a captive of prince 第21章:和解 - 4/5

 東の水平線上が白みかけるころ、ブリタニアと黒の騎士団の捕虜返還交渉は終了した。

 小部屋に籠っていた4人のうち3人は心なしかやつれた感を漂わせ、1人は憑き物が落ちたような清々しい顔で出てきた時、外でやきもきしながら待っていた人物たちは揃って小首を傾げた。
 だが、4人ともが穏やかな表情であったことに、胸をなでおろし彼らを迎えたのだった。

 別れ際、神楽耶はそっとスザクに耳打ちする。
「さっき、私の前で泣けないから部屋に籠ったのでしょう?」
 悪戯っぽぃ笑みを浮かべる従妹に、スザクは顔をくしゃりとさせる。彼女の言う通りだからだ。
 シュナイゼルの言葉が嬉しくて涙があふれそうなのを、とても耐えられそうもなかった。
 しかし、あのような席で泣くわけにもいかず、まして、神楽耶に泣き顔を見られるのがとても恥ずかしく悔しくもあった。
 だから、あんな態度をとってしまった。我ながら子供っぽいと思うが、自分の面目を保つための非常手段だと開き直ってもいる。
 しかし、それも無駄な努力で、彼女にはすっかりお見通しだったようだ。
 くすりと笑って、神楽耶は顔をスザクから離す。
「あなたの言う通り、とても良いお兄様で安心しましたわ。お兄様方のお役に立てるように頑張ってください。スザク殿下。」
 その呼びかけに、ふわりと笑った。
「神楽耶も。ゼロと……ルルーシュとお幸せに。」
 そう返した言葉に、神楽耶は一瞬目を大きくしたかと思うと、笑みを深くする。
「相変わらず、天然ですわね。スザクは。
でも、ありがとうございます。」
 そう言い残して、ゼロとカレンのあとを追って輸送機に乗り込む彼女を、首を傾げながらスザクは見送った。
 

 艦内に戻りながら、スザクはシュナイゼルに謝罪する。
「会談の途中で退室するという失礼をしてしまい、申し訳ありませんでした。
でも、兄さんに原因があるのですから、勘弁してください。
兄さんの言葉が、すごく嬉しくて……」
 また、涙ぐみそうになる弟の肩をシュナイゼルはそっと抱き寄せる。
「私の方こそ、すまなかったね。こんな大事なことを、突然あのような席で知らせることになってしまって。
スザク……宰相でも皇子でもなくなってしまっても、私と一緒にいてくれるね。」
「ええ。勿論です。」
 仲良く歩く兄弟を後ろから眺めて、オデュッセウスは嘆息交じりの笑みを浮かべる。
「やれやれ。随分と手の込んだ謝罪だね。シュナイゼル。」
 以前、スザクにしてしまった失言に対しての謝罪であると知っているだけに、弟が仕組んだこの一連の行動がどこまで彼の計算だったのか、あとで是非確認してみたいものだ。
「本当にお前は、スザクのためなら何でもできるのだね。」
 地位も権力も、血のつながらない弟と共にいるために捨てられるというシュナイゼルの強さをうらやましく思うとともに、自分もこれから国と国民のために精進するのだと肝に銘じるオデュッセウスであった。

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