艦橋直通のエレベーターに乗り込むと、スザクは大きく息を漏らして隣に立つ人物を見る。
自分の操縦するナイトメアと同じ真紅のパイロットスーツ姿の彼女は、機嫌悪そうに眉間に皺を寄せている。
「まったく。黒の騎士団のエースが、敵を捕らえながらエナジー切れで捕虜とはねぇ……」
「仕方ないでしょっ。補給中に襲われたんだから………」
そう言いながら、中華連邦からブリタニアにに引き渡された『捕虜』紅月カレンはばつが悪そうに視線をそらす。
「……詰めが甘いんだよ。
中華は、陵墓ごと黒の騎士団を生き埋めにするつもりだよ。」
「本当に!? ルルーシュったら、必ず助けるなんて言って……自分が大ピンチじゃない。」
いつも、カッコいい事いいながらキメきれないのよね。と呆れていたカレンであったが、はっとしてスザクに問いかける。
「天子様は?」
「まだ、斑鳩の中。大宦官は彼女を見捨てた。」
「そんな……っ。」
「ルルーシュの事だ……何の策も無くろう城しているとは思わないけど……」
そう言ってスザクはまた、ため息をついた。
エレベーター内に重い空気が流れ始めていた。
そんな状況であるが、カレンには昨日から気になっていた事があった。
「ねえ……」
「なに?」
「どうしてあのとき、神楽耶様にあんな事言ったの?もう一度会いたいなんて………」
「なんか……さ。兄上をあんな風に睨みつける神楽耶が悲しく見えて……」
「悲しい?」
「僕たちとゼロは、皇帝の企みを阻止するという事で連携している。でも、神楽耶は日本をブリタニアから取り戻すのに必死で、このことは何も知らない。
黒の騎士団の中核で一番の出資者である彼女が何も知らされず、蚊帳の外に置かれている事が……さ。」
「あんた、まさか……」
カレンが驚きに目を見張る。
「神楽耶様に全部話す気?
そんな事したら、ゼロの正体が……秘密を知る人間が増えればそれだけ。」
ゼロがブリタニアの廃嫡された皇子だという事が黒の騎士団……日本人に知られるリスクが増えるのだ。
「分かっているっ。」
スザク皇子らしくない大声に、ゼロの親衛隊長は息を呑んだ。
「だが、本当にそれで良いのか?
神楽耶を、ただの“金づる”にしたままで。」
「そ…それは。」
睨みつけてくる鋭い緑光に、カレンは思わず顔をそらす。
「───あんたの言う通りかもしれないわね。
あの方は、そんな扱いを受けていい人ではないわ。
だからといって、ゼロに断り無く進めていい話でもないと私は思うけど。」
今度は、スザクが黙って頷く。
「ところで、貴方の兄上様に一言言ってくれない?」
話題を変えてきたカレンにスザクは小首を傾げる。
「実の弟をからかって遊ぶのはやめろって。
あの後ルルーシュの機嫌が悪くて、本当に面倒くさかったんだから。」
「ああ、ごめんね。それについては、僕もお灸を据えておいたから。」
それで勘弁してくれる?というスザクに肩をすくめる。
「ブリタニアの宰相殿下にそんな事出来るのは、世界中探してもあんた位なものね。」
半ば呆れて言う彼女に、笑顔で答えるスザクであった。
a captive of prince 第19章:革命 - 11/12
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