スザクはこんこんと眠り続けている。
力つきた彼の体を清め、はぎ取った衣服の代わりに自分の物を着せた。
左足の戒めを外すと、行為のために擦れたのだろう傷が痛々しかった。
「すまなかった……」
目を覚ます様子の無いスザクの頬を、そっと撫でる。
男…ライは、指を何度かその滑らかな頬に滑らせていたが、体を強ばらせ指を止めた。
「───何かが近づいてくる……!」
緊張して伺っていると、頭上で激しい爆音が轟き、建物が震えた。
「取り戻しに来たのか……!」
誰が……?と言う疑問は残ったが、その破壊者が自分から彼を奪おうとしていると確信していた。
ライは椅子から立ち上がると、スザクの額にキスした。
「行ってくる……フランソワーズ。」
そっと呟くと、後ろ髪引かれる想いで部屋を出て行った。
先端部分を失って土煙を上げる建物を見上げ、ジノは苦笑する。
「また、派手にやってくれたな。ナイトメアまで持ち出して……」
破壊した部分から侵入する蜃気楼を確認して、C.C.が塔の入り口に歩き出す。
「ルルーシュが敵を引きつけている間に、スザクのところへ行くぞ。」
「あ。ああ。」
ジノは塔の入り口の木製の扉を蹴破って中に入った。
灯りも無い階段を手元のライトをたよりに駆け下りる。
「ここだっ!」
さらに地下に続く階段の途中、右手の扉をC.C.が示した。
ジノが蹴破ると、薄暗い部屋の隅にベッドがあり、そこに、探している人物が横たわっていた。
「スザク。」
駆け寄れば、小さな寝息が聞こえる。
「寝てる……」
「疲労困憊というところか……?」
少し青ざめた頬を、C.C.の手がなぞる。
スザクを見るため、ライトを近づけたジノは顔をしかめた。
スザクのサイズより大きいのだろう。着せられているシャツの胸元から首筋にかけて至る所に鬱血痕があったからだ。顔にも痣がある。
「───相当酷くされたな。……私達が救出班でよかったな。」
「ああ。アーニャやルルーシュにはショックだろう。」
「こんなもの見せたら、ルルーシュの奴、なにしでかすか解らないぞ。」
C.C.が顔を引きつらせる。
「どうする。このまま運ぶか。」
「いや。起こそう。」
「止めておけよ。こんな体じゃ、揺するのも可哀想だ。」
「そんな事はしない。知らなかったのか?私はこいつの妻なんだぞ。」
唖然とするジノを尻目に、C.C.はスザクに顔を近づけると唇を重ねる。
突然の事態に、ジノは慌てて目を彷徨わせた。
「目を覚ませ。ヴァーミリオン。」
囁くような呼びかけに、閉じられていた瞳がゆっくりと開く。
「………セラ………」
茫然とした顔で、スザクは彼の戸籍上の妻の名を呼んだ。
「どうやら、首尾よくいったようだな。」
C.C.が目を細めて問えば、スザクも微笑む。
「フランソワーズの言葉……多分彼に伝わったと思う……」
「あいつが、どこまで理解できたか…だな。」
2人だけで解る会話をしているところに、ジノが心配そうに顔をのぞかせた。
「スザク……その……」
何といっていいのか解らないという表情の彼に、スザクは笑顔を見せた。
「ジノ……助けに来てくれたんだ。」
「ああ。今、上でルルーシュが犯人と対決しているはずだ。」
「行かないと……っ!」
起き上がろうとして、スザクは腰の痛みに顔をしかめうずくまった。
「───大丈夫か?」
C,C,がため息まじりに声をかける。
「かなり……つらい……」
小声で答えるスザクに、魔女はまた息を吐くと隣に立つジノに視線を送る。
「スザク……手を貸そうか。」
「うん……」
「私が、体に触れても構わないか?」
「え?」
ジノの質問の意味が分からず、顔を見つめるスザクにしどろもどろで言葉を続ける。
「その……この手の被害者は……男に触れられると恐怖が蘇ると……聞いた事があるから……」
ジノの気遣いに、スザクは柔らかな笑顔で答える。
「大丈夫だよ。ジノだったら。」
その笑顔に安堵すると、体に手をかける。
「抱き上げるぞ。辛かったら言ってくれ。」
スザクの腕を自分の肩に回させると、膝裏に手をかけ抱き上げた。
「大丈夫か?」
「うん。」
「よし。行くぞ!」
部屋にか飛び込んだ時と同じ勢いで、上階へ駆け上がって行った。
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