a captive of prince 第19章:革命 - 10/12

 時は刻々と流れ、夕刻にさしかかっていた。
 その間、中華連邦は黒の騎士団が立てこもる天帝八十八陵に大部隊を編成し、取り囲んでいた。
 中華と黒の騎士団の睨み合いが続く中、見守る事しか出来なかったブリタニア側に大宦官から通信が入ったのはそんな時であった。
 ぺこぺこと低姿勢ではあるが、腹に一物抱えているのが伺い知れる媚びた笑みを浮かべる大宦官にうんざりしながらも、シュナイゼルは穏やかで丁寧な態度で応じる。
「もちろん、我々の戦力と言えばこのアヴァロンとラウンズのナイトメアしかありませんが、お役に立つのであれば協力は惜しみませんよ。」
「とんでもない。殿下の采配とラウンズ様の戦力を頂ければ千人力でございます。」
「ところで、黒の騎士団が立てこもっているのは貴国にとっては神聖な場所。どのようにして彼らをあそこから立ち退かせるのです。
 それに、彼らが拉致している天子様の救出の段取りもついているのですか。」
 シュナイゼルの質問に、大宦官の1人程忠(チェン・ジョン)が眼鏡の奥の細い目をさらに細めてくつりと笑った。
「シュナイゼル殿下。ブリタニアのような専制君主国家にとって皇帝陛下はまさに神にも勝る絶対且つ神聖な存在でしょう。ですが、我が国は連邦国家……天子とはこの国を統べる存在では無く中華連邦を現す記章のようなもの。」
 シュナイゼルの表情が変わり、その瞳に厳しさが浮かぶ。
「次の天子は用意しております。今度はオデュッセウス殿下とも釣り合いの取れる娘でございます。」
「天子様を見捨てると仰るのですか!」
 スザクがたまらず声をあげる。
 程忠はそれには答えず一瞥すると話を続ける。
「天帝八十八陵は歴代天子の陵墓。黒の騎士団と一緒に埋葬して差し上げようと思っております。天子様もお寂しい事はないでしょう。」
 ニタリと笑うその顔に、背筋が凍る。
「では、我々はその手伝いを?」
 何も感じていないかのように、シュナイゼルは淡々と話を続ける。
「いいえ。これは私どもがすべきこと。
 本日の婚礼に異議を申し立て乗り込んできた輩を排除して頂ければ有り難く存じます。」
「なるほど……だが、ナイトオブラウンズは陛下の騎士。その力をお貸しするのだ。
 まさか、ただ働きというわけにもいくまい。」
 シュナイゼルが、くつりと笑う。
 その笑みには、有無を言わせぬ迫力があった。

 機械の油と、エンジンから発する熱気と排気ガス漂う格納庫。
 たった今到着した輸送機から降り立った人物に、その場にいた整備員は恭しく頭を下ろし、その人物と一緒に降りてきた人物に目を見張る。
 彼らが驚きを隠さずに見つめる中、ふうんと鼻を鳴らしながら辺りを見回し、その人物は先に立つ彼の後についてその場を何事も無く去って行く。
 残された彼らは、互いに顔を見合わせ今自分たちが見たものを確認し合い、混乱した。
「な、なんで捕虜が殿下と肩を並べて降りてくるんだ!?」

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