たちのところにも同じものが届いたろう。」
「俺のは、これほど良くなかったぞ。」
「神楽耶の奴、私達の分は質を落としたんじゃないのか?」
「あぁ──。」
スザクが、彼らにも同じ物をと頼んだ時、ルルーシュ様はともかくC.C.殿もですか?と、酷く不満げな顔をしていたのを思い出し、額に手をやる。
絶対ランク下げたな───
「それに、スザク。スリーピングドッグという言葉を知っているか?」
「知ってるよ。寒い冬に犬と一緒に寝ると温かいって言うヤツでしょ。」
「だから。犬と一緒に寝る方がよく眠れるんだ。」
「──誰が犬だって?」
その質問に、2人はスザクを指す。
「その話…犬を2匹入れるんじゃなかった?」
「3人の中で一番体温が高いヤツが何を言っている。」
「そうだ。それに、夜ごと愛玩犬のような声を聞かせているくせに。」
「だっ誰がそんな……ひゃっ!?」
「ほら。こんなふうに……」
ルルーシュが、耳元に息を吹きかけ、忍び笑う。
「お前。こういう事されるのも好きだろう。」
と言って、C.C.が、くすくす笑いながら顔を胸にすりつけ、掌で撫でる。
「ちょ……C.C.……」
赤い顔で耐えていると、2人に引っ張られてベッドに倒れ込んだ。
「だから、一緒に寝よう。」
「今夜は、私達がうんと可愛がってやるぞ。」
魔女が妖艶な笑みで誘う。
「いっいいかげんにしろ───っ!」
数秒後。ルルーシュとC.C.は、寝室からたたき出された。
ガチャッと、内鍵のかかかる音に2人は顔を見合わせる。
「ほら見ろ。お前がからかったりするから。」
「貴様こそ、調子に乗っただろう。」
「ううっ寒い。早く自分のベッドに戻ろう。」
「──そうだな。」

数日後。このやり取りがまた繰り返される事になり、ついにスザクは、寝室のベッドをキングサイズに替えるはめになった。
そして今夜も……
「人のベッドで、2人して大の字で寝るなよ……」
半べそで、自分の寝るスペースをつくる、スザクの姿があった。

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