stage25からの捏造。
流血表現有
「スザクっ!」
「ルルーシュ!」
互いに怒りと憎しみを込めた銃声が響く。
スザクが放った銃弾がゼロの銃身に当たり、ルルーシュの手から弾き飛ばした。
しかし、引き金はひかれていた。
チュイーンと足下の岩盤に弾丸が当たる音が響いた刹那。スザクは、右足に衝撃と痛みを覚えその場に倒れた。
自分の向いには、同じように銃撃によろめいて膝をついたゼロ…ルルーシュがいる。
その胸にある流体サクラダイトを奪い取ろうと、痛む足を引きずりながら飛びかかる。
「ゼロっ!」
成り行きを見ていたカレンが声を上げる。
スザクは、ルルーシュにのしかかり、サクラダイトを引き離そうとしながらも、背後に銃口を向ける。
「こいつはルルーシュだ!君を…日本人をだまして利用した男だ。
そんな奴をかばいたいのか。君はっ……」
やっとの事でむしり取ったサクラダイトを投げ捨てる。
「ええ。護るわ。私達のリーダーですもの!」
銃声がまた鳴り響く。金属の塊が体を突き抜けていく衝撃に、スザクはのけぞった。
「なっ……!」
「スザクっ!」
ゴフッ……
呼吸とともに喉を駆け上った血の塊が、吐き出される。
崩れ落ちるスザクに、ルルーシュは叫んだ。
顔をあげれば、銃を構えて立つカレンの姿がある。
その手に握られたそれは、スザクによって弾き飛ばされたルルーシュの銃だ。
目の前のサクラダイトに気を取られ、銃の行方を確認しなかったのがスザクの敗因だ。
「スザクッ。おいっ。しっかりしろ……!」
助け起こすルルーシュの手を、スザクは払い除ける。
「き…貴様の手など……!」
口から胸元まで自身の流した血で染まったスザクが、憤怒の形相で睨みつける。
「ゼロっ行きましょう。租界で、皆が貴方を待っています。」
「まっ待ってくれ。」
「こんな奴放っておけばいいのよ!日本人のくせに、ブリタニアの皇女に骨抜きにされて……同胞を虐殺されてもまだ、その女の仇を討とうだなんて……!」
「……あの…命令は、ユフィの意志じゃ…ない!
こ…ここにいる…この男が……ユフィに言わせた……か、彼女の意志を…ねじ曲げて……」
「なに言ってんよ。」
「嘘じゃ…ない……ユフィは…あの行政特区のために……皇族の地位を……返上…したんだ…皇女としての…地位を捨ててまで…日本人に尽くそうとしてくれた……その人が…何故…そんな事を……言う訳が…ない……」
「ど……どういう事……ゼロっ!」
驚愕に打ち震えるカレンの瞳が、ルルーシュを捕らえた。
「スザクの話は本当だ……行政特区を、私は受け入れるつもりだった。ユーフェミアの覚悟に応えようと思っていた……あの時まで……」
「どういう事なのよ。どうしてそれが、突然虐殺命令になるの!?」
混乱して声を荒げるカレンに、ルルーシュはそれ以上言葉をつまらせる。
「何故…答えない……やましい事が…あるから…だろう……
お前は……そうなんだ…騙して……偽って……本当の事は何も……!」
苦しい息で、スザクは呪詛の言葉を紡ぐ。
「───ギアス……ゼロは…超常の力を持っている……言葉1つで…人を操る……その力で……!」
「違うな。間違っているぞ、枢木スザク。」
ルルーシュ、カレン、スザク…3人だけのその空間に、新たな人物の声が響く。
「C.C.!あんた、なんてカッコ……!!」
カレンが、絶句して緑の髪の魔女を見る。
全身濡れそぼった彼女は、一糸まとわぬ裸体を惜しげもなく晒して、堂々と彼らの元へと歩いてくる。
「確かにゼロ…ルルーシュはギアスを持っている。だが、それは様々な制約と条件が揃った時に初めて発動するものだ。
目を合わせた人物に1度だけ。誰にでも都合良く使えるものではない。しかも、1度ギアスを使った相手には、効かないからな。」
「C.C.お前…オレンジは……」
「海の藻くずだ。ガウエンもろともな……」
「……そうか。」
ルルーシュは自分のマントをC.C.に渡す。彼女はそれを当然のように受け取ると、体を隠した。
「……その…ギアスを……ユフィに使ったな……」
スザクの声は、先ほどに比べて細くなっている。
「ああ、使ったな。だが、こいつの本意ではない。あれは事故だ。」
「じ……こ……」
スザクが話す度、胸から空気の漏れる音がする。その事に、ルルーシュは眉根を寄せた。
「そう。あれは事故と言っていいだろう。こいつは和解したユーフェミアに、得意になって自分の特殊能力のことを話したそうだ。」
「得意になんかっ……ユフィが俺の話を信じなかったから……」
「その説明の時に、彼女なら絶対にしないだろう事を、例に挙げていたそうだ。その最中、ギアスが制御不能になった…暴走したんだ。」
「暴走?」
「元々は、自分の意志でオン・オフが出来ていたそれが、そのとき突然スイッチが入ったまま切れなくなった。つまりたれ流しだ。
目を合わせて喋った言葉がそのまま、相手への命令となる。」
「───そのとき言ってしまった言葉が……日本人を殺せ……なの?」
カレンが青い顔でつぶやく。ルルーシュは黙って頷いた。
「ちょっと待って……だったら、今そのギアスは……!」
カレンは、はっとしてルルーシュから顔を背ける。
その様子を、C,C,は嘲笑をもって見た。
「安心しろ。お前もこの男も使用済みだ。いくら目を合わせたところで、二度とギアスは効かない。」
「───私にギアスを使ったの……?いつ!どこで!?」
「学園で……シンジュク事変の後だ。お前がテロに加わっている理由を知るために……」
「……そんな事を知るために使ったの?1人に1回しか使えない力を?」
「この力を与えたばかりだったからな。色々試したかったんだろう。
使いすぎるな……と忠告はしていたんだがな。」
そう言ってC.C.は肩をすくめる。
「……そうか……諸悪の根源は……君……か。」
脂汗の浮かぶ顔で、スザクはC.C.を睨みつける。その事に彼女は、表情を険しくした。
「諸悪の根源……?」
「いま…言ったろう……力を……あたえた…と……」
「スザク。もうしゃべるなっ。傷口が……」
「俺…に……かまうなっ。」
気遣うルルーシュをはねつけ、スザクはヨロヨロと立ち上がる。
「おっおいっ!」
止めようとするルルーシュに構わず、壁に手をつき、右足を引きずりながら出口へと歩みを進める。彼のいた場所に残る血だまりと、歩いた後に点々と落ちる血に、2人の女性は顔をしかめた。
「待ちなさいよ。その体でどこに行くつもり?」
「決まっている……政庁に…戻って……君たちの事を…報告…する……白日の下に…晒し……ユフィの……汚名を……雪ぐ……」
「そのままだと確実に死ぬぞ。政庁に辿り着ければいいがな。」
「おれ…は…死…な…ない……絶…対……おれ…は…ユフィの騎士……だ……彼女の……名誉……を…護れるの……は……オレ……だけ……」
そこまで言って、スザクの体はずるずると崩れ落ちた。
「──言わんことじゃない。」
C.C.は倒れているスザクの腕を取ると、脈を確かめる。
「まだ生きているな……ギアスのおかげか……」
そう言って、ルルーシュにニヤリと笑いかける。
「どうするルルーシュ。こいつの事。」
「助けるのっ?だってこいつは……!」
「───C.C.。ナナリーの居場所は……」
「ナナリーの居場所は分からん。ナナリーを連れ去った奴は……もう、ここにはいないな……」
「なら……ナナリーよりも先にスザクだ。」
「いいのか。こいつを助けても感謝どころか、お前を殺すかもしれないぞ。」
「それでもだ……スザクとユーフェミアの運命を狂わせてしまった責任は、俺にあるから……」
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