Lonely soul  - 20/22

chapter.5

スザクは、ジノの計らいで黒の騎士団本部の医療施設に収容された。
担ぎ込まれたスザクを見たカレンは、激高してライをサンドバッグのようにタコ殴りにした。
「怒らせたら、例え土下座しようとも、その頭を土足で踏みつけるような奴なのよ。本当はっ!
それでもあんたに記憶を返してやったのは、あんたがルルーシュに繋がる人間だからなの!
その事、肝に銘じておく事ねっ!」
そう言い捨てるカレンに、その場に居合わせた者全員が頷く。
「相変わらず激しいな。カレンは。」
「でも、彼女が言った事は多分本当……」
苦笑するジノに、冷たくライを睨むアーニャ。
ボロ雑巾のようなライの前に、1つの影が近づいた。
「初めまして。ライール・ドゥ・ブリタニア。
現、合集国ブリタニア代表を務めるナナリー・ヴィ・ブリタニアです。私の事、ご存知かしら。」
車いすの上から慇懃に見下ろす女性に、ライは小さく頷いた。
「ああ。悪逆皇帝の実妹でありながら、真っ向から敵対し、正義を貫いた聖女と……」
「聖女……ですか。」
ライの答えに、薄く笑う。
「フジの戦いで、フレイヤ弾の発射スイッチを押していたのは私ですのに……
とんだ、血ぬれの聖女ですわ。
“聖女”と呼ばれるべき方は他にいらっしゃるのに……」
ナナリーは軽く瞑目すると、ライを見据え冷然と言葉を紡いだ。
「ライール・ドゥ・ブリタニア。既に鬼籍に入ってしまっている貴方を裁く術はありません。
ですが、貴方はこうして生きています。貴方が犯した罪を反省し、悔い改める時間はそれこそ永遠にあることでしょう。
私は、国家元首としてブリタニアで生活する全ての人に責任があります。勿論、貴方のように道を違えて生きてしまった人にも……
貴方が知るここ数年の事象の真実と、これからの社会で生きて行く上でのルールなど、私自らしっかりとご教授しますから、覚悟しておいて下さいね。」
そう笑いかける彼女を、ライは蒼白な顔で見つめる。
ナナリーの笑顔は、お世辞にも“聖女”のそれとは遠くかけ離れたものだった。

「アリエスの離宮?そこに引っ越すの。」
「ああ。ナナリーの好意で、かなり安く手に入ったからな。」
「ただじゃないところが、とてもしっかりしてるよね……」
ルルーシュの手作りプリンを食べながら、スザクは苦笑する。
「さすが俺の妹だろ?」
自慢げに笑うルルーシュであるが、その顔は引きつっている。
「それじゃあ。退院したら早速引っ越しだね。」
「引っ越し作業ならもう始めている。ライが、快く引き受けてくれたからな。城の内装修理などは、ナナリーが手配してくれている。」
「皆に迷惑かけて、申し訳ないな……」
「迷惑だなんて。とんでもない。」
軽やかな声と共に病室のドアが開き、ナナリーが入ってくる。
「お兄様とスザクさんが、私の近くに暮らして下さるのですもの。喜んでお手伝いしますわ。
それに、あのライという方もとても反省された様子で、おふたりのために一生懸命働いて下さっています。
ライさんが感謝していましたわよ。スザクさんとお兄様のおかげで、記憶を取り戻しただけでなく、居場所までできたと……私達の祖先に当たる方なのですね。」
「うん。ナナリー、仲良くできそう?」
「ええ。勿論。」
にっこりと微笑むナナリーに、スザクはほっとした顔をする。
「ルルーシュ。ライの事なんだけれど……」
「新しい住まいには奴の部屋も用意した。
ライは、ギアスとコードの研究に協力する事に同意している。」
ルルーシュの話にスザクは目を丸くすると、ふわりと笑った。
「ギアスとコードを消すための研究。彼が加わる事で、少しでも進むといいな……」
「お前が、ゼロの頃からしていたそうだな……」
「うん。もう、ユフィやルルーシュのような人達を出したくないから……
ロイドさんとラクシャータさんに頼んで、研究してもらっている。本当は、嚮団の研究資料が手に入ればいいんだけれど……V.V.の代に、あちこちに分散させたみたいで……」
「それを探す事も含めて、私も協力して来た。」
傍らに立つC.C.が言う。
「そうだったのか。なら、俺も加わるべきだな。
提案なのだが…日本の神楽耶殿にも協力を要請したらどうだ?」
「神楽耶に?」
「ライは、ブリタニア皇族と日本の皇家の混血だ。
その彼が、生まれながらにギアスを持ちコードを発動させたとなると、皇の血が作用したと考えてもいいんじゃないのか。」
「──うん。……皇も古い一族だから、戦争でなくなっていなければ文献とか残っているかもしれないね。
枢木本家や枢木神社にもあるかもしれない……今度日本に行ったら探してみよう。
みんな、普通で当たり前の生活ができるようにしたいね。」
しみじみ語るスザクに、頷いた。

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