a captive of prince 第1章:シンジュク事変 - 2/4

「こ…これは……!」
突然の停戦命令。
ブリタニア人、イレヴン関係なく負傷者の救出をする様にという指示に、現場は混乱した。
スザクの操る新型ナイトメアフレーム「ランスロット」の活躍により、テロリストの指揮系統は崩れ、彼らを追いつめた所だったからだ。
しかも、負傷兵はともかくナンバーズに同じ手当を施すというのは、ブリタニアという国、クロヴィス総督のこれまでの治世ではあり得ない事だ。
不審に思ったスザクがG-1ベースに連絡を入れると、そちらはさらに混乱を極めていた。
すぐに来て欲しいと言う、クロヴィスの腹心バトレー将軍の悲痛な訴えに駆けつけたスザクが見たものは、頭を撃ち抜かれて絶命した帝国第三皇位継承者クロヴィス・ラ・ブリタニアの亡骸だった。
「一体何があったんです!」
「わ…解らないのです。気がついたら、我が君がこのようなお姿で……」
「解らないって…将軍はずっとお側に居たのでしょう。」
「そ…それが、気がついたら、この場に居た全ての者が殿下のお側を離れていて……」
「──戦闘中に持ち場を離れた…?」
スザクは愕然とした。
常識では、絶対あり得ない事だ。
「何故そのような事をしてしまったのか、私も他の者も皆目……」
パニック状態だった将軍が、はた、と正気に戻り、わたわたと副官に指示を出す。
「す…すぐに非常線を……!」
「無駄だ……」
スザクの冷静な声に、混乱状態だったG-1のコンダクトフロアは水を打った様に静まった。
「既に、総督ご本人から停戦命令が出されている。
兵やナンバーズにまぎれて逃走してしまっただろう……
それよりも、総督の異変を外部に知られない様にしなければ。」
「はっはい!」
「撤収及び救出活動はこのまま続行。収束次第、政庁に帰投する様に。
兄上。申し訳ありません。もうしばらくこのままでご勘弁下さい。」
スザクは、護衛が持参した自分のマントを受け取ると、クロヴィスの頭上から掛けその哀れな姿を衆目から隠すと、深々と頭を下げた。
「将軍。あとの事は、宜しくお願いします。
僕は、表立って動く訳にはいきませんから。」
「はっはい。お任せ下さい。」
スザクは、満足そうに微笑むと、二人の護衛を伴って去って行った。
それを、皇族に対する礼で見送ったバトレーは、額に冷や汗を浮かべてつぶやくのだった。
「驚いたものだ。年々兄君に似ていらっしゃる。……血のつながりなど全くないというのに……」
7年前。この地より、ブリタニアへ連れてこられた儚げな少年は、養兄の庇護のもと、今ではブリタニア軍内で確固たる地位を持つまでに成長した。
「あの方が『掌中の珠』と言ってはばからぬ訳だ……」
バトレーは、額の汗を拭うと副官に指示を出した。

5

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です