宮司が住まう社務所。(といっても、スザクの実家よりはるかに広い)
ルルーシュとスザクは、事前に皇家から話が通っていたおかげで、ブリタニア人の研究者として枢木本家の当主と面会を果たした。
「スペーサー殿。スパロウ殿。初めまして。私が当主の枢木白虎です。」
微笑を浮かべて名乗る初老の男性は、どこか枢木ゲンブ首相に面差しが似ている。
「本日は、突然の来訪と無理なお願いを快くご了承頂き、感謝します。」
スザクが、深々と頭を下げる。
「いやいや。皇の姫の頼みとあれば、無下には出来ません。
お二人は、ブリタニアと日本の交流について調べておられるとか。」
「はい。ブリタニア皇室について研究しているのですが、中世期に皇族の一人が皇家の姫と結婚していたことが分かったのです。」
ゲンブによく似た鋭い光を放つ眼で、探るように2人を見る白虎に、ルルーシュはことさら愛想良く微笑む。
「それで、皇家に当時の史料を調べさせて頂いたところ、皇家と枢木家が親族だと知り、ぶしつけでありますが御家の蔵書も拝見したく、神楽耶さまにお願いした次第です。」
真っすぐに相手を見て話す亜麻色の髪の青年に、白虎は目を細める。
「承知致しました。
史料が保管してある蔵にご案内する前に、もうご存知かもしれないが……」
いったん言葉をきって、白虎は話を続ける。
「皇家と当家のことをお話ししましょう。」
枢木ゲンブによく似た低音ながら、神職らしい穏やかな口調の白虎の言葉に、背筋を伸ばす2人であった。
古来より、京都は政治経済の中心地であった。それを動かしていたのが『六家』と呼ばれる皇家を中心とした六つの一族だった。
「皇家は宗教的儀式を取り仕切ることを生業としていました。」
「───宗教的儀式……?」
スザクが、神妙な顔で尋ねる。
「予言とか神託といった類いだと伝え聞いています。」
「ほう。それではまるで、神社のようではないですか。」
「そうですね。」
そう指摘するルルーシュに、白虎は肩をすくめて笑う。
「我が枢木は、もともと武芸で身を立てた一族でして、神託を授ける皇を守ることで家の隆盛を得たのです。」
「守る……とは?」
白虎は静かにうなずく。
「皇の家には、霊的な力を持って生まれる子供が多く、その者が予言者もしくは巫女として崇められていました。
それ故、その神託を時の権力者に利用され、政治的陰謀に巻きもまれて命を狙われることも多かったようです。」
2人は、表情を硬くする。
「この枢木大社は、そういった事変に巻き込まれ、命を落としそうになった巫女を身を呈して守った若者の御霊を神として祀ったのが起源なのです。」
「そうでしたか……
それで、皇家と枢木家は……」
「六家の中では親しい間柄で、しばしば両家の間で婚姻があるのです。
前首相のゲンブの妻も皇の娘です。」
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