a captive of prince 155

 

<共闘 chap.6>

 

黒の騎士団が、中華連邦の嚮団本部を強襲した頃、神聖ブリタニア帝国・帝都ペンドラゴンでも異変が起きていた。

皇帝が御座するペンドラゴン皇宮。
その全システムが突如ダウンしたのだ。

夜間であったため、ブリタニア権威の象徴は闇に包まれた。

皇宮の最奥に位置する機関、特務局。
そのトップである特務総監、ベアトリクス・ファランクスは、突然のイレギュラーに狼狽する部下に檄を飛ばす。

女性ながら、かつてはナイトオブラウンズの第二席ナイトオブツーとして、皇帝を守護し支えてきた人物である。

「うろたえるな!すぐに補助電源に切り替わる。
状況の確認を。市街の様子はどうなっている。」

ベアトリスの言葉が終わらぬうちに、補助電源が作動した。

1度はブラックアウトしたモニターに、次々と映像が映し出される。

モニターを確認した部下は、「市街に異常はありません。」と、安堵した声で報告する。

しかし、その直後、息を飲み、上ずった声をあげた。

「皇宮周辺に、多数の敵性勢力!」

「何!?」

大スクリーンに映し出される、装甲車両やナイトメアフレームに、その場にいる全ての者の目が奪われた。
G-1 ベースを中心とした部隊が、皇宮を取り囲むように、東西南北全てに陣取っている。

「いつの間に…これだけの部隊が近づいていることに、気が付かなかっただと?」

ありえない事だと目を見開くベアトリクスであったが、とある人物の名が頭をよぎる。

「ゼロ…?」

神出鬼没のテロリスト、情報戦の巧者。
かの人物であれば、ペンドラゴンのセキュリティシステムであっても、モニターにダミー映像を流すことは可能だろう。

だが…ここはブリタニア帝国の中心、いかにゼロとて、そう容易く侵入できる場所ではない。

本国内に、ゼロの協力者が⁉

「どこの部隊だ。所属が分かるか。」

総監の求めに応えるため、モニターに映るG-1を確認した担当者は、驚愕の表情を浮かべた。

「ジ…G-1の艦首に、は…旗印が・・・!」

皇族直属の部隊が出陣する際に、その艦首に掲げる旗印。

皇帝には108人の皇妃がいる。

その1人1人に、皇帝から「御印」と呼ばれる植物をモチーフとした家紋が拝領されるのが習わしだ。
複数の皇族が戦場に赴く際、この家紋を掲げる。

「旗印のあるG-1だと。」

「は、はいっ。東西南北全てのG-1に旗印が。」

「御印の数は?」

「3つです!北と東は同じ印ですが、南と西は別の旗印です。」

「3人もの皇族が挙兵しただと…
どなたの旗印か。」

部下に指示するものの、ベアトリクスには大方の予想がついていた。

おそらくはシュナイゼル。

そして、現在行方が分からなくなっているコーネリア…皇帝に弓引くほどの力を持つ皇族といえば、現在ではエル家とリ家くらいのものだ。

では、残りの1人は…?

「は、旗印は、白百合、野ばら、桔梗です。」
「白百合…っ。オデュッセウス殿下だと⁉」
よもやあの人物が…!

第一皇子という以外、取り立てた才もなく、凡庸で皇宮内でも目立つ存在ではなかった。
こんな大それたことを行う人物であるとは、思いもよらぬことだ。

「いや…我々も枢密院も、欺かれていたという事か…」

北と東は桔梗…エル家の紋章だ。
そして、残りの野ばらは、リ家のものである。

予想通りではあるが、腑に落ちないこともある。
野ばらのG-1で、指揮を執っている人物だ。
戦女神と、もてはやされているコーネリアは、国を出奔して行方不明。
今のユーフェミアには、何の権限も力もない。

いったい誰が……コーネリアが秘密裏に帰国していたのか?

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