Honey moon - 7/19

しまった………!
ルルーシュは内心舌打ちする。昨夜の出来事が頭をよぎった。
「すまん。また怖がらせてしまったか?」
「ち…違うよ……そうじゃない………」
少し俯き加減に顔を伏せたスザクが、情けない声で否定する。
「だが……」
触れていた手を離そうとすると、スザクがそれを阻んだ。
「違うんだ。怖くなんかない……むしろ………」
ルルーシュの手を取り、自分の前に誘導する。
「ごめん……その…気持ちよかったんだ………せ…背中触られた……だけで……」
頬を上気させ、潤んだ瞳で自分を振り返るスザクに息を呑む。
「お前………」
「あ…朝からおかしいんだ…僕。ルルーシュと2人切りだと思うと、は…恥ずかしくて……変だよね。今更、照れるような仲じゃないのに。
きっと、夕べの酒がまだ残ってて……うん、きっとそうだ。まだ酔ってるんだ。」
照れ隠しなのか。言い訳めいた言葉を続けるスザクを力強く抱きしめる。
今度は、スザクの方が息を呑んだのを感じた。
「ル……ルルーシュ……」
呼びかけに答える代わりに、抱きしめていた手で体を撫でる。胸から腹部に指を滑らせれば、声と共に体を震わせた。
その素直な反応に、ルルーシュの心臓も鼓動を早める。
「やっ…あ……ル…ルルーシュ……まっ待って………」
自身の反応に戸惑い、スザクはルルーシュを制する。
「どうした?……やっぱり怖いか……?」
「そ…そうじゃない…けど……こ…こんなになるなんて……僕………」
耳まで真っ赤になってルルーシュを見る。その顔が可愛く見え、ルルーシュも熱が中心に集まって行く。
「嬉しいよ。こんなに感じてくれるなんて……もう、こんな風に触れる事は出来ないんじゃないかと思っていたんだ。それが……」
指先で胸の突起を弄べば、愛らしい声と共に背中をのけぞらせる。
「このまま、全身俺が洗ってやるよ。」
「やっ……じ…自分で洗える……」
「無理だろう。こんな状態じゃ。」
「そんな事無い。手…離して……」
「いいのか。このままで……」
ルルーシュが指で刺激すれば、さらに大きくのけぞり嬌声をあげる。
気がつけばスザクは、ルルーシュの膝の上に座らされていた。
「無理するな。楽にしていろ。」
「で…でも……恥ずかしい……」
「今更恥ずかしい事なんかないだろう。……可愛いよ。スザク。」
「そんな……可愛いだなんて……」
非難めいたスザクの視線に、ルルーシュの目がさらに細められる。
「可愛いよ。こんな姿……俺だけにしか見せないだろう……?」
「……うん……ルルーシュ…だけだよ………」
スザクがまた甘い声を漏らした。
ルルーシュの手の中で、スザクは面白いほど素直に反応し、あっけなく果てた。
朦朧とした表情でうっすらと笑みを浮かべると、意識を手放す。倒れかかってくるスザクを支えながら、その体を洗い流した。
「本当に可愛かったよ……スザク。」
まるで初心のようなスザクに、ルルーシュは満悦だ。
昨夜の事を考えれば、全く予想外の出来事だった。
手淫だけで達してしまうとは……その愛らしさに自然と笑みが漏れる。以前、スザクを開拓していた頃の喜びに似ている。
「本当にお前は……いつまでたってもイレギュラーな存在なんだな。」
腕の中のスザクを、愛しげに抱きかかえるルルーシュだった。

「はあ?ルルーシュと2人きりで恥ずかしい?」
C.C.は呆れた声をあげる。
スザクは、所在無さげに目を彷徨わせ赤い顔をしている。
「今更何を照れている。昨日今日仲でもあるまい。」
「それはそうなんだけどさ……僕も、なんで今頃こんなに意識するのか解らなくて……」
「お前が解らない事を、私が解る訳がないだろう。」
「うー。」
唸り声をあげて頭をかき回す様に、C.C.はため息まじりに優しく語りかける。
「お前の中で、ルルーシュに対する想いが変化したのかもな。」
「変化って……僕はずっとルルーシュの事が好きだよ。」
そう言う事は何の照れも無く言い切るスザクに、顔をしかめる。
「その“好き”の形が変わってきたのだろう。本当に気がついていないのか?」
からかうような響きの言葉に戸惑い、反覆する。
「“好き”の形……?」
「まあ。じっくりと考えるんだな。」
魔女の鼻で笑う声が小さくなり、スザクの視界は暗くなった。

「C.C.さん。何かありました?」
夕食の途中で急に席を立った友人が戻って来ると、ナナリーは小首をかしげて尋ねる。
「なんでもない。スザクが惚気を聞かせてきただけだ。」
「まあ。スザクさんが?どんなお惚気でしたの?」
「ルルーシュと2人きりで恥ずかしいそうだ。」
「まあ、なんて初々しい事を……本当に新婚旅行みたいですわね。」
コロコロと笑うナナリーに苦笑で応える。
「本人達は全くそんなつもりはないようだがな。
いや……分かっていないのはあいつだけか……?」
クスリと笑いながら、C.C.はナナリーの用意した特大スペシャルピザを一片おいしそうに頬張るのだった。

気がつけば、またルルーシュの顔が目の前にあった。
今度は寝顔ではなく、優しい笑顔で見下ろして来る。
「目が覚めたか。もうすぐ朝食の時間だぞ。」
「う……うん。」
起き上がり、身につけているものが昨夜着替える事がなかった寝間着である事に、また羞恥で頬を染める。
「ごめん……何から何まで面倒見てもらっちゃって……」
「気にするな。それに………
すごく可愛かった。」
風呂場でも聞かされた言葉を耳元で囁かれ、スザクはビクンと震えると、耳まで顔を赤くする。
そんな様子を、ルルーシュはくすくす楽しそうに笑いながら見ている。
「さっきの続きは……また今度な。」
ルルーシュの誘いに、スザクは俯いたまま首を縦に振るのが精一杯だった。
本当に……どうしちゃったんだろう……
自分の気持ちの変化に戸惑うばかりのスザクに、C.C.が投げかけた言葉が蘇る。

───好きの形が変わったのだろう
本当に気づいていないのか?───

「僕の中で変わった……ルルーシュへの想い………?」
小さく呟くと、幸せそうに微笑むルルーシュに、自然と笑いかけるスザクだった。

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