この世界で

「復活のルルーシュ」ネタ。

 

「目が覚めたのか。ゼロ……
いや。─枢木スザク。」
気が付いた時、耳に飛び込んできた声に心臓が跳ね上がったのが分かった。
もう二度と聞くことないと思って言った声だ。
低く甘い響きのテノールが、自分の名を呼んだ。
ありえない。
そんなはずがないと思いながら声の方へ向けた視線の先佇む姿に…苦笑交じりに自分を映すアメジストに、目を剥く。
ルルーシュ……
この手で殺めたはずの人物が、目の前にいる。
今も覚えている。
君を貫いたあの感触…君の温もり…耳元で囁いた甘美な声……

 

──これは、お前にとっての「罰」だ──

 

ああ。そうだ。
僕は、やっと与えられた「罰」に遵じ、彼の残した平和に殉ずるために生きてきた。
なのに何故!
「君は…また嘘をついたのか……」
「抗弁はしない。」
なんだ、それはっ!!
「ぅあああああっっっ!」
気が付いたら、手をあげていた。
感情のまま、無我夢中で……
拷問による傷で、普段のような力が出ない腕を振り上げ,、何度も何度も……
白磁のような白い肌に拳を打ち付けていた。
ルルーシュは……抗弁しないと言った彼は……抵抗もせずただ僕の拳を受け止めて……
本当に…この無様な僕の、怒りと歓喜の入り混じった混沌とした感情を、ただ、黙って受け止めていた。
「ルルーシュは死ぬつもりだった!
これは、私の我儘だっ!」
「シ…ツ…」
背中に取り付いて、叫ぶ魔女を見た直後……張りつめていた糸が切れた。
吐き出すものをすべて吐き出した、そんな安堵があった。
ああ、そうか……これは、君の仕業か…C.C.
なら、彼の本意ではなかったのか……
ごめん。ルルーシュ………

 

君のいない世界は…思っていた以上に孤独だった。
本音を吐露した僕に、君は目を細める。
言うべきではなかったかもしれない…でも、彼が側にいるという安心感から漏れてしまった。
「ゼロ」の仮面は本当に重い……「ゼロ」という記号、役割を任されて、その存在の重さを思い知らされてきた。
自分では役不足だ。
今回の1件がいい例だ。だから……
「君が戻ってきた以上。君がゼロをやるべきだ。」
ナナリーを助けるため。
今は、それだけでいい。
君とともに戦える。この充足と安心感をまた味わえるこの高揚……結局僕は戦士以外にはなれそうもない。

 

空から降り注ぐ無数の光……その眩い光のシャワーは、どこか宗教じみた神々しさがあった。
僕には、それが祝福のように思えてならない。
ナナリーを救い、君も戻ってきた。
君が、ここにいる。それを祝福してくれている……誰が、何がかは分からないが…そうだと信じて疑わなかった。
「お兄様は……行ってしまわれました。
C.C.さんと共に世界を放浪すると……」
寂し気に呟く君の妹に、僕はただ頷くしか術はなかった。
君は、何も言わずに行ってしまった。
挨拶もなしか……
それが君の答えなのだろう。
別れではない。
生きていれば、いつか君に会える。
この世界で。
君がいる……それだけでいい。
ルルーシュ───
今度こそ、受け入れてみせるよ。
この仮面の重みも、君が築いたこの世界も……
君がいる。この世界で───
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