らくがき

夜が明けきらない時間にふと目が覚めた。
昨夜から空気がだいぶん冷えてきていたけれど、寄り添って寝ていても肌寒さを感じる。

となりに眠る人の安らかな寝息に、自然と頬が緩んだ。
君が目覚めてから初めての秋、森の中にあるこの家は、少し高い場所にあるから平地に比べると気温が低い。 
ベッドのすぐ上の窓のカーテンを少し開けてみると、ガラスが白く曇っている。

室内と外気の寒暖差で出来た結露が、まだ残っている月明りと昇りかけた朝日で、キラキラ光ってとても綺麗だ。

その結晶に指で触れてみる。
ひんやりとした感触を残してすぐに溶けた。

そのまま指を滑らせていく。
ガラスのキャンバスの上に、一筆書きの落書き。

自分で書いたそれに、1人でくすくす笑っていると君がちょっと目を開けた。

「どうした……?」
「ごめん。起こしちゃったね。」
「まだ、早いだろう。」
「うん。ちょっと寒くて目が覚めた。」
そう言うと、君は片腕を上げて僕を呼ぶ。
「こっちに来い。そのままだと冷えるぞ。」
「うん。」
僕が腕の中に潜り込むと、そっと抱き込んで温めてくれる。
「やっぱり……少し体が冷えてるじゃないか。」
「ごめん。ルルーシュも寒くなっちゃうね。」
「大丈夫。こうやっていればじきに温まるさ。」
「うん。」

すぐに微睡む。君の腕の中。

朝になっても残っているかな。窓の落書き。

君と僕の相合傘。

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