しん…と静まり返った空間。
壁の上部の明かり取りから差し込む日差しのみの薄暗い土蔵は、独特の湿気とホコリが混ざり合った匂いがする。
当主自らが開けてくれた書物庫は、皇家と同じ古い紙と墨の匂いも漂っている。
うずたかく積まれた書物のなかから、すぐに目的の物を見つけ出していくスザクにルルーシュが話しかける。
「スザク。当主殿が話してくれたこと……知っていたのか。」
「いや。……神格化された祖先を祀っていると聞かされていたけれど、どういう人物だったかまでは…… 初めて聞いたよ。
父は政治にしか関心のない人で、僕には自分の跡を継いで政治家になれといっていたくらいだし。皇とのことも、古い家同士の繋がりだと思っていたから。」
それにしても…と、つぶやいて、スザクは少々皮肉気な笑みを浮かべる。
「政治的陰謀から巫女を守った守護者の末裔が、日本の首相だなんて……おかしな話だよね。」
「───いや。そうでもないたろう。」
ルルーシュの言葉に、文献を探す手を止め、彼を見る。
「巫女の力を政治に利用させないために、敢えて政治の中枢に入ったとも考えられる。
枢木が力を持つことで、他の権力から遠ざけることになったのではないのだろうか。
皇も、枢木を資金面で支えるために財を成したのかもしれない。」
「──どうだろう………」
ルルーシュの説に、スザクは唖然とした。
そんなこと、思いもしなかった。
「両家の文献を調べれば、そう言ったことも分かるんじゃないのか。」
ルルーシュの提案に、一瞬目を瞬かせるスザクであったが、ゆっくりと首を横に振る。
「もう、昔のことだよ。
何人もの首相を輩出して来た枢木家は、父の代で終わったんだ。
今、日本を動かしているのは『皇』だし。」
「───そうだな………」
「───あった……」
視線を文献に戻したスザクがつぶやく。
「ルルーシュ。ここ……」
冊子に閉じられた書類の1ページを指し、ルルーシュの前に出す。それは、家系図の一部だった。
「丁度400年ほど前、ブリタニアに渡った巫女姫の父親へ枢木家から嫁いでいる。」
「──確かに……」
と、いうことは───
「ライは、ルルーシュだけでなく僕や神楽耶とも縁のある人物だったんだ。」
ある程度予想していたことではあったが……それが現実だと確認しまった。
2人は、複雑な表情で顔を見合わせるのだった。
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