コードギアス

ニッポンの皇子さま その13

 弦楽四重奏曲が朗々と流れる。 貴婦人達の朗らかな笑い声と衣擦れの音。楽しげな話し声が開け放したテラスの窓越しに、庭にいるスザクの耳にも届いた。 ルルーシュと並んで招待客を出迎える。 スザクがブリタニアにやってきて早ひと月。今日はルルーシュ…

ニッポンの皇子さま その12

 枢木スザクの朝は早い。毎朝5時には起床し、軽い柔軟体操の後5kmほどのジョギング、その後竹刀の素振り……これを日課としている。 アリエス宮でも、勿論実践しようとしたのだが………「ランニングですか……」 アリエス宮の家令を務める侍従長は、う…

ニッポンの皇子さま その11

 アリエスの離宮に用意された自室に入ったスザクは、さてと…と、声を出すと、上着を脱いでベッドに放り投げ腕まくりをした。 運び込まれた荷物は、身の回りの物を詰め込んだトランクの他に、先に送った段ボール類もある。 城の南側にあるその部屋は日当た…

ニッポンの皇子さま その10

「あら。でも、花嫁を捜しにいらしたというのは本当でしょ?」 ユーフェミアが投げかけた問いは、周りの大人…特に当の本人を、目が点になるほど驚かせた。「はい?」「これも違うのですか?」 ユーフェミアは心底困ったという表情を浮かべる。「宮廷中の噂…

ニッポンの皇子さま その9

「驚きました。優秀な方だと伺っていましたが、日本語がこれほど堪能だとは……」「私も、ルルーシュが日本語を学んでいるのは知っていたが、まさかここまで上達しているとは思わなかったよ。」「発音とか、おかしなところはありませんか?」 少し恥ずかしい…

ニッポンの皇子さま その8

「初めまして。枢木スザク様。」「ブリタニアへようこそ。日本の皇子様。」  興奮と期待が入り交じった淡いすみれ色の瞳と、紅潮させた頬で出迎えてくれた2人の姫を前に、枢木スザクは戸惑っていた。 アリエスの離宮に到着したスザク一行を、ヴィ家の執事…

ニッポンの皇子さま その7

 通信に出た父、枢木ゲンブは上機嫌だった。「おう。スザク。良かったな、大歓迎してもらえているようじゃないか。」「ええ。予想外すぎて、ついていけないんですが。」「ブリタニアが日本を対等な交渉相手と見てくれているなら、喜ばしい事だ。」「父さん。…

ニッポンの皇子さま その6

 射し込んで来る柔らかな朝の光と、小鳥のさえずりで、枢木スザクは目を覚ました。「ここは……」 自宅とは全く違う光景。白い天井、白い壁、自身が潜り込んでいるそれも、布団ではなくスプリングが程よく利いたベッドだ。 ああ、そうか……ここはブリタニ…

ニッポンの皇子さま その5

「私の、弟の友人になって貰えないだろうか。」 国賓待遇で受け入れると言うシュナイゼルが提示した事柄に、スザクは三度呆然とした。 なんだかこの人と話していると、ペースが乱れるというか振り回されっぱなしだ。 スザクは、首相の息子として、または六…

ニッポンの皇子さま その4

 動揺をごまかすために紅茶を口に運んだ。が、口に含んだだけで、カップの中身とは全く異なる味が口に広がった。 咄嗟に、カップを倒して気をそらし、吐き出したものを吸ったハンカチでこぼしたものを拭き取ったが、目の前の男にはお見通しだろう…… 不安…