蜃気楼から降りたルルーシュは辺りを見回す。
先に飛び降りたジェレミアが、この階の入り口を警戒する。
ルルーシュに次いでアーニャが降りたところで、ジェレミアが身構えた。
アーニャも、ルルーシュをかばうように前に出る。
扉が開かれ、銀髪の男が入ってくる。男は、驚愕のまなざしで彼らを凝視するのだった。
扉を開けたライは、目の前の光景に息を呑んだ
崩れ落ち、晴天の空が覗くフロアに影さす黒いナイトメア。
その前に立つ男女3人……その中心の人物は、今はもういないはずの……
「悪逆皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……
何故、お前が生きている!?」
驚愕のライに、ルルーシュは侮蔑の表情を浮かべる。
「───地獄から舞い戻って来た……とでも言っておこう。
我が騎士を返してもらおうか。」
冴え冴えとした声で要求するルルーシュに、ライの顔が歪む。
「ふざけるな!死者なら死者らしくしていればいいものを……!
あれはもう私のものだ。誰にも渡さない!!」
「傲慢な奴め。人ひとり攫っておきながら、モノ扱いか……っ!」
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。貴様は死ねっ!」
ライの瞳から、赤い鳥が飛び立った。
ルルーシュは、懐から拳銃を取り出す。
ライは、薄笑いを浮かべた。
引き金に指をかけると、ゆっくりと腕を上げる。
銃声が辺りに響いた。
「───ギアスは効かない。お前の負けだ。」
目を細め、ルルーシュが冷然と言い放った。 耳に掛かる髪をかき上げ耳を見せる。彼の耳の穴にはゴム製の栓が嵌っている。
ライのこめかみから、鮮血か滴った。
「くそっ!力が効かなくともっ!」
ライは、手に持つ剣を抜くと3人に躍りかかる。
ジェレミアとアーニャも剣を抜き、迎え撃つ。
「二人掛かりで……!スザクと互角というのは本当らしいな。」
ジェレミアとアーニャ。腕に覚えのある2人が攻めあぐねている状況に、ルルーシュは冷や汗を浮かべる。
どうする……このままでは……!
ルルーシュは舌打ちすると、手の中の銃を握り直す。
ライが2人を突破して、ルルーシュへ走り込んで来た。
「このっ!」
向ってくる男に照準を合わせるが、ライはすぐに間合いに入ったルルーシュに剣を振り上げる。
そのとき、2人の間に1つの影が舞い降りた。
ぶつかり合う衝撃音と金属がたたき落とされる音がした時には、ルルーシュをかばうように立ち塞がる人物が現れる。
ヒュッと息が漏れた。
「スザク!」
「ルルーシュ。銃を……」
呼びかけには答えず、ルルーシュに銃を要求する。
手渡すと、スザクは何の迷いも無く銃口をライに向け、心臓を狙う。
「我が主に、剣を向ける事は許さない。」
見据えるスザクに、ライは唇を噛み締めた。
「あいつ……私の腕を踏み台にして……」
この部屋までスザクを運んで来たジノは、着くと同時のスザクの行動に唖然とする。
「スザクらしいじゃないか。」
C.C.は目を細めて、主従を見守っている。
「何故だ。ずっと側にいると言ったじゃないか……フランソワーズ!」
「僕は、フランソワーズじゃない。───枢木スザクだ。」
叫ぶライを痛々しく見る。
「嘘だ。たって…あの時のあの表情は……」
「うん。あれは、確かにフランソワーズの言葉だよ。」
「やはり。お前は、彼女の生まれ変わりなんだ。彼女の精神はお前の中に……」
「いない。」
キッパリと否定するスザクに、ライはさらに言い募ろうとする。
「フランソワーズの意識は、今も集合無意識の中にある。
スザクは、混沌の中にある彼女の意識を、自分の体を依り代にしてお前に伝えただけだ。」
後ろからかけられた声に振り返ったライは、自分が殺した女が立っている事に愕然とする。
「ば…馬鹿な……お前は確かに……」
「ああ。お前に殺された。」
「お…お前は、一体……」
「魔女だよ。……お前と同じ。」
「私と同じ……」
茫然とするライに、C.C.は小さく息を吐く。
「やはり。何も知らずに生きていたのだな。
何故、言葉1つで人を意のままにできるのか……何故、年を取らずに生き続けているのか……」
「お前は、その理由を知っているのか……?教えてくれ!私は一体何者なんだ。」
C.C.にすがりつくように請う男を、ルルーシュは唖然として見た。
「C.C.。どういうことだ。俺に、解るように説明しろ。」
ルルーシュの問いに面倒くさいと言わんばかりの視線を送る魔女に、スザクは苦笑した。
彼女の代わりに説明を始める。
「ルルーシュ。彼の名は、ライール・ドゥ・ブリタニア。
君の祖先で、神楽耶の縁者だ。」
コメントを残す