「最近、何処かのご令嬢と懇意だそうだね。
足繁く彼女の住まう別荘に通っていると聞いているよ。」
久しぶりに兄弟揃っての朝食の席で、シュナイゼルが切り出した。
こうして2人揃って食事の時間を取ったのは、1ヶ月ぶりではないのだろうか。
楽しげに、だが、僅かに心配を滲ませてくる兄に、スザクはにこりと笑う。
「ええ。最近親しくなったのです。エリア11で知り合ったのですが、先日の戦勝祝賀会に彼女が出席していて……シュタットフェルト伯爵のご令嬢です。」
「レナードから聞いているよ。伯爵からも、爵位を彼女に譲渡したいと願い出があった。その願いは了承され、近くカレン嬢がシュタットフェルト家の長となるだろう。」
「そうなれば、エル家の支援貴族が1つ増える事になりますね。」
嬉しそうに話すスザクに、シュナイゼルは首を傾げる。
「彼女とはどんな関係なのだい…?お互い立場のある身だ。」
窘める口調の兄に、スザクの笑みが深くなる。
「彼女とは、兄上が心配されるような関係ではありませんよ。とても魅力的な女性ではありますが。」
そう言って、またクスクス笑う。
「1度こちらに招待したらどうだろう。」
「カレンをですか?」
弟の口から出てきた名に、思わず口元が引きつる。
「兄として彼女に会ってみたくてね。礼を言っておきたいんだ。
彼女の城に行くようになってから、お前の表情が以前のように生き生きしてきたと、レナードとアメリーが口を揃えて言っていた。
エリア11から帰って以来、お前の環境が大きく変わった事もあるが、気持ちの鬱いでいたお前を変えてくれたのは彼女なのだろう。」
兄の言葉に、スザクは眉尻を下げた。
「ご心配をおかけしてすみません。───そうですね……彼女とその友人達に救われました。」
「シュタットフェルト嬢だけでなく、彼女のご友人もかい?」
シュナイゼルは目を丸くする。
「みんな、とても素敵な女性ですよ。」
呆れたように嘆息すると、シュナイゼルは友人も含めて招く事を提案した。
「そうですね。兄上にも是非、会って頂きたいです。
いずれは…と思っていましたが、ちょうどいい機会だと思います。」
悪戯っぽい笑みを浮かべる弟に、シュナイゼルは首を傾げる。
「きっと重大な情報を齎せてくれますよ。
彼女らは兄上にとっても同志となりうる存在です。」
スザクの真剣な表情に、薄紫の瞳が鋭く光った。
エリア11……矯正エリアに格下げされ、ナンバーズへの弾圧が続くこの地に、今も彼らの心の拠り所となっている英雄が再び姿を現すまであと半年。
そのための準備が、遠く離れたブリタニア…彼らを統治する国の中心部で静かに進んでいる事を、人々はまだ知らない。
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