万聖節に君と…… - 1/3

万聖節。毎年11月1日に全ての聖人・殉教に祈りを捧げるカトリック系キリスト教の祝日である。諸聖人の日・ハロウマスとも呼ばれる。前日の10月31日はハロウイブとなりハロウィンの語源といわれている。

 

10月30日。のどかな秋晴れの午後、ルルーシュとスザクが住まうログハウスのウッドデッキで午睡していたC.C.は、山道を登ってくる車のエンジン音で目を覚ました。
街道から続く道からやってきたそのオフロードカーは、彼女の目の前で停車すると、中からルルーシュとスザクが下りてくる。
「何だ。出かけていたのか。」
「C.C.。いつ来たの?」
車の中から何やら大きな荷物をいくつも出しながら、スザクが声をかける。
「ついさっきだ。」
「カギ。持ってなかったのか。」
ウッドデッキにいる彼女に、家に入れなかったのかと気遣うルルーシュに、首を振って応える。
「あんまり天気がいいから、日向ぼっこしていただけだ。」
「それで、そのまま寝てたのか。猫みたいなやつだな。」
軽い嫌味に肩をすくめる。
「それにしてもすごい荷物だな。
何をそんなに買い込んできたんだ。」
ルルーシュの抱える袋を覗いて、C.C.は目を瞬かせる。
袋の中にはゴロゴロと小さなカボチャがひしめき合って入っている。
「なんだ。これは?」
「見ての通り、カボチャだ。」
「そんな事は言われなくても分かる。
この大量のカボチャをどうするのか聞いているんだ。」
「全部、ランタン用だよ。明日は、ハロウインだから。」
「でかいの1つ飾れば十分だろう。」
「ここまで上がってくる山道にも飾るそうだ。」
ルルーシュが少しひきつった笑みで答える。
「子供たちがお菓子貰いに来れるようにさ。」
「子供をここに呼び込むのか?」
「年に1度の子供の祭りじゃない。今までは他人を寄せ付けないための場所だったけど、もう、そうじゃなくなったから。」
スザクがゼロを引退し、ルルーシュが長い眠りから覚めたその年のハロウイン。人としての生を赦されたスザクが、自ら望んだことだった。

「ハロウインと万聖節を祝いたい。」

「お前が、子供好きとは思わなかったな。」
「そう?動物とか小さい生き物は何でも好きだよ。」
「子供と動物は同類か。」
ランタンにするためにカボチャをくり抜きながら、スザクとC.C.は言葉のキャッチボールを楽しむ。
何をしているのか、猫のアーサーと犬のアレキサンダーが興味津々で寄ってくる。2人は、くり抜いたカボチャをおやつ兼おもちゃとして2匹に渡してやった。
日がすっかり落ち、星が瞬き出す頃、ランタンが完成した。
「やれやれ。手や手首がガチガチだぞ。」
「ご苦労様。ありがとう助かったよ。明日までかかるの覚悟してたからさ。
あとでマッサージするよ。お風呂で温まって。」
言いながら玄関を開けると、中から甘い香りが漂ってくる。
「ランタンは完成したのか。」
「うん。C.C.のおかげで、今日中にできたよ。」
「そいつは良かった。こっちもできたぞ。子供たちに配るクッキー。」
「ありがとう。うわあ。可愛いなあ。」
テーブルの上には、カボチャやお化けなどの形のクッキーが何種類も皿に盛られている。
「うむ。味も良い。」
「あ。こら、つまみ食いするな。数が合わなくなるだろう。」
「では、他の種類も食べないとな。」
しれっとした顔で、言い放つC.C.に、ルルーシュのこめかみがヒクヒクする。
「何かまだ作ってるの?」
キッチンのオーブンで何かを焼いている匂いに、スザクが問いかける。そのタイミングで、オーブンがチンと音を鳴らした。
「ああ。今日の夕飯だ。カボチャのキッシュに、カボチャ入りミートパイ。パンプキンポタージュ。」
煮えた鍋のふたを開けて、ルルーシュがクスリと笑う。
「カボチャまみれだな。」
「嫌なら食べなくていいぞ。」
「何言ってるの。食べるにきまってるじゃん。みんな美味しそうだよ。」
「“そう”じゃなくて美味いんだ。
誰が作ったと思っている。」
慇懃な態度で言い切るルルーシュに、2人は顔を見合わせ苦笑する。
「はい仰る通り、失言でした。陛下。」
「よし。では、食べるとするか。」
普段は二人の晩餐にC.C.も加わり、3人は久しぶりににぎやかに夕食を囲むのだった。

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