Honey moon - 3/19

「ようこそいらっしゃいませ。ルルーシュ様。スザク、お帰りなさい。」
空港から、皇家が用意した車で到着した2人を、神楽耶は満面の笑みで迎えた。
「ただいま。……神楽耶……」
「しばらくお世話になります。」
「さあ。どうぞお上がり下さい。」
広い玄関の土間から、たたきに上がる。
広縁には、睡蓮の花が描かれたついたてがあり、その奥へと廊下が続いている。
ルルーシュ達はその手前、庭に面した縁側の廊下を案内された。
縁側の窓は開け放たれ、簾が3分の1ほど下ろされている。
枯山水の日本庭園を横に見ながら歩いていくと、廊下の突き当たりに木製の引き戸があり、神楽耶の前を歩く女中が戸を開けた。
「お2人には奥の離れをご用意致しました。母屋とはこの扉で繋がっておりますけれど、中から鍵をかけしてしまえば、母屋の者は入れませんわ。」
そうルルーシュに笑いかける。
「お気遣いありがとうございます。」
「お食事は母屋で召し上がります?それとも運ばせましょうか。」
「え……いいよ。そこまでしてもらわなくても。2人で適当にやるから。離れに台所もあるでしょ。」
スザクが断ると、ムッとした顔で神楽耶が声を大きくする。
「いけません!殿方が2人で適当に…だなんて……!どこまで手抜きをするか解ったものじゃありません。」
神楽耶の剣幕に、2人は顔を見合わせ苦笑する。
「では、こう致しましょう。朝は必ず、母屋で私と一緒に召し上がって下さい。昼食と夕食をどうなさるかは、その時伺いますわ。
それから……今夜は夕げにご招待したいのですけど……?」
上目遣いで甘えるような視線を送ってくる彼女に、ルルーシュは穏やかに微笑んだ。
「神楽耶様の宜しいように……喜んでご招待をお受けします。」

離れに入った2人は、建物内の施設を確認した。
平屋建てのその家は、玄関を入った右側に二間続きの八畳間、その奥に六畳の部屋と厨房、浴室ある。
続き間は日本庭園に面しており、母屋の庭とはまた違う竹林と池のある緑の多い落ち着いた趣の庭を縁側から臨める。
池には錦鯉が何匹も泳いでいた。

「ルルーシュ、ごめんね。神楽耶、ルルーシュの料理の腕前知らないから……」
「いや……確かに、ゼロの姿で料理するわけにはいかないからな。
組織内にはその専門スタッフもいたし……」
「──食事は、皆とは別に……?」
「ああ。お前だって、そうしていたろう。」
「うん……」
そう頷くと、スザクはクスクス笑いだした。
「スザク?」
「あ…ごめん。なんか、誰もいないプライベートスペースで料理するゼロを想像しちゃって……」
「お前……ゼロの個室にキッチンなんかない事知っているくせに。」
「でも、あったら絶対しただろうなって思っちゃって……」
そう笑い続けるスザクの目には、涙がたまっていたりする。
「おい。涙流すほど笑う事か?」
「ごめ……っ。あー。駄目だ。我慢できない……!」
ついにスザクは声を上げて笑いだしてしまった。
その様子をあっけにとられて見ていたルルーシュであったが、次第に、スザクを見つめる表情は優しく穏やかなものになっていた。
ひとしきり笑うと、スザクは自分を見つめるルルーシュの顔を不思議そうに見る。
その頬を、ルルーシュの手が包み込んだ。
「そんな風に大笑いするお前を、久しぶりに見たよ。」
「そんなに笑ってなかったかな……僕。」
「ああ。だが……!」
スザクの顔を挟んでいた手で、両の頬を引っ張る。
「る……ルルーヒュッ……いひゃいよ……!」
「馬鹿笑いしやがって……!おしおきだ。」
「いひゃ…いひゃい。ごめ……ごめんひょ。ルルーヒュ。」
情けない顔で謝るスザクに、目を細め手を離す。
頬をさすっているスザクを、ルルーシュは抱き寄せた。
「ル……っ」
「そんな風に笑えるようになって良かった。」
「ルルーシュ……」
スザクも、ルルーシュの背に手を回す。
抱き合ったお互いの温もりが、心地よかった。

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